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あおいち
それは人々の認識とは何ら関係なく確かにそこに存在していたのだろう。
深夜零時の石神井公園。一月の厳しい冷え込みと、人の気配を感じさせない暗闇が公園から人を遠ざけていた。
私が大通りでなくそんな夜の公園を歩いていたのは、少しでも早くアパートに帰って冷えた体を温めたいがため。
早足で歩きながら、途中でふと池の方に目をやると一人の青年が外灯の下で池を眺めているのに気が付いた。私は(何か知らんけど、こんな時間にご苦労なこって)と苦笑いしながら、立ち止まることなく家路を急ぐことにした。
けれども、三十秒後には自動販売機で缶コーヒーを買っている私がいた。それは、先ほど見かけた青年に正体不明の違和感を覚えたからである。
私は、違和感の正体は何だろうと頭をひねりながら缶コーヒーを口にした。缶は手にすると少し熱いくらいだったが、その中の液体は適温であった。自然、飲んだ私の口から感嘆の台詞がこぼれた。
「あぁ、おいちぃ」と。