3/5
『思ひ出す』
有無も知らぬ心の在り処
窓辺で泣いて思ひ出す
灼ケ墜ツ星に蟲の声
大地に臥して思ひ出す
飛散る真紅に置文一筆
空椅子を眺へ思ひ出す
盲目片足どこまで枕
微睡み夢譚が思ひ出す
出遅れ急イテ迎える灰燼
訣れの挨拶ヲ思ひ出す
記したものを憶えていますか
既に私ではどうにも思ひ出せずにいる
記憶の記録を四六時中
白黒埃で思ひ出ず
響き回りて息すら遠く
向コウノ島すら思ひ出ず
詰る薫り綴じ込め折り紙
封切る鋏が思ひ出ず
届ケ此処だけ言伝くれて
紅ゐ如何して思ひ出ず
似ている今日に何処と問うか
去来していた昨日すら思ひ出ずして
傘ヲ持たず雨を凌げズ
何がイッタイ君を守らうと
己の名まえとスレチガイ
かわりに君の名を思ひ出す
伝えてオキタい想いがあった
君に呼バレタイ名マエがあった
思ひ出せたよ隠る影
思ひ出せたよ欠ケタ身ガ
鼓動の後ろに手を振れど
雨音描き消すは窓の行く末
思ひ出せずに思ひ出した
ああ
タリナイモノハなかったト
「過ぎし日の分岐路にまた訪れられたなら」
あー
また思い出す
思い出した
思い出しちまった。




