3話
「もう一ヶ月! 一ヶ月経つんだけど!」
カナちゃんはいらいらしながら宇宙船の壁を蹴っ飛ばした。
それもそのはず。二ヶ月かけてようやく地球まで来たのに、協力者が見つからないまま一カ月が経ってしまったのだ。今日も夜まで探したけど、収穫はなかった。
カナちゃんが候補を見つけてきても、パパとママは「もっと慎重に見極めなさい」ばっかり。そりゃ変なおしゃべり女でも捕まえてしまったら大変だってことはカナちゃんも分かってる。それを差し引いても両親の煮え切らない態度には腹が立って仕方がなかった。
でもそれは、カナちゃんが見た目で候補を探していたからなんだけどね。それが証拠にカナちゃんが見つけてきた女の子は可愛い子ばっかりだった。
「次の候補見つけたら、パパとママに内緒で話しかけちゃおうかしら……あれ?」
レーダーを見ていたら、ある場所に対して危険信号が出ているのに気がついた。
簡単に言うと、『一酸化炭素の濃度がやけに高いから近づくんじゃあないぞ』というやつ。でもその位置を確認しても、火事が起こっている訳でもなかった。レーダーの故障も疑ったけどカナちゃんには分からなかったので、カナちゃんはそこに向かってみる事にした。
宇宙船の舵を切る。ステルスモードにするのも忘れない。
うーーーん、やっぱり近くで見ても異常はなさそうに見える。
カナちゃんは、お父さんを叩き起こした。
「痛い! 痛いじゃないか! 一体どうしたんだ!?」
「パパ起きて! ほらあれ! あの透けて見える眼鏡貸して! あそこの家がおかしいの!」
事情を話し、普段は貸してもらえない道具を借りるカナちゃん。
科学者としては優秀だけど、デザインには無頓着なパパのせいで、眼鏡をかけたカナちゃんはちょっと滑稽な姿になった。
家を透過させて見たところ、そこには一人の女の子の姿があった。静かに眠っているように見える。
するとパパが良く分からない機械を操作しながら呟いた。
「普通の家みたいだな。でも留守か?ボブッピー星の砂ネズミくらいの生体反応が1つあるだけだが、ペットは留守番か? ……わ!」
パパがそう呟くやいなや、カナちゃんはすごい勢いで宇宙船を操縦し、女の子が眠っている部屋の窓に突っ込んだ。窓ガラスが派手に割れ、冷たい空気が部屋に流れ込んだ。