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11師匠にお礼を(6)

 しばらくしてこちらを向いた大倉が、あと一口になったサラダをフォークで弄びながら言った。


「渋谷さん、八月の下旬ってお忙しいですか?」


「いえ、今のところ予定は入れていませんが……」


「じゃあうちの会社の企画に参加しませんか? 雑誌に商品が載るんですけど、その撮影があって、バーベキューするんです。一緒に食べましょうよ」


「私、部外者なのにいいんでしょうか?」


「その点は大丈夫です。俺は直接その企画に関わっていないんですが、アウトドア系のインフルエンサーの一人ということで呼ばれまして。10人くらい俺みたいな人が来るんですよ」


「社員さんの他に、ですか?」


 カナコの問いに大倉は「ええ、そうです」とうなずいた。


「で、それぞれ知り合いも一人までならOKという条件が出ていまして。俺は渋谷さんを連れていきたいなーと……」


「アウトドア初心者どころか、ピクニック初心者の私でも大丈夫でしょうか?」


「そんなにかしこまらず、ワイワイやる雰囲気だと思うので、そこはお気になさらず。俺もいますし、大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。私、大人になってからバーベキューをしたことがないので、ぜひ行きたいです。ピクニックのヒントもいただけそうですし」


「行きましょう。約束ですよ?」


「えっと……はい、お願いします!」


 いつもの大倉にしては念の押し方が強いような気がして、少々戸惑いながらもカナコは返事をした。


「バーベキューに行けなくなっても、別の日に会いましょうね、渋谷さん」


「ええ、もちろん」


「……」


 カナコは笑って返事をしたのだが、大倉はじっとカナコを見つめたままだ。

 その視線に、なぜかカナコの心臓がドキンと音を立てる。


「な、なんですか?」


「いえ、別に……」


 大倉はふいっと横を向き、そのまま後方にあるテントに視線を移した。


(気を悪くさせたのかな? でも今の会話でそんな要素なかったと思うんだけど……)


 とにかく、ここまでピクニックについて協力してもらえたのだから、いずれは婚活で成果を出したい。

 そのためにも軽いジャブを打つつもりで、夏休みのオフ会参加を決めたのだ。


 テントを見つめている彼の背中に声を掛ける。


「あの、少し休んでからパンケーキ作ろうと思うんですけど、一緒に

食べませんか?」


「食います……!」


 勢いよく振り向いた大倉の顔を見てホッとする。怒っているわけではないようだ。


(お弁当だけじゃ足りないかもと思って材料を持ってきたんだけど、正解ね)


 ここを予約時にホットプレートがあることを知り、パンケーキならその場で作ってあげられると思ったのだ。


 お弁当を食べ終わると、大倉はすぐに立ち上がり、カナコに言った。


「俺、片付けておくんで、ゆっくりしててください」


「それじゃあ、お礼にならないですってば。大倉さんこそくつろいでいてください」


 カナコも立ち上がると、大倉が首を横に振る。


「前にも言いましたけど、俺が好きでやってることなんですから、そもそもお礼なんていいんですよ。でも、嬉しかったです。だから、片付けくらいはさせてください」


「じゃあお言葉に甘えて……、お願いします」


「洗い物は少ないですから、お気になさらず」


 笑顔でそう言った大倉に任せ、カナコはくつろぐことにした。


 室内にはハンモックや、アウトドアソファなどがあり、ゆっくりすることが出来るのだが……。


「やっぱりテントよね」


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