第2話~Mr.C.B.(1)~
父と母が運命的な出会いを果たし、その運命から一頭の名馬が生まれる。ミスターシービーはその絵にかいたようなストーリーを持った馬であった。
私もミュージシャンの夢を追って上京した彼をさりげなく追うように東京に出た。私は今、旭川から上京し、東京のあるレストランにてウエイトレスをしている。レストランは中学時代の親友の兄が経営しており、人脈の大事さを思い知ると同時に、彼に告白できずに終わってしまったその中学時代を後悔する。せめて、もう一度会いたい。玉砕してもいい。競馬の大逃げと同じように、けど2年半前のプリティキャストみたいに玉砕することなくゴールインできたら……、という思いも少なからず抱えていた。
だからこそなのだろう、ミスターシービーの活躍を見ると、なんとなく彼に再会できる予感が強くなる。
話をもどすとミスターシービーは父トウショウボーイと母シービークインが新馬戦で対決し、トウショウボーイが圧勝、その時の強さを見たシービークインの生産者は「あの馬は将来、必ず種牡馬になるだろう。その時はシービークインに必ずトウショウボーイをつける」と心に決めていた。だが、心に決めているだけでは叶わないこともなる。シービークインのいる牧場はトウショウボーイに種付けする権利を持ち合わせていなかったのだ。だが、ここを関係者の独断で強引に種付けされたことにより、生まれた馬、本来なら禁断の子であるはずの彼は、生まれる前からドラマに満ちていたのだ。
このエピソードを聞いてから、私も行動しなければならないと思い、上京した。そして、そんな私のエゴを重ねたミスターシービーは最後方から一気にまくるという型破りな戦法を引っ提げてクラシック初戦の皐月賞に挑む。だが、今日はあいにくの雨、父が苦手とした重い馬場での施行となった皐月賞。だが、ここで新たなる王者の到来を告げる衝撃的な末脚を見せ、彼は一冠目を制する。そして彼は二冠目、かつて父が勝利することができなかった日本ダービーへと駒を進めたのた。
だが、私の淡い思いは彼の末脚と異なり、まだ最後方に取り残されたままであった……。