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アスパラベーコン系タコ人外は気難しい教職者様

作者: 担々狸
掲載日:2026/04/09

 人間からかけ離れた異質な風貌と異なる食生活。たったそれだけで事実と異なる噂や思い込みを増大させては、歪み捻じれた恐怖心と根も葉もない妄執で縛り付けてくる人間達に辟易していたタコ系人外のもとへ懲りもせず生贄として捧げられた少女がタコ系人外と一緒に暮らす物語り。

 此処数日。波が頗る穏やかかと思えばそういう事でしたか。

 「嵐の前触れといった処でありましょう。」

 己に何の影響が無いとはいえ、此処まで疎くなるのは如何なものか。多少、気を掛けた方が良さそうです。

 黒色スータンの裾と白色ストラが風に舞うさまは風が大きく育ってきていますね。はためき流すのも一興ですが飛ばされては堪りません。袖から伸びうねる手で取敢えず抑えておきましょうか。クルリと巻き吸盤で吸い付いておけばとりあえず平気でしょう。

 「雨が降る前に本日の御夕食を取りに行かなくては。」

 魚も食べますが何分貝や海藻の方が性にも胃にも合っていまして…。狩りよりも拾う採取する方が私自身面白いくらい似合っていまして…。

 「…さてはて。此れは如何しましょうか。」

 いつもの取り場に見馴れぬものが掛ってしまっている。

 先に述べたように私自身、貝や海藻を主食とし魚などの肉類は余り食しません。ですのに、ねぇ。


 「栄養失調及び幼体動物の肉など…。」


 食べる気にはなりません。

 浜辺近くに設置された取り場に刺さる幾つかの杭にソレは見事に引っ掛っていました。大波になりつつある海に攫われないのは上手く取れないように引っ掛っていると見える。

 ですが、困ったものです。

 自身の御夕食を取りに来た筈が違う、ある意味大物を見付けるなど思いも致しませんでした。

 「案の定意識はありませんか…。」

 濡れる事を気にしない私は海に入り、人とは違うぬめり湿っている四本の腕で小さな体を抱留めました。四本がうち一本で濡れた髪を掻き分け顔色を窺う。お世辞にも良いとは言えません、言うことなど出来ません。

 幾ら人では無い私でも此の子の体重は軽すぎる。まるで波間に浮かぶ海の花を抱き抱えるよう…。骨と皮に近い体を隠す衣服は貧相な物。此れでは冬の寒さに耐えられるとは到底思えはしない。

 「なら、私は如何したいと思っているのです?」




 問いかけるのは己に対し。

 人の世界に関わってロクな事などありましたか?

 馬鹿げた行動、理解し難い思考。低能とは言い切りません。ですが未だに有り得ない事を意味が無い事をして何になる? 何を得る?

 そう問い聞きたいのです。




 私の見た目に皆慄き 逃げ惑っていた事は 幻です?

  違うでしょう


 長い日照りがあり 私に供物を捧げれば 雨は降ると?

  根も葉もない絵空事でしょう




 「挙句、…何人もの犠牲を払えば神に許して貰えると。野蛮な行為をしてきたのは誰です?」


 罪無き命が消される。此れを冒涜と言わずに何と仰いますかっ。


 「だが、主は…神は仰いました。迷える子羊に手を差し伸べ助けよ、と。」

 静かに泣く涙も何れ大泣きになる事でしょう。

 確か蓄えがあった筈です。此の子には其れを与えましょうか…。食べずに腐らすのも食物に対し無礼でありましょう。

 意志が決まれば行動に移すのみ。早々に自宅に帰ると致しましょう。

 四本がうち二本もあれば十分。子供を背に抱えつつ、私の御夕食を取り海藻で貝を包む。屈んだ姿勢で何度も子供がずり落ちそうになり、その度に吸盤でしっかりと吸い付き固定したお陰で何とか子が海に落ちる事はありませんでした。

 だが、しかし…。

 吸付く度に思うのです。脆弱な体つきに、硬い骨が表皮の直ぐ近くにある事に。

 「もの悲しい、ですねぇ…。」




***




 わたしが目覚めたとき、そこははじめて見た場所だった。


 洞窟のなかにいるのかな?でも、とても明るくて。まるで天井に夜空のお星さまを少し分けてもらったのをちりばめているみたいで。青くて、とてもきれいで。

 「――あったかい。」

 ふかふかのベッドで寝ていたからじゃなくて。空気が痛くないの、すごくやわらかくておちつくの。

 そして、海のにおいがするの。なんでだろって思っていたら何てこと無かった。


 「海と繋がってるんだ。」


 大きな水溜りみたいなものがベッドのすぐとなりにあって、小さいけどいつもきく波の音がきこえた。

それは洞窟の壁の方までのびていて。向こうがわの光が水に溶け込んでオレンジ色のあかりがぼんやりと見えた。そのまま壁を見てみるとドアがあって、隣にいけるんだって思って、恐いけど、でもやっぱり開けてみたくて。

