8/8
うらしまたろう
昔々、ある海辺の村に太郎という名の若者がおった。
ある日、太郎が釣り場に向かって浜辺を歩いていると、隣り村の子ども達が輪になっているところに出くわした。
近づくと何やらせっせと拾い集めて籠に入れておる。
「何して遊んでいるんじゃ?」
「遊んでるんじゃないやい。ワカメを拾い集めて売るんじゃ」
子どもはそう言って太郎を睨みつけると、また拾い出した。
太郎が、そういえば昨夜は台風だったなと思いながら籠を見れば、なるほどワカメが溢れんばかりである。
「ほう、小遣い稼ぎか。それは感心じゃの。にしても、もういいんじゃないか。それじゃ蓋もできんじゃろ」
子どもは、はっとした顔をすると、蓋を手に取って籠にかぶせるが上手く蓋をすることができない。
「ちょいと貸してみな」
太郎はそう言って子どもから蓋を取り上げると、力任せに上から押さえつけてこう言った。
「ほぅらっ、閉まったろ」
子どもたちは、太郎に礼を言うと、籠を背負って村へ帰っていったのであった。