第四話
ギリ1週間・・・過ぎた?過ぎてないよね?(白目)
なんとか計画通り2人の魔道士を仕留めることが出来た。とはいえ、まだ魔導師は2人残ってるからな、余裕は出来ても安心は出来ない。
「さて、んじゃさっくりひっぺがして逃げるぞ。俺が行くからリラは撤退準備と残り2人に動きがないか見ててくれ。」
塹壕から這い出しながら声を掛ける。リラは軽く頷き、塹壕に残った装備を集め始める。
「わかった。気をつけてね。最悪なにも回収できなくてもいいから。欲張らないように。ちなみに向こうに動きはないよ。」
「りょーかいっ。行ってくるわ。」
答えて駆け出す。周囲一帯は魔術で薙ぎ払われているため、身を隠すような遮蔽物はない。幸い集積場は破壊されておらず残りの敵はコンテナの中だ。すぐに見つかる心配はないだろう。
100m程度をまっすぐ駆け抜け、死体の元にたどり着いた。2人とも頭部を撃ち抜かれているため破損した装備もないだろう。
すぐさま複層防護外套を剥ぎ取り、魔術発動体を奪う。
あとは・・・ベルトから手斧を引き抜き、胸の真中に振り下ろす。死体嬲りの趣味がある訳では無い。魔導師を倒したときに一番儲かる戦利品である魔核を取り出すためだ。人間の生命力を生み出し、魔力を循環させる役割を持つ器官である魔核は胸骨の中にある。魔導師のそれは一般人に比べて遥かに大きい。魔導師の装備を作るだけでなく、様々な薬品の原料にもなる。その為、帝国も連合国も軍に所属する魔導師は死後国に魔核を提供することになっている。
「お、なかなかデカイな。戦術級ってとこか?あー、でも火属性かよ・・・市場ダブついてたよな・・・。」
魔導師のランクは大雑把に分けて『戦略級』『戦術級』『先頭級』の三段階だ。一撃の魔術でどれだけの効果が得られるかで別れている。魔道士のランクは魔核のサイズである程度は推察できる。まぁ、どのランクであろうと正面切ってやり合えば負けるってのは変わりないがな。
胸骨を展開し、魔核を取り出しながらもう1人の方に目を向けた瞬間、発熱する魔核。
「やっべ!」
急いで摘出したばかりの魔核を放り投げ、複層防護外套に包まる。
ゴゥ──
僅かな音と共に火柱が立ち上がった。
俺は複層防護外套を羽織ったまま塹壕目指して走り出す。
「あー!死ぬかと思ったーっ!ローブ剥いどいてよかったー!てか、自爆術式魔核に刻むとかあほだよね!チクショー!!そしていいローブ着ててくれてありがとー!!」
思いつく限りの愚痴を叫びながら塹壕に駆け込んだ所で眼を釣りあげたリラと目が合った。
「バカ!アホ!気をつけろって言ったでしょうが!なにやってんのよ!気付かれたわよ!」
持てるものを全て纏めて逃げる準備を整えたリラの罵倒。
ありがとうございます!ご褒美です!
「まぁ、収穫が無理だって分かればあとはにげるだけさ!」
「その、『逃げるだけ』の難易度跳ね上げといて笑うな!後で絶対しめるからね!」
荷物を半分受け取り、塹壕から飛び出す2人。
肩越しに振り返るがまだ敵は視界内にいない。とはいえ、遮蔽物のない荒地だ。遠からず見つかるだろう。
目指すのはこの先にある河だ。ここに物資と、人員を運び込むために使った船がまだいくらか残っている。何隻かを違う方向に走らせれば少しは時間が稼げるはず。その隙に泳いで脱出するしかない。
「魔核は戦術級くらいだった。同レベルのチームだったらキツイな。」
前を向いたまま声をかける。理想はアイツが隊長であとの3人は格が落ちるってとこだが・・・
「あの2人は物資の物色から外れて殲滅に放り出されたんだろうし、残りが格下ってことはないでしょうね。まぁ、たかだか補給所潰すのに戦略級は投入しないでしょ。」
「ま、そーだろーねー。戦術級2人ならなんとか逃げ・・・れるといいなぁ。」
「ハイハイ、そんなことどうでもいいから!今は走るしかないんだから黙って走る!」
それからはただ全力で走った。後ろを見る余裕はないが、リラが何も言わないってことはまだ追いつかれてないってことだ。
陽光に反射する水面が見え・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・
「は・・・嘘でしょ・・・?」
振り向いてはいないが、信じられないものを見たような顔でつぶやくリラ。
振り向く俺の目に入ったのは遠くから押し寄せる10mはあろうかという津波。
「・・・戦略級・・・」
そう呟いたのはどちらだっただろうか。
という訳でまだ続きますプロローグ。
主人公の性格違くね?
わ・・・ワザトダヨ?
正解はプロローグの後に!




