プロローグ
風が草をなびく音が聞こえる。
同時に街の人の泣き声、怒りに溺れ、叫びくるっている人の声がする。
もはや、現実に目を向けられず、壊れたロボットのようにただひたすらに笑っている人もいた。
そこにいる一人の少年、レンはどうすることもなくただ立ち尽くしていた。
崩壊した建物、荒れ果てた木々、そして……
壊れていく人間
この状況を「絶望」と呼ぶのに相応しいと思う。
ーー俺は何も出来ない。
そんな言葉がレンの脳裏に浮かんだ。
その時、俯いていたレンに夕日が差し込んだ。
ゆっくりと前をむくと、そこには
一面の夕焼けが広がっていた。
高台から、見下ろす山々は茜色に染まっていた。
そして、夕焼けを見つめる少女がいる。
レンは前に歩き出した。
そして、少女の隣に並ぶ。
レンはゆっくりと少女の方に顔を向けた。
少女はただまっすぐに、目の前に広がる風景を見ていた。
そのまっすぐな瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。
不覚にも、その姿を美しいと思ってしまう。
その涙の理由は、悲しさ?守れなかった悔しさ?
それとも、君も目の前に広がる夕焼けに心を奪われているのだろうか。
レンは再び前を見つめた。
輝く光が今日の出来事を浄化するかのように二人を照らす。
こんな状況でも、夕焼けは綺麗なんだ。
この世界は
どうしようもなく美しい