表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/84

005

 大剣が砂の上へと落ちてドサリと鈍重な音を響かせる。


「くっ……呪文を使うなんて聞いてないぞ……!」


 体が熱い……縮む……骨が軋んでいく…………。


「ぐぁああああああっ……」


 あぁ……せっかくここまでやってきたのに、ミスっちまったのか……。


 あーあ、人にはパーティを組んで行動しろとか言ってたのに、気晴らしに動いてみたらこれだ。


 判断力も決断力も、やっぱりおっさんになると鈍っちまうのかねぇ……。


「くっ……」


 目を閉じていても眩しい……。体の感覚もなくなっていく……。


 くそっ……こんなことになるなら酒場のマリアか美女エルフでも捕まえて楽しい一夜でも過ごしておくんだったな……。


 油断して死んでいった奴を大勢見てきたはずなのに、ここに来て俺もかよ……。


『サカサマ! サカサマシター!』


 何を言って――――――


「………………ん?」


 瞼の裏に張り付いた光が消えていく。


「……俺は死んでいない、のか?」


 ゆっくりと目を開く。


『サカマッキー!』


 先程よりもモンスターとの目線が近くなっている。


「なっ、なんだこれは!」


 俺の手が小さい。手のシワがない!


 服がでかいし大剣がでかい!


「一体どうなってるんだ……」


『サカサマ! サッカサマー!』


 先程のモンスターが言いながら永遠と殴り続けてくる。


 だが、その威力は無いに等しい。


 駄々をこねる子どものような威力にビオリスは呆然と立ち尽くす。


『サカ……サマ……?』


 ビオリスの顔を見上げ、モンスターは首をカコンと傾けた。


「なんなんだお前は……」

『ピギャー! サカサマ、キカナイヤツ! ホナサイナラー!』

「あ、おい! 待て――――――」


 ………………。


 モンスターはそう言い残してその場から消え去った。


 言葉が話せる上に瞬間移動、光属性の種類……?


 そんなモンスター聞いたことねぇぞ……。


「新種……それも正体不明のモンスターなら、ギルドに報告しておいた方がいいかもしれないな……」


 落としていた大剣に手を伸ばす。


「お、重い…………」


 服もサイズが大きすぎて合わねぇ……。


 待てよ……。今の状況を整理しよう……。


 近くなったモンスターとの視線。

 服の大きさが合わない。

 大剣が重い。

 小さくなった手、肌から消えたシワ……。


「もしかして……もしかすると……」


 あんまり使いたくはないんだが……、緊急事態だ。


「水よ、我の前に浮かび姿を映せ……アクアージ!」


 かざした手から出現した水が薄く縦長に伸びていく。


 等身大の姿を映し出していく。


「そんな……」


 揺らめく水が静まり、そこに映っていたのは――――――


「若い時の俺……だと……?」


 開いた口がふさがらない。


 頬に手を当て確認すると、スベスベの若かりし頃の肌がここにある。


 まだ冒険者になる前のヒョロヒョロの青年の姿……。


「こ、こっちも……まさか……!」


 息子のサイズも縮んでいることを確認。


「二十歳、いや、十六かそこらの時じゃねぇか……」


 呪文めいたモンスターの言葉に閃光のようなまばゆさ。


「さかまき……さかさま……?」


 さかさまって逆さまのことなのか?


 逆さま……体の大きさを逆さま?


 それでは何かが違う。


 さかまき……さかさま……。つまり逆。


 年老いていくその逆……。


 若返る?


 つまり、その、あれだ。これは結果から見るに……。俺はあのモンスターに―――――


「時間を戻された⁉」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
[良い点] 12/16 ・すべすべ、すべすべ! [気になる点] 「アクテージ」をソプラノボイスで勝手にイメージしました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