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ツーサウザン夢現

作者: 名無佑馬

 高校デビューをする勇気など、僕にはない。必死に勉強して手に入れたこの制服を着る、この共学周芳寺高校の門をくぐる資格があれば十分だ。

 難関高校ではないけど、バカな僕が入学できたのは奇跡だ。

 僕の学力で入学できた高校は、不良が行く男子校だけだった。

 この幸せを噛みしめていると、背後から僕は肘打ちを受けた。衝撃でよろけた体とズレた眼鏡を直す。

「すまん、大丈夫か」

「大丈夫、僕も不注意だったし」

 僕は細身だが、長身で体つきは良い。その僕が丸まる背中に手を当てているので、発言に説得性はない。

「それで大丈夫と言えるか?」

「そうだね、じゃあ、ダメ」

 僕たちは大声で笑った。彼は周芳寺高次と名乗った、学園長の孫だとか。彼の友人たちと共に僕たちは校舎へ進んでいく。

 受験発表の時にも使われた掲示板で自分のクラスを確認する。掲示板の前は人で溢れており、十分は要した。

 僕と高次は同じクラスだ。

 僕たちは肩を並べて校舎の階段を上る。高次の友人たちは別のクラスのため、数分前に別れた。

 僕は真面目、とは言わないでも地味で短い黒髪の眼鏡。高次はワックスで長い金髪をまとめる洒落屋。僕たちの共通の話題を見つけることは難しかった。そのため、話す内容は他愛もない思春期の男子が関心を持つこと。

 乱暴だが、フレンドリーに高次は接する。僕は高校で初めての友達との触れ合いに喜びを感じずにはいられなかった。

 高次に頭を締められた状態で歩くのは難しく、僕の体はふらつく。

 女子の短い悲鳴が聞こえた。

「高次、腕はずして」

 僕は無理やり高次の腕から逃れる。声がした方を見れば、女子が倒れていた。ふざけてふらつく僕とぶつかったのだろう。

「ごめんなさい、大丈夫ですか?」

 僕はすぐに女子の側へ片膝立ちになる。言い訳を考えるが、思いつかない。

女子は僕を上目づかいで見ながら、肩まで伸びる髪を人指し指でいじる。

「仲いいね。同じ中学だったの?」

 女子は笑顔で僕たちに質問をする。彼女は僕たちを咎めないでくれるらしい。

立ち上がろうとする女子に、僕は手を差し伸べる。

 女子は僕の手を掴む。彼女の顔は、何故か、赤くなっている。

「ついさっき、知り会ったばかりだよ」

 僕は女子の柔らかい手を引きながら答える。

「影重こころ、よろしくね」

 少しの間があってから女子が自己紹介したのに気付き、慌てて僕も名乗る。

 こころも僕たちと同じクラスだった。

 僕と高次、こころは僕らの教室へ歩き始めた。



本当にそうだったならよかったよ!



 目を覚ますと青い世界が広がる。

 僕は高校の屋上で寝ていた。左腕に巻いている腕時計を見れば、昼休みも終わるころ。入学してからの一か月、昼休みはここに来ている。

 僕は教室に戻る。クラスの皆は教室に戻ってきた僕に気づくと、うつむく。先生も僕と目を合わせようとしない。

 僕の容姿は冴えない眼鏡だ、悪いレッテル付きの。

 前半の話で本当のことは周芳寺高次に出会い、肘打ちを受けたところまで。実際はカツアゲをされた、周芳寺高次に。抵抗して、僕は彼に全治一ヶ月の大怪我を負わせてしまい、入学初日から停学処分を受けた。

 周芳寺は有名な不良らしく、以来不良たちにケンカを売られるようになった。彼らは弱かったので、僕は全員返り討ちにした。

有名な不良もいたらしく、僕の悪名をより高まった。僕の高校生活は不良に囲まれる絶望的な日々となった。

 授業中、僕は背をピンと張り、真剣に授業を聞く。一番前の席に座る僕に周囲は棘のある視線を送る。

 例外もあるが。

 チャイムが鳴り、今日の授業が終わる。僕はすぐに帰り支度を終わらせ、靴紐を結び直す。

 担任の先生が話を終えた瞬間に素早く立ち、僕は走り出す。教室から出た僕の背後から、もう一人。

「待て、コラ、今日こそはお前を討つ!」

「本人がいないとこで言えよ」

 現実のこころはサラシに特攻服のレディース風。実際に所属してないので風だ。放課後に俺はポニーテールを揺らす、物騒なこころに追いかけられている。

 校舎を出た僕は走る速度を上げて、学校の前にあるビルの影に隠れる。

「女から逃げるなんて恥ずかしくないのか!」

「女を殴る方が恥ずかしいよ」

 僕は聞こえない声量で僕を見失ったこころに返答して、帰ろうとした。

「よう、ねえちゃん。その格好、誘ってンか?」

「いや、これは、そうじゃなくて……」

 下卑た男と怯えたこころの声が僕の足を止める。

 根はいい子のこころは本物の不良にナンパされることなど想像していなかったのだろう。予定を変更し、僕は迷惑な同級生を助けることにする。

 僕は忍び足でナンパ野郎に近づく。手を伸ばせば届く距離で、僕に気づいたナンパ野郎へ、僕は問答無用で殴り倒し、意識を失ってもらう。

「お前、どこにいやがった」

 威圧的な物言いだが、こころは涙で瞳が潤んでいる。

 面倒事になるのは嫌なので、僕はこころから逃げ出す。

なにか踏んだが気にしない。

 こころも大声をあげ、僕を追いかけ始めた。


 こんなはずじゃなかったのに。

二千文字END





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