 冷たくない石のゆかを歩いて、ドアノブを握って、捻って…。




 ギィィー…


 「…ぁ。」

 「おや。起してしまいましたか。」

 体の御加減は少し良くなりましたか、と話す人は人じゃなかった。

 木でできたイスとテーブル。やさしいあかりのランプ。ぶあつい本はきっと中身もむずかしくてきっとわたしには読めない。

 「その様な処に立たず此方にいらして下さい。今、御食事を用意致しますから。」

 何も言わないわたしをじぶんの手と違う手がてまねきする。

 それでも動かないでいたら黒いふくをきた人じゃない人がよってきた。足元はふくでかくれてみえない。だけどぺたぺたという音じゃなくて、なにかぬちゃぬちゃという音。

 きっと足もわたしと違う。

 少しくらくなったのはわたしの前に人じゃない人が立ったから。

 見上げる首はちょっといたい。

 だけどもっと見てみたいっておもった。おひげなんだろうけど、それはずっと動いていて話すときにちょっとだけ見える口元にはとんがった歯があった。わたしが見て、おもっていることに気付いたのかな。

 照れながらおひげをさわっていた。

 「そんなに珍しいのかな?」

 「うん。」

 「恐いとは思わないのかい?」

 「なんで?」

 わたしのことばを聞いて人じゃない人はお目目まん丸にしてビックリしてた。

 続けてなんで?って聞いたら「気にしないで」って言われちゃった。




***




 「タコさんは食べないの?」

 「私は余り好んで食べはしませんね。」

 穀物を煮詰め柔らかくした物を此の子は食べてくれました。書物に記載されていた“御粥”というものは矢張り衰弱した体に良いと見える。

 うんうんと自身を頷いておりますと、何か気に掛るのでしょうか? ふと御粥を食べる手が止まってしまいました。

 「なんで食べないのにあるの?」

 此れは穀物を所持しているという事でありましょう。

 供物として奉げられた物を捨てるという事を出来ずに保管していた物。その様な事を言っても此の子には関係も無ければ意味も無いでしょう。もとい知らなくて良い事です。

 適当に誤魔化せば納得してくれたらしくまた食べ始めて下さりました。

 ですが、また止まってしまいました。しかも今度は何か考えながらです。

 「如何かしましたか?」

 「――!! ううんっ、なんでもない。」

 急遽腰を掛けられる倒木を持ちこみ其れに座っている私ですが。いえ、何分一人身でしたので対の椅子など無くても平気でありましたから…。ではなくっ。

 明らかに何かを隠している様は一体何事なのでありましょうか!? 小さきながらも愛想笑いしている様は心を痛めます。

 何か宜しく無い事を無意識にしてしまった…?

 嗚呼っ。神に仕えている者に有るまじき行為! 早急に正しき道に戻さなくてはなりません。

 「何が宜しく無いのか仰ってくれませんか?」

 「だいじょうぶっ。なんともないっ。」

 「本当ですか?」






 「このおかゆ、…あまいくておいしいなって。」

 「本来御粥とは砂糖で味付けするものでは無いのですか?」

 「えーと。しょっぱいって言ってた。」

 「何というっ!!」

 私とした事が調味料を間違えるなどと何阿呆な事をしているのでありますか!?

 一人嘆いている間にも此の子は目を伏せ何かを噛締めながら御粥を食べています。…美味しく無ければ新しく作り直すというのに。全て食べるなどと、出来ている子ですねぇ。

 「おいしい。」

 「其れは何より。ですが本当の味付けとは違うものなのでしょう?」

 「わかんない…。わたし食べたのはじめて、ほかの子のはなし思い出しただけ。」

 初めて心の奥底が震えました。そして、理解してしまいました。

 孤児なのだ、と。孤児故に満足に食べ物も食べれず、きっと…。貰える事も出来なかったのでしょう。

 此処最近の日照りの所為でもありますか。しかし、嵐がもう直ぐ傍まで来ております。長きにわたる日照り飢餓も解消される事でしょう。さすれば此の子ももう少しマシに生きられましょう。

