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12夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(4)

「そうですか、へえ~……、そうだったんですね。うん、良かった良かった……、って、いや、良くないか」


 彼の返事が、ホッとした声に聞こえたのは気のせいだろうか。


「今のは失礼でしたね、忘れてください。すみません」


 ぶつぶつ言っていた大倉は、前を見つめながらカナコに謝罪をする。


「あ、いえ、実際どうもならなくて、良かったんです。ですから気にしないでください」


「……なんで良かったんですか?」


「いろいろわかったから、ですね」


 戸惑った声の大倉に、カナコは正直に話を進めた。


「あの場にいた男性たちを見て、以前の私と同じだと気づいたんです。女性に求めるものが多い彼らと、元カレに対して求めすぎていた私が重なって……反省しました」


「……なるほど」


「数人の方と連絡先を交換しましたけど、誰からも音沙汰はありませんし、私からもしていません。でもそれで良かったんだなって。会うことになったとしても、そこから何も発展しそうにないのは明らかでしたから」


 カナコのソロピクニックに対して難色を示していた彼らだ。そのうちソロピクをやめろと言ってきても不思議ではない。


 もしもカナコが二十代の爆美女だったら、また違う反応だったかもしれないが、それだけで寄ってくる男もどうかと思うし、そもそも自分は爆美女ではない。というか爆美女はそんなところにわざわざ来ないだろう。


「でも、オフ会で知り合った女性の方と趣味の話で盛り上がって、今もやり取りしているんですよ。それだけで行った甲斐がありました。彼女はクロスフィットを趣味にしているそうです」


「クロスフィットですか。俺も興味あるんですよね~。効率的に鍛えられそうですし、メンタル爆上げできて楽しそうだから」


「私も、大倉さんが好きそうかもって思ってました」


 ロングトレイルをするくらいだから、体を使うクロスフィットも好きだろう。そう思っていたことが当たって、カナコは嬉しくなる。


「……もしかして、そこにいた男性たちは、ソロピクやクロスフィット……、そういう趣味に理解がなかった。だからその女性と渋谷さんで話が盛り上がった、とか?」


 大倉が訝しげな声で尋ねてくる。


「ええまぁ……、そういうことなんです。私のピクニックも、女子会みたいにそれぞれ持ち寄ってやっていると思われたようで、ソロでピクニックをしていると言ったとたんに引かれました」


「はぁ~~っ。そういう器の小ささが、彼女も出来ない、そんで結婚につながらない原因だって、わかんないんすかねぇ……。そういう活動的な趣味に、ついていけない自分がいけないってのに……」


 大きなため息をついた大倉が、呆れ声で言った。そして続ける。


「渋谷さん、気にしなくていいですからね。ソロピクニックは素晴らしいものです。……俺がその場にいたら論破してやったのに。そんで一時間は説教してやったのに……!」


 珍しく舌打ちした大倉に、カナコは思わず吹き出してしまった。


(やっぱりいいなぁ、大倉さん。彼に話して良かった。モヤモヤしていた気持ちがスッキリしちゃった)


 ふと、目的地のキャンプ場をもう一度確認しようと思い、バッグからスマホを取りだして気づく。


「あ……」


「どうしました?」


「今お話した、連絡先を交換した人、ふたりからメッセージが来ていました」


「会うんですか?」


「いえ、お断りします。ふたりともソロピクに難色を示していたので。ソロピクをやめてほしいなんて言われても、絶対にやめるつもりはありません。やっと見つけた私の楽しみですから」


 大倉は「ですよね」と大きくうなずいた。


「でもまさか、ふたりから誘われるなんて思いもしませんでした。私には全然興味なさそうだったのに」


「そのふたりの他にも、渋谷さんがいいっていう人、結構いたんじゃないですか?」


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