12夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(2)
その後、すぐに男性はカナコから離れ、別の女性と話し始めた。
最終的に、連絡先を交換したのは三人だけ。そのうちの一人は女性である。
彼女はカナコとまったく違う趣味を持っていたが、そこにいた男性たちとは話が弾まず、カナコと楽しく会話をして終わったらしい。
(その彼女は朝から10キロランニングしたあとにジムで鍛えるクロスフィットをしている……って楽しそうに話してくれたなぁ。カッコいい趣味だ)
しかしその場にいる男性たちには引かれてしまったようだ。カナコも彼女と同じく、何人かの男性に引かれた。
(だいたいさ、自分が興味ない趣味だからって、あからさまに避けることなくない? 私の場合は、向こうが思ってたのと違う『ソロ』ってのが良くなかったみたいだけどさ……)
帰り道を歩きながら、夏の夜空を見上げる。薄く流れる雲の間から、星が数個瞬いていた。
風は生ぬるく、今夜も熱帯夜となりそうだ。
(その点、大倉さんは違うのよね。自分の好きなことがアウトドアだから、私のことを応援してくれるのもある。でもそれだけじゃなくて、趣味とか好きなこと全般に対して偏見がないというか、器が大きいというか……)
オフ会に来ていた男性たちの中には、大倉と同じ歳くらいの男性も結構いた。
(だけど彼らは趣味一つ取っても、女性に求めるものが多すぎる感じがした。結婚相手を探すんだから当然かもしれないけど……)
そこまで思って気づく。
(ああ、そうかぁ……。私も元カレと付き合ってるときは、彼に期待しすぎて求めるものが多すぎたのかもしれないなぁ……)
カナコは道端で立ち止まり、大きく息を吐いた。そしてスマホを手にする。
ひらいたのは、昨日大倉と交わしたメッセージアプリだ。
ロングトレイル中の彼は、電波が入る場所でメッセージを送ってくれた。
(綺麗な写真……)
美しい自然の写真とともに、彼自身の状況も簡潔に知らせてくれる。カナコも彼に倣って簡潔な言葉で返信した。
(ほんの数行のやり取りだったのに、すごく嬉しかった)
カナコの師匠として、貴重な電源を使ってまで、わざわざ報告してくれる大倉の気持ちが。
(来週のバーベキュー……、早く大倉さんに会いたい)
バーベキューも楽しみだが、それよりもただ大倉の顔を見て、あの長い話を聞いて、たまにはにかむ彼の表情を見たかった。
(婚活においてソロピクニックが趣味というのは、今後も評価にはつながらないかもしれない。それでもいつか、私と気が合う人と出会える可能性はある)
カナコはコンビニで購入した、缶ビールが入った袋を掲げた。
(もし出会えなくたって、私はソロピクをやめない。やっと楽しいと思えるものが見つかったんだから……!)
今やめてしまったら絶対に後悔する。やめたら師匠に合わせる顔がない。
「……大倉さんに会えなくなるのはイヤだな。婚活が上手くいかないことよりも、つらいかも」
つぶやいたカナコは、この後ベランダでビールを飲むことに決め、足早にマンションへ向かった。




