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004

『ガウゥ! ガウガウッ!』

『『アォーン』』


 どのウルフかは分からないが、一匹の声を合図に五匹が同時に突っ込んできた。


「仲間を守る盾を、敵を倒す刃を、行き着く先は敵陣……」

「おい、だから長過ぎ――――」

『ガウガッ!』

「ちっ!」


 右側から来たウルフの首を舌打ちと共に斬り飛ばす。


『『バウアウッ!』』


 次、足元から這い寄るように近付いてきたウルフが二匹。


 斬った時の勢いを殺さないように体を横に回転させ、二匹の目元から刀身を食い込ませていく。


『『グギャウッ!』』


 並んだ二体の頭部から血しぶきが噴き上がる。


『ガウガウッ!』

『ガウッ!』


 一匹は上から、もう一匹は下からか……。


 上半身をねじり、下から振るい上げた剣がウルフの首を斬り落とす。


 足元の一匹が噛みつこうと口を開く。


「おらよっと」


 俺はその口へと左足の靴をねじ込んだ。


『ギャウッ! ガルルッ⁉』


 噛んだ感触に違和感を覚えたのか、ウルフの目が見開かれる。


 俺は体勢を立て直し、地に伏せさせたウルフの頭部に致命傷を与えた。


 引き抜いた刀身は赤黒く染まる。


「やっぱりウルフ程度じゃぬる」

『――――ガウッ!』

「なっ……!」


 気付かないうちに別の一匹が飛びかかってきていた。


 先程の血しぶき。それに黒く染められたウルフは、薄暗いダンジョンでは死体と同化してしまう。


 気づけなかった……。


「くっ!」


 眼前には、大きく口を開いたウルフ。


 剣を振りきろうと試みるが間に合いそうにない……。


 諦めた手元は微動だにしなかった。


「はっ……まじか……」


 ダンジョン一日目にして終わり……?


 クレスやアイシャとの会話は……。



 はぁ……。


 ウルフの攻撃が大怪我で……済むわけないよなぁ……。これ、喉元に狙い定められてるし……。


 結局、俺はあいつに会えずじまいか…………。


「――――数多の風よ、届け、シルフィード!』


 とても長い時間を過ごしていた感覚を感じたその時だった。


 後ろから、詠唱を終えたアイシャの魔法の文言。


 吹き荒れる風が俺の背後からウルフたちの方へ、突風となって流れていく。


『ンギャウッ!』


 飛びかかってきていたウルフは風によって押し返され、かまいたちとなった風の刃がウルフを二つに切り裂いた。


 四方からの見えない刃が、並んでいた他のウルフたちをも切り刻んでいく。


 背後からなのに俺に魔法が効かないのは、詠唱の中に味方への攻撃を防ぐ言葉を紡いでいたからだろう。


 だが、それにしても前衛に対する負荷をかけすぎている。


 ドサリドサリと、次々にウルフが地面に沈んでいく。


 逃げ切れたウルフはおらず、四足で歩行する生き物はその場から消え去っていた。


「ま、間に合ったぁ……」


 アイシャがぺたりと地面にへたり込む。


 なんとか無傷で済んだのはありがたいんだが……。


「アイシャ」

「ん……あー、ありがとね……助かったよぉ……」


 息の切れたアイシャは、へらっとした空元気の笑顔を向けてきた。


「そんなことよりもだ」


 俺はアイシャの前でかがんで目線を合わせる。


「え、なにかな……?」

「ウルフの群れが来た時の対処法は?」

「えっと、魔法で一掃する……?」

「状況によってはそれでもいいが、定石がいつも通用するはずがないだろ。なにせ今の数だ。二人じゃ荷が重いのは分かるよな?」


 俺からの戦術の指摘にアイシャは呆然としていた。


「ばっ! 君に言われなくても分かってるし!」

「なら、今のは詠唱魔法じゃなく、各個体を撃破する程度の時短魔法で十分だと分かるはずだ。ウルフは群れても順番にしか襲ってこない。俺が倒したあと、態勢を立て直すまでの間を魔法で援護してくれればそれでよかったんだ。違うか?」


「うぅ……だって、君は新人だし私が全部やらなきゃって……」

「新人のカバーをするならなおさら、お互いの援護や補助が大事だろ?」

「うぅ……」


 アイシャが弱々しく俯いてしまった。


 ちょっと言い過ぎたかもしれないが、パーティを組むなら必要最低限の援護の仕方、状況把握はしなければならない。


 今回はなんとかなったが、本当の新人なら二人ともどうなっていたことか……。

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カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
[良い点] 33/33 ・戦闘シーンすごい。パワーを感じました。 [気になる点] うーん、どっちもどっちなのか? コイツら危なっかしすぎる
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