11師匠にお礼を(2)
そして頭をひねって考える。
得意なメニューの食材を買っていって、その場で作って食べてもらう……。
「ううん、違うのよ。いくら設備が整っているとはいえ、私がやりたいのはあくまでもピクニック。そう、ピクニックらしさを極めたいと思っているのだから……!」
思い直したカナコは、原点に帰ることにした。
「ということで、オシャピクを勉強してみよう……!」
自分には出来る気がしないと敬遠していた、オシャレピクニック。
せっかくなので、この機会に挑戦しようと思えた。
ひとりでピクニックをするのも気楽でいいが、誰かに食べてもらうとなったら力が入る。
以前、大倉と海が見える場所でピクニックをした時は、おつまみ程度の物を作っただけだから。
「よーし、やるぞぉ~」
俄然ヤル気が出て来たカナコは、師匠をもてなすための買い物リストを作り始めた。
約束の当日を迎えた朝。
「むちゃくちゃ晴れましたね」
「ほ、ほんとに……。なんかすみません……」
大倉の車の助手席で、カナコは身を縮ませて謝った。
いよいよ梅雨に入り、今日は大雨の予報だったのだが、珍しく予報は外れて青空が広がっているのだ。
「なんで謝るんですか。これ、絶好の機会ですよ」
運転する大倉が、カナコに言った。
「え、だって、梅雨だと思ったから室内にしたんですよ? なのに晴れちゃって……意味ないかなって」
「意味はあります。いや、意味なんてなくたっていいんですよ。楽しみにしてましたから、俺」
「それならいいんですけど……」
フロントガラスの向こうにある青空を見つめながら、張り切っていた自分が恥ずかしくなる。
「今日、髪の毛違いますね」
「え? ええ、少し切ったんですけど、暑いのでまとめてきました」
「いいですね、涼しそうで」
まさか気づくとは思わず、動揺するカナコに、大倉が淡々と褒めてくれる。そういえば、と思い、カナコも尋ねた。
「ありがとうございます。大倉さんも髪型少し変えました?」
「えっ、あ、はい、変えました……。変ですか?」
自分に振られた途端、今度は大倉が動揺している。
「変じゃないです、素敵です。大倉さんはイケメンだから何でも似合いますよ」
言ってからハッとした。
これは昭和な上司と一緒ではないだろうか。自分の言葉で大倉を不快にさせたくはない。
「ごめんなさい。今の発言ってセクハラですよね。気を付けます」
(大倉さんがいい人だからって、調子に乗っちゃダメ。年下を怖がらせるなんて最低なんだから)
なぜか大倉からの返答がない。
車内には、彼がリストに入れたお気に入りの音楽が流れている。
大倉の顔を見るのが怖くて縮こまっているカナコに、彼の言葉が届く。
「そんなこと言ったら、俺のほうがセクハラですよ。先に渋谷さんの髪型を褒めたんですから。俺こそすみませんでした……。でも、素直にいいなって思った気持ちを伝えただけですので」
「え……」
「渋谷さんの俺に対する言葉はいつも褒めすぎですけど、不快には思っていません。むしろとても嬉しいので、もっとください」
「も、もっと?」
「もっとですよ。もっともっともっと、です」
「……ぷっ」
大倉の言い方がおかしくて、思わず吹き出してしまった。
真面目な顔でそういうことを言うから、クスクスと笑い続けてしまう。




