001
「きゃっ……」
「や、やぁサンドラ……こ、これはだな……」
「ピィイイタァアアアアア!」
これでもう何度目だろうか……。
「ピーター! もうバレッタとは何もないって言ったじゃない! これは何⁉」
パーティで金を貯めてようやく買った家の広間では、もう何十回も繰り返されてきた男女関係のいざこざが始まった。
「ち、違う! サンドラ話を聞いてくれ!」
ピーターと呼ばれたエルフの青年は金髪の髪を濡らしていた。暖炉の火の前では、もう一人――――白い髪をしたウサギの獣人、バレッタと呼ばれた女の子が薄いシーツを一枚だけ羽織ってその素肌を隠している。
サンドラの赤い髪は暖炉の火と変わらず、今ならおまけに心の中も燃え滾っていた。
アマゾネスは怒らせちゃいけねえって知らないのかねぇ。
まあ、俺はといえば、ソファで知らないうちに寝落ちして、この茶番劇を目を瞑ってやり過ごすしかないんだが。
「サ、サンドラさん……違うんです……二人でお風呂に入っただけで……」
「バレッタ、それは言わないって!」
「あっ……。で、でもサンドラさん聞いてください……」
バレッタは力ない声でサンドラに慈悲を求めるが――――
「あんたもあんただよ! 気弱なクセして結局パーティの男全員と寝てるじゃないか!」
「そ、それは……」
男全員って言っても、俺は拒否されたけどな……。
性欲の強い獣人でも、おっさんとはヤりたくないらしい。酔った勢いで一度だけ言い寄ってみたが、門前払いよろしく「ご、ごめんなさい……」だってよ。
ということで、俺を巻き込まないで欲しい。俺をこの場から逃がして欲しい……。
「サンドラ! バレッタは獣人なんだ。仕方ないだろ!」
「あー、はいはい。性欲の強い女の子の方が男共はムラムラしますもんねー。その為にウサ耳の可愛い女の子を入れたんだもんねー」
バレッタがピーターを煽りながらバレッタのことを罵る。
「そんな言い方するなよ! バレッタが可哀そうだろ!」
「ハァ⁉ ピーター私に言ったわよね! 『君が一番なんだ。今までもこれからも』って。それなのにその欲情ウサギの味方なの⁉」
「うっ……」
「え、ピーターさん、私にも同じことを……」
「っ……」
ごくりと、ピーターの喉を詰まらせる音が聞こえた。
俺はいつまでこの茶番を聞き届けなければいけないんだろうか。もう一回眠りにつきたいが、声が大きいせいで寝れそうにない。
「と、とにかく! サンドラは落ち着いて! バレッタはとりあえず服を着ようじゃないか!」
「もう! ピーターなんか知らない! アレクの方があんたより大きいし、エルフのちっさいのじゃもう満足できないわ!」
はい、サンドラから直球が投げられましたー。
「お、お前! アレクと寝たのか⁉」
「今更なによ! パーティで男四人、女二人で男女関係がこじれないわけないでしょ! あんただって私とバレッタの他にもソロでダンジョン行った時、他のパーティーの女の子にちょっかいかけてるでしょ!」
「ピ、ピーターさんそれって本当なんですか……?」
底辺のパーティーに紛れ込んだのはいいが、ここまでクズな野郎が居ると思うと清々しいな……。
「お、俺はなにも知らない! そ、そうだ! 用事を思い出したからちょっと出かけてく――――」
「男がこんな場面で逃げ出すなんて、そりゃないだろ」
「ア、アレク……」
噂をすればなんとやら……アソコが大きいアレクの登場か。
これは波乱の予感がするぞ。
「そりゃ、自分の息子が小さいからって逃げ出すことはないだろ?」
「ハッ! 図体がでかいだけの脳筋バーサーカーには、テクニックもクソもないだろうが!」
「ふっ、下が小さい奴は気も短いんだな」
「てんめぇ……!」
あーあ、もう噴火寸前だな。
「う、うぅ……みんな喧嘩はやめようよぉ……」
「あんたもそんな透けたシーツをいつまで羽織ってんだい! 無駄にでかい胸晒してないでさっさと服を着なさいよ! このエロウサギ!」
「うぅ……ごめんなさぁいぃ……うぅっ……うっ……」
あぁ……泣いたぞー。エロ白ウサギが泣いてしまったぞー。
これは荒れるなぁ。
毎日10時で更新できればと思います!(;>_<)