12夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(1)
婚活オフ会の会場で、カナコは固まっていた。
なるべく人数が多いオフ会を探して申し込みをした通り、当日の会場は広く、五十人近くの男女で賑わっているのだが……。
(どうしよう。気持ちが全っ然、入らない……)
目の前で楽しげに話す人たちと一緒に、笑顔で相づちを打ってみたりするが、カナコは心ここにあらずの状態だ。
お盆休みに入ったカナコは、昨日まで実家に帰っていた。
そこで、同棲していた彼と別れたことを両親に話す。
同棲を知っていた両親はカナコを労りつつも、結構なショックを受けていた。
(三十路になったとたん恋人と別れたんだから、衝撃よね。私と同じように、娘の結婚を期待していたんだろうから……)
プレッシャーを感じつつも、のんびり過ごさせてもらったのはありがたく、両親の優しさが身に染みる帰省だった。
だから彼らを安心させてあげたいと、気合いを入れてオフ会に臨んだのだが……。
オフ会に集まっているのは、二十五歳から三十五歳の男女だ。
簡単な挨拶と自己紹介をしてから、フリーのドリンクや好きな食べ物を手に取り、おしゃべりが始まった。
ドリンクを取りに行った時や、席に着いた時に、何人かと会話をしたのだが……。
(大倉さん、今もロングトレイル中だって、昨日メッセージもらったけど、今日はお天気どうなんだろう? 向こうは雨じゃないといいけど……)
トレイル中の大倉から、電波が繋がった時だけ写真やメッセージが送られているのだが、彼のことが気になってオフ会に集中できない。
そしてもうひとつ、集中できない理由があった。
年齢や職業、年収など、どれも結婚相手としては魅力的な人ばかりなのだが、大倉の容姿がチラついて、彼らがどうしても……どうしても見劣りしてしまうのだった。
結婚するのに見た目は関係ないと思っていたのに、現実を前にすると、心と体が拒否をしているのがわかり、カナコは愕然としていた。
(というか、あんなイケメンと何度も会って、お出かけもして、しかも隣に住んでいるんだから、私の目が肥えていても仕方がないのよね。これは当然のことよ。だけど……)
ピンク色のアセロラドリンクをぐいっと飲み、左手で拳を握る。
「現実を見なくちゃ。そう、しっかりするのよ、カナコ」
「あの、さっき趣味の説明を聞いて、気になったんですが……よろしいですか?」
ひとりごとで気合いを入れていたカナコに、男性が話しかけてきた。
「えっ、あ、はい!」
気持ちを切り替えれば向こうから良縁がやってくる……という今朝の占いが、まさに今そうなるかもしれないと期待し、振り向いた。
「ピクニックが趣味の方ですよね?」
男性が優しそうな笑みをこちらに向けた。高そうなスーツを着た、ガタイの良い年上と思われる男性だ。
「はい。趣味で初めてから数ヶ月が経ちました」
(キタキタキター! 数ヶ月前に趣味を作ろうと決めた私、あなたの思いは間違いではなかったよおお!)
などと心の中で叫んでいる自分を抑えつつ、カナコはニッコリと笑って答える。
「やっぱりアレですか、女子会みたいな感じて、作ったごはんをみんなで持ち寄って……みたいな?」
「いえ、ひとりでやってます。ソロピクニックです」
「えっ」
「ソロキャンプのピクニック版という感じを想像していただければ、と思います」
「へ、へぇ~……そうですか……」
男性は自分のドリンクを飲み、うんうん、と何度もうなずいているので、カナコも質問してみる。
「何かアウトドアのご趣味とか、おありなんですか?」
「いえ、私は特に……」
ないんかーい、とカナコは心の中でツッコみながら、愛想笑いをした。




