表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/64

12夏だ、山だ、波乱のバーベキューだ(1)

 婚活オフ会の会場で、カナコは固まっていた。


 なるべく人数が多いオフ会を探して申し込みをした通り、当日の会場は広く、五十人近くの男女で賑わっているのだが……。


(どうしよう。気持ちが全っ然、入らない……)


 目の前で楽しげに話す人たちと一緒に、笑顔で相づちを打ってみたりするが、カナコは心ここにあらずの状態だ。


 お盆休みに入ったカナコは、昨日まで実家に帰っていた。

 そこで、同棲していた彼と別れたことを両親に話す。

 同棲を知っていた両親はカナコを労りつつも、結構なショックを受けていた。


(三十路になったとたん恋人と別れたんだから、衝撃よね。私と同じように、娘の結婚を期待していたんだろうから……)


 プレッシャーを感じつつも、のんびり過ごさせてもらったのはありがたく、両親の優しさが身に染みる帰省だった。


 だから彼らを安心させてあげたいと、気合いを入れてオフ会に臨んだのだが……。


 オフ会に集まっているのは、二十五歳から三十五歳の男女だ。


 簡単な挨拶と自己紹介をしてから、フリーのドリンクや好きな食べ物を手に取り、おしゃべりが始まった。


 ドリンクを取りに行った時や、席に着いた時に、何人かと会話をしたのだが……。


(大倉さん、今もロングトレイル中だって、昨日メッセージもらったけど、今日はお天気どうなんだろう? 向こうは雨じゃないといいけど……)


 トレイル中の大倉から、電波が繋がった時だけ写真やメッセージが送られているのだが、彼のことが気になってオフ会に集中できない。


 そしてもうひとつ、集中できない理由があった。

 年齢や職業、年収など、どれも結婚相手としては魅力的な人ばかりなのだが、大倉の容姿がチラついて、彼らがどうしても……どうしても見劣りしてしまうのだった。


 結婚するのに見た目は関係ないと思っていたのに、現実を前にすると、心と体が拒否をしているのがわかり、カナコは愕然としていた。


(というか、あんなイケメンと何度も会って、お出かけもして、しかも隣に住んでいるんだから、私の目が肥えていても仕方がないのよね。これは当然のことよ。だけど……)


 ピンク色のアセロラドリンクをぐいっと飲み、左手で拳を握る。


「現実を見なくちゃ。そう、しっかりするのよ、カナコ」


「あの、さっき趣味の説明を聞いて、気になったんですが……よろしいですか?」


 ひとりごとで気合いを入れていたカナコに、男性が話しかけてきた。


「えっ、あ、はい!」


 気持ちを切り替えれば向こうから良縁がやってくる……という今朝の占いが、まさに今そうなるかもしれないと期待し、振り向いた。


「ピクニックが趣味の方ですよね?」


 男性が優しそうな笑みをこちらに向けた。高そうなスーツを着た、ガタイの良い年上と思われる男性だ。


「はい。趣味で初めてから数ヶ月が経ちました」


(キタキタキター! 数ヶ月前に趣味を作ろうと決めた私、あなたの思いは間違いではなかったよおお!)


 などと心の中で叫んでいる自分を抑えつつ、カナコはニッコリと笑って答える。


「やっぱりアレですか、女子会みたいな感じて、作ったごはんをみんなで持ち寄って……みたいな?」


「いえ、ひとりでやってます。ソロピクニックです」


「えっ」


「ソロキャンプのピクニック版という感じを想像していただければ、と思います」


「へ、へぇ~……そうですか……」


 男性は自分のドリンクを飲み、うんうん、と何度もうなずいているので、カナコも質問してみる。


「何かアウトドアのご趣味とか、おありなんですか?」


「いえ、私は特に……」


 ないんかーい、とカナコは心の中でツッコみながら、愛想笑いをした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