企み
朝になると、僕は部屋にある水道を使って顔と歯を洗った。
「トントン」
ドアの方からノックが聞こえてきたので、「はーい」と返事をした。
「朝食をお持ちしました」
僕はウィンリーさんの声だと気づき、「今行きまーす」と言ってたドアの方へ向かった。
ドアを開けると、そこにはワゴンを持ったウィンリーさんが居た。
「おはよう、エリン」
「おはようございます、ウィンリーさん」
挨拶を交わすと、ウィンリーさんが、ワゴンに乗っているバスケットを取り出した。
「これがサービスの朝食ですか?結構豪華ですね」
「昨日は迷惑かけちゃったし、少し多めに持ってきたんだよ」
そして僕はバスケットを受け取ろうと手を伸ばすと、ウィンリーさんがバスケットを横に動かして僕の手から遠ざけた。
「え…」
「ごほん…受け取る前に頼み事があるんだけど、良いかな?」
するとウィンリーさんが耳に口を近づけた。
「今日の夕方、この宿の宣伝を手伝ってほしいんだけれど」
僕は頬を真っ赤に染めて、ウィンリーさんから急いで距離を置くのだった。
「な、なんでそんなことしなくちゃいけないんですか!?」
もちろん僕は反論した。
「実はねぇ、職員1人が風邪ひいちゃってさ〜」
「だからと言って、客に普通頼みます?」
僕は少し強目に言った。
するとウィンリーさんがニヤッと笑って「へぇー良いのかな、そんな事言って」と何か企んでいるように言った。
「な、なんですか」
「実はねぇ、昨日お風呂で倒れたお客様さんがいるって、2人の女の子達が伝えてくれたの…もう分かるわよねぇ」
僕はしばらく固まってしまった。
「だいじょぶ!他の人には言ってないから、ははは」
どうやら断るのは無理そうだと判断し、「…はい」と返事するのだった。
「じゃあこれ、約束の朝食だよ」
そう言ってウィンリーが、バスケットを僕の前に持っていき僕は、震える手でそれを受け取るのだった。
「それじゃあ、夕方にねー」
そう言ってウィンリーはドアを閉め、そして僕はなんとも言えない気持ちで朝食を食べるのだった。
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しばらくすると、またノックの音が聞こえたきた。
しょぼくれた気持ちで開けると、そこにはエリサとマリアが立っていた。
「どうしたの?」
「そろそろお出かけしたいんだけど、いいかな?」
僕は昨日のことを思い出し、顔を赤く染めながら、「ううん、いつでも良いけど…」と、照れながら言った。
「じゃあ昨日渡した袋に入ってる服を着て出発だぁ!」
マリアは朝からテンションが高いので、こっちも明るくなってきた気がする。
「分かった、ちょっと待ってて」
そう言うと僕は部屋に戻り、袋の中を取り出した。
そして僕はまたしばらく、フリーズしてしまうのだった。