 では、神に仕える者として為すべき事は決まりました。

 「体調が良く成り次第、私が村に送り届けましょう。そして、逞しくも美しくそ「帰れないよ?」」

 今、何と仰いましたか…?被された事は触れずに置きましょう。しかし、何か幼子にしては言ってはならぬ言葉を聞いた気がしますねぇ。

 確認の為、向かい側に座る子を見てみました。其の子の瞳は良くも悪くも分かっていないように思えます。言っている意味をですか? いえ、自分の置かれた立場を、です。




***




 わたしは いけにえ

 村のために えらばれた


 わたしの命が 村をすくうんだって

 だから だから

 だから


 わたしは がけから 落ちた

 海に向かって えいって




 落ちていくときに見た 村の人たちの顔 すごく覚えてる

 みんな みんな 楽しそうに 笑ってた

 うれしそうに 笑ってた


 わたしが いけにえになったら みんなしあわせになる

 村も しあわせになる




 でも わたしが村に

 村に 帰ってきちゃったら …みんなかなしくなっちゃう


 だから 帰れない


 ねぇ? おしえて?




 海のカミサマって どこに行ったらあえますか?

 どうしたら わたしの命 もらってくれますか?






 「…君は生贄の意味を知っているのでしょうか。」

 「うん。海のカミサマのお嫁さんになるの。で、命をささげて村をすくってくださいって言うの。」

 「………馬鹿げているっ。」

 わたし何かわるいこと言っちゃったのかな…。タコさん、すっごくすっごく怒ってる。

 目がとっても恐い、怖い。でも泣きだしそうで、かなしそうに見えるの…。

 そのあと海のカミサマの場所はおしえてくれなかった。でもわたし一人じゃ探せないからタコさんのところにいようと思うの。だって帰れないから、帰れる場所なんてないから。

 潮のにおいをいっぱいに吸い込んで。顔をぎゅうってくっ付けて。

 わたしと違うたくさんの腕がわたしをやさしくだきしめてくれて。顔に吸い付いてくるおひげがくすぐったくて。

 「もう寝なさい…。」

 「うん、おやすみなさい。」

 「良い夢を…。」

 そのまま寝ちゃった。

 でもぽやぽやする頭のなかで思ったんだ。

 海のカミサマがタコさんだったら、いいなって。タコさんならすっごくすごくうれしいなって。






***




 「いや~本当に綺麗になったよな。あんなちびガキがこんな美人さんになっちまって。」

 「もうっ、それは昔の事です。からかわないでくださいよ。」

 豪快に笑う男の人魚は岩肌に上半身の乗せ鰭を水面に打ち付けていた。そんな人魚に茶化されながらも本日の昼食に使う岩のりをせっせと笊に乗せ集める手は止めていない。

 序に久しぶりに小さな蟹でも食卓に並べようかと、手を伸ばした瞬間。蟹ではなく逞しい手に捕らわれてしまった。

 見上げれば先程の人魚が楽しげに且つ色っぽい視線を投げかけている。

 「なぁ。このまま俺のお嫁さんにならねぇか?こんな味気ないものなんか食わせない。もっと精のつく物食わせてやるから、ぐへはっ!?」

 「何、人の伴侶をくどいているのですか?全く…。」

 「お帰りなさいませ。」

 口ではそういうものの、視線は聖書にて変形する勢いで叩かれた人魚に向けられていた。

痛いのだろうか、いやきっと痛いに違いない。だってあんなに痛がっているのだから。鰭を小刻みに震わせ、叩かれた頭部を両手で抑え、涙目になっている…。思うだけで此方も何となく痛くなってしまう。

其れに気付いてか一本の手がそっと頭を撫でていく。吸盤に軽く吸われることも今となっては何ともない。

 「さてはて…。此の変態魚類はさて置き、本日の御昼食は何でしょう?」

 「えっと岩のりのフライによければ小さい蟹も添えようと思っていまして。」

 「うむ。流石私の伴侶だけのことはありますね。早速早急に帰りましょう。」

 「おいっ!俺の事をほったらかしにするとはいい度胸だな!! って待てコラー!!!」

 相手に付き合う気など更々ないらしい。四本の腕でしっかりと抱き抱え、自分の家に真直ぐ帰る蛸に魚は怒りの声を上げ続けていた。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 この作品は別の投稿サイトに投稿していた作品を加筆修正したものになります。はじめましての方は、はじめまして。この文章どこかで…って思った方引き続きよろしくお願いいたします。

 では、異種間恋愛が三度の飯より大好き担々狸の作品今後ともどうぞごひいきに。

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