第1話
「ここに入れ」
綺麗なお姉さんが俺を牢屋に閉じ込める。周りにはガラの悪いいかにも悪いことやってます、みたいなやつらがたくさんいる。
「おいおい、俺にはそんな趣味無いんだぜ」
「黙ってろ」
すたすたと地下牢の外に歩いて行ってしまう。
「おーい、放置プレイかよ〜」
「うるせーぞ!ガキ!」
軽口はあっさり流され代わりに隣の牢のおっさんが怒鳴ってくる。また何か言われる前に黙っておくことにする。
「おい、坊主」
「ん?」
今度は向かいの牢屋に入っているおやじが言う。
「お前は何やったんだ?」
「暗殺だ」
間髪入れずに答える。男は珍しいものを見たかのように驚く。
「ただの殺しじゃなくてか?」
「俺は何でも屋でな。依頼でやったてわけだ」
「お前入ってくる時やってないって連呼してたじゃないか」
確かにお姉さんに引きずられながら無実を主張した。しかし…
「あいつら勘違いしてんだよ。俺の標的は奴隷商人なんだが、そこに奴隷を買いに来てた貴族も殺したとかよ」
「お前が殺したのか?」
「……事故死だ」
少し間を置いて答える。が、男はすぐに返してくる。
「殺したんじゃねーか。同じだ」
「あー、これで俺も犯罪者か」
諦めたように呟く。
「よろしくな。一緒に処刑台行きだ」
む、笑顔がムカつく。
「いや、残念ながら俺は逃げる」
「おいおい、脱走か?」
「もち」
「無理だ無理。ここから脱獄したやつなんかいねぇよ」
「まあ、見てろ」
鉄格子に手をかけ広げていく、するとギゴゴと音をたてて曲がっていく。
男が口を大きく開けて驚いている。
「驚いた。すごい怪力だな」
「おっさんも出してあげようか?」
「いや、金とりそうだしな」
「む…」
図星なので言い返せない。
「ははっ、図星か。じゃ生きてたらまた会おう」
「おう」
手を振って離れていく。
「おい!ガキっ!ここから出しやがれ!」
「俺もだ!」
「た、助けてくれ!」
聞こえない聞こえない。