それっぽいメイド
「ちょっと、やめてください!」
僕は声を上げ抵抗し、すぐに師匠を振り払った。
「良いじゃないか、別に〜」
そして師匠は、優しい顔で、僕に「久しぶり」と囁いた。
僕は、少し懐かしい気分で満たされた。
「ここ最近は、冒険者として、無心で頑張ってましたから」
「無心とは…お前らしいな」
師匠があきれたように、答えると、僕は「何か話があったんじゃないですか?」
と師匠に聞いてみた。
「知っていると思うが、私は掃除ができないのだ」
僕は何かを悟りながら、「それで?」と話を進めた。
「しかも今回雇ったメイドが『この部屋ぐらい自分で掃除したらどうですか?』と言われてしまったんだ!なんと生意気なメイドなんだ!!」
僕は顔にシワを寄せながら、「それで?」と同じように進めた。
「まだ、わからないのか?」
師匠があきれた顔でこちらを見ると僕は「掃除なら、しませんよ」と真顔で答えた。
すると師匠は、泣きながら僕に抱きついた。
「頼むよぉ〜頼める奴が、君しか居ないんだよぉ〜」
「ダメなものはダメです!そのメイドの言う通り、自分の部屋ぐらい自分で掃除してください!!」
すると師匠が1つの鍵を見せびらかした。
「これが無いと、入寮できないぞ〜良いのかな?」
『なるほど、そうきたか…なら、無理矢理にでも、鍵を取らなければ』
僕は心の中で、そう答えを出すと、師匠が、「なるほど、君がその気なら…」
と、偉そうに言うと、師匠は、反射魔法を展開した。
「これで、お前も、掃除をせざるを得ないな、ハハハ!」
なんて汚い大人なんだ、と僕が怒りの苦笑いしていると、突然、師匠の周りに展開されていた、反射魔法が消え去った。
「何しているんですか、メアリ様?」
そこにはいかにもそれっぽいメイドが扉の前にいた。
すると師匠は、顔の色を悪くして、「いやーちょっと、遊んでいただけだよ…あはは」と弱く言った。
そしてそのメイドは物分かりがよく、師匠に向かって、「鍵をその子に渡してあげなさい」
と、静寂が広がる中で言った。
一体、このメイドは何者なんだ、と僕が考えていると、師匠が悔しいような、悲しいような顔で、僕に鍵を渡したのだった。