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30/84

001

 ギルドで登録を済ませてから三日後、服や装備のサイズ変更などなど……。買い物を終えてようやくダンジョンへ突入することができた。


「……」


 一階層と二階層は洞窟のような空間が広がり、道中は二手に分かれていたりする。


 一度ここで迷ってしまえば、不慣れな冒険者は遭難してしまう。


 現在は灯りや看板があるのでそんなことにはならないだろうが、今でもここで行方不明になる奴だっている。


 油断すれば、もう二度と町には帰れない。


「ふんふふーん♪」

「……」


 若返った体がどんなものか、適当に一人で登ろうと思っていたんだが……。


 俺の後ろを歩く髪を結んだポニーテールの獣人が一人……。


「――――わー、懐かしいなー。スライムとかウルフとか狩りまくって換金してたなぁ。腕が鈍ってないか心配だよー」


 そう言いながら、頭の後ろで手を組み、散歩のようにのんびり歩くのは―――――――ギルド受付嬢のアイシャだった。


「なぁ、アイシャ……」

「ん、なにかな?」


 ダンジョン用に身軽な装備に着替えたアイシャ。


 胸元だけを隠しただけの赤い服――――いや、布と言っても過言ではない。


 それは女性の胸だけを隠すための布……。だが、アイシャにとっては衣類の一つとなっているようだ。


 加えて、動きやすそうな、かなり丈の短い赤色のパンツは、アイシャの太ももを隠す気はないらしい。


 全体的に布面積が少なく、素早さを重視した服装なのは間違いないだろう。ついでに引き締まった体には、中々そそるものがある……。


 だが、そもそも――――――――


「なんで俺のクエストにお前がついてくるんだ?」


 後ろを歩いていたアイシャへと質問を投げかける。


 俺の視界には絶壁のまな板が映った。


「そんな嫌そうな顔しないでよね。私だって嫌なんだからさー」

「ハッキリ嫌って言うのはどうかと思うぞ……」

「はいはい、気をつけますぅー」


 アイシャの奴、自由すぎないか……。


「ってか、ギルドの受付嬢がダンジョンについてくるなんて聞いてないぞ」

「あれ、君は知らないの?」

「なにをだ?」

「あれだよ、君は新人だから、最初はギルドの誰かがついて行くことになってるんだよ。つまり、お守り役ってことだねー」


 アイシャはウインクをしながらはにかんだ。


「頼んだ覚えはないぞ」


 俺の言葉にイラついたのか。アイシャはむぅっと口を膨らませた。


「頼まれてなくてもやらなきゃいけないのー。ほんとは帰りたいけど、仕事だからねっ」

「帰っていいぞー」

「なっ……! だぁーかぁーらぁー!」


 ドカドカと地面を踏みつけ、アイシャが近づいてくる。


 至近距離、もう少しで肌が当たる手前でアイシャが立ち止まる。


「な、なんだ……?」

「新人さんにはかーなーらーずーっ! 誰かがついてこないといけないのー! 子どものクセに生意気だぞぉー!」


 俺の頬に指を突き刺しながら言うアイシャ。


「へふに、いらふぁいんらが……」


 指が食い込み過ぎているせいでまともに喋れない……。


「君が『要る』とか『要らない』とか、決められることじゃないの、分かった?」


 今ので俺の言ったことが分かるのか……。


「まったくもー……」


 言い終えたアイシャが後ろに下がっていく。


「というわけで、まずはスライムかウルフとの戦闘からだね」

「いや、そんなんじゃ足りないんだが……」


 せめてウルフの上、ベアウルフくらいはやらないと俺の今の実力が分からない。


「もー、君も頑固だなー。そんなに言うなら私はなにもしないよ?」

「それで構わないさ」


 むしろ、その方がありがたい。


「ふーん、あくまでも強気なんだねー。まっ、そういうの嫌いじゃないけどさー」


 再び頭の後ろで手を組むアイシャ。


 だが、突き出るような胸はない。


「はいはい……」


 こんなところでゆっくりしている場合じゃないんだ。


 いやまぁ、別に急ぐこともないんだが……、やはり若返ったせいなのか。それとも、おかげと言うべきか。調子が良い分、動きたくて体がうずうずしている。


 足は自然と前に進んで行く。


「アイシャ、クエストの内容は?」

「ん? スライムかウルフの討伐だけど?」

「その次はなんだ? 最低でもBランクのクエストは教えて欲しいんだが」

「……」


 背後からの足音が消えた。


 振り返るとアイシャがその場に立ち尽くし、その表情は少し不機嫌そうに見える。

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カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
[良い点] 30/30 ・おうおう捻くれてますね。クセが強い元オッサン [気になる点]  背後からの足音が消えた。  ここすき
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