第3話
たったひとつの痛みが自分を苦しめる。
腹部が張り裂けそうだ。
対処のしようがない。
目の前が暗くなってくる。
ああ、俺はここで、
「死ぬか!ボケェ!!」
なんかシリアスやってみたけど餓死するのだけはダメだ。
俺のプライドに反する。え?プライドあるのかって?なめんなボケ!こちとら…。
腹減るからやめよう。
まだ見ぬ師匠……、魔王のことばっかり気にしてて食いもんのこと忘れてた。
私のバカ♪
……キモいからやめよう。
まったく自分からやっといて何言ってやがんだ。
「おー、もうあんな遠くに」
後ろを振り返ると王都イフナリアが指でつかめるほど小さく見える。
さすがにここまで来れば勇者の帯剣式の歓声は聞こえない。スゲー煩かったもんな。
王都を見るのをやめ、前を見ると…
スライムがいた。一番弱いやつ。ぽよんぽよんって。しかも一匹でだ。普通こいつらは群れで行動するはずなのに…。一匹だからスライムAとか呼べない。
「なあ、スライムさんよ」
スライムはぷよぷよした透き通った青い体に作り物のような目が張り付いている。
その作り物のような目でこっちを凝視してくる。
よせよ。照れるじゃねーか。
「お前が出てきても俺はうれしくねーの。なんかこう肉付きがいいモンスターに出てきてほしかったぜ」
スライムは解ったのか解ってないのかぽよんぽよんと音をたてて去っていく。
ぴろりろりん♪
カイムは<説得>覚えた。
いらねー。モンスター仲間にできたりするんだろうけど、どうせ中ボス以上には効かないとかなんだろ。あっちの世界のゲームにこんなのあったぜ。
まあ、こんなことをしてても魔王のいるとこには進まない。
れっつごー!だ。行くぞー!
………………行く?
………………どこへ?
………………魔王のところ。
………………。
「どこだああぁぁぁぁ!!!魔王おおぅぅ!!!」
そこで意識を失った。
空腹で……。