第1話 見知らぬ場所
チュン チュン ーー
鳥が鳴いている。
暖かい日射しを感じて目を覚ました。
どうやら、木の下で眠っていたようだ。
ふわぁと少年はあくびをして、腕と背筋をのばした。辺りを見回してみると、草原に包まれている。
涼しげな風が体に当たって気持ちがいい。
……………で、ここどこ?
* * * * * * * *
「おい、まじでここどこだよ。」
少年はただひたすらに歩いていた。目を覚ました場所から見えた町のような所を目指してとにかく足を進めた。
「なんでこんなに下り坂が険しいんだよ!!」
どうやら自分のいた場所が山だったようで、下り坂が険しかった。というか、見知らぬ場所で一人という寂しさで何でもいいから話していたかった。
しばらく歩いていると、町が見えてきた。
「おっ!ついた。」
もしかしたら助かるかもという安心感が少年を小走りにさせる。
町の門をくぐり町の光景を見た時、少年の安心感は一瞬で消えた。
「なんだよここ…。」
町は西洋風のレンガなどが使われた家が建ち、外で沢山の店が並ぶ市場の様になっていた。
とても賑わっているようで、人混みが多い。
とりあえず入って見ることにした少年は不安を浮かべながらも前に進んだ。
なんだよ、その服装。どこの民族衣装??
肌の露出度が高いようなー……男としてはちょっと目を向けにくい様な服の人多いんすけど……。
少年は誰かに事情を聞くべくして、町の中心へと向かった。
「返して!!!返してーー!!!」
歩いている途中ふと聞こえた声。目を凝らしてと奥を見ると、小さな女の子が、自分よりも背の高い二人の少年達に向かって叫んでいた。
「ねぇ返してっ!!」
「嫌ーだねーー。」
「返して欲しかったら取り返して見ろよー!」
少年が持っているのは何かの鍵のようだ。
今は面倒事に巻き込まれたくないという気持ちもあったが、反射的に口が動いてしまった。
「おいっ!お前ら……「止めなさい!」って、えー!!」
自分が言おうとした時に誰かが、先に言ったようだ。
「この子が嫌がってる。返してあげなさい。」
「ちぇー。」
ほらよと少年は少女に鍵を返した。
そして、正義の味方のような人は少年の目の高さまでしゃがみこんだ。
「最後に、何か言う事あるよね?」
その言葉を聞いて少年達は反省したようで、二人で顔を見合わせ、少ししゅんとした目をした。
「「ごめんなさい。」」
「許してあげてくれるかな?」
少女の方に目を向けると、笑顔で
「うんっ!」
と頷いた。少年達と少女は仲直りが出来たようで、笑顔で話していた。そしてその様子を見て、正義の味方のような人も優しく微笑んでいた。
俺はその様子を見てすっかり感心してしまっていた。
てか!ここがどこなのか聞くならこの人だ!!
自分の状況を思い出した少年はこの人なら信用出来るかもという希望を持って声をかけてみることにした。
「あっあのー……」
声が小さかったようだ。少し距離があるこの場所では、聞こえるはずもない。
「あのー!!そこの方ー!!」
その時、バッと風がふいた。
「えっ…?」
綺麗な少し長い髪がなびいてとても綺麗だった。
彼女が少年の方に振り向いた。少年は彼女の澄んだ瞳に目を奪われていた。
この出会いが、世界に影響を与えることになるなんて、まだ二人は知らない。