夕悠亭
宿に案内してもらう途中、僕たちは会話を楽しんでいた。
「改めて、私の名前はウィンリー、あなたの名前は?」
「エリンと言います。」
「へぇ、エリンか〜、いい名前だね。」
ちょっとだけ照れていると次は「歳はいくつなの?」と聞かれたので、僕は「14歳ですけど…」と、答えた。
するとウィンリーは目を大きくしてこちらを見た。
「えぇ〜!嘘でしょ!」
「な、何がですか?」
突然驚いたような声を出したので少し驚いた。
「あなた14歳なの!まぁ確かに幼い見た目だけど…」
「何か問題でもあるんですか?」
するとウィンリーは少し強い口調で「大問題よ!」と言った。
「いい!この街では何もかもが高いの。今向かっている宿の滞在費もそうよ」
「それがどうしたんですか」
するとウィンリーはまだわからないのかと言わんばかりのため息をついた。
「あなたみたいな子供には到底払えないということよ!」
僕はあの審査官との会話を思い出し、封筒を見せようとしたが、あの時、あの封筒を見せた後なんだか、めんどくさい事になったので止めるのであった。
「お金ならそれなりにありますよ」と、答えるとさっきと同じように、取り合ってもらえなかった。
このままでは、宿に泊めてもらえないような気がした。
どうやってお金があることを証明すればいいか考えていると僕は冒険者ギルドのカードの存在を思い出した。
確かそのカードは冒険者ギルドで預金するときにも使われ、その残高も、このカードで表示されるので、充分証明になるはず。
「こ、これを見てください」
カードを差し出すとウィンリーはあの審査官と同じ様に固まってしまった。
「Sランク…」
「あの、どうしたんですか」
「あぁ、あっいや、なんでもないわよ」
なんだか急に優しくなった…成功したっぽい?
「まぁ、それなりに預金もありますので、いいでしょう」
僕は心の中でガッツポーズをした。
「そ、それでは宿の方へ案内しますね」
なんかさっきよりぎこちなくなっている様な気がしたが、気にせずについていくのだった。
<>
「はい、着きました」とウィンリーが1つの建物の前に立った。
その建物はレンガで壁の清潔感があり、薄いオレンジのランプが良い雰囲気を出していた。
「では、改めてようこそ、夕悠亭へ」
これはなかなか楽しみだ。
そう思いながら中へ入り、周りを見渡すと、思った通り暖かい雰囲気で、僕はすぐに気に入った。
しばらく内装を見ていると、ウィンリーさんがニコニコしながらカウンターの方で待っていたので慌てて僕は、カウンターの方へ向かった。
「それではこの宿にはどれぐらい泊まっていきますか?」
確か…試験の日に一度来いって言われてたっけ…その時に寮になるって言ってたから…3日ぐらいかな。
「では3日でお願いします」
「はい、わかりました。朝食と夕食はサービスで出ますが、量はそれほど多くありません」
「それとお風呂は10時までご利用できます。これで説明を終わります。じゃあごゆっくり〜」
こうして料金を払い、鍵を受け取って、部屋がある2階へむかうためにロビーの方を通って行くと、ある事に気がついたついた。
椅子でくつろいでいる人も、この宿の中にある食堂にいる人もみんな、女性なのである。
少し疑問に思ったが、もう僕も疲れたので急いで部屋に向かったのであった。