10焼き肉とビールと涙(1)
「てことで、お肉でーす」
テンション高めの大倉が、パックから出したお肉をお皿に盛ってくれている。もう一つのお皿に、しめじ、椎茸、茄子、玉ねぎ、にんじん、キャベツが乗っていた。
「お肉、美味しそう~!!」
「食いましょう! 遠慮しないでくださいよ? これは実験なんですから」
「ありがとうございます、嬉しいな」
嬉しすぎて、ニコニコ顔になってしまう。
「写真だけ撮らせてくださいね。すぐ終わりますので」
大倉は、スマホに何かを取り付けながら言った。
「それ、何ですか?」
「これはスマホ用のカメラレンズです。面白そうなんで買ってみました。これも実験ですね」
スマホのレンズに被せるようにして、レンズを取り付けている。カナコは「へぇぇ~」と感心しながら彼の手元を見つめていた。
「結構、いかついんですね」
「コンパクトなレンズもあるんですが、俺は広角でズームできるレンズが欲しかったんで。こうして取り付けると、確かにいかついですね」
大倉は、焼き肉用の道具たちを素早く撮影したあと、カナコにガスライターを渡した。
「どうぞ、お願いします」
「は、はい。では……点火!」
固形燃料にガスライターを向けてカチッと押すと、即点火した。ブワッと火が出たので少々ひるむ。
「大成功です! リフターを使って鉄板を乗せましょう」
鉄板の端に穴が空いているので、そこにリフターを差し込んで持ち上げる。リフターはお好み焼きをカットするヘラに似ていた。
先ほど組み立てたポケットストーブの上に鉄板を置く。
その様子を撮影した大倉はスマホを置き、自分とカナコの鉄板に油をほんの少しだけ垂らした。
「いい感じですね。では焼きましょうか」
彼が手にした銀色の箸を、カナコは指さして尋ねる。
「そのお箸もアウトドア用ですか?」
「ええ。これ、真ん中で外せるんですよ」
カナコの質問に答えながら、箸をくるくる回して外した。
「コンパクトになるんですね」
「そうなんです。キャンプで肉を焼く時、割り箸だと短くて熱いし、火力によっては燃えるからダメじゃないですか。かといってトングはデカくて持ち運びに邪魔なんです。このチタン製の箸は軽いですし、燃えないし、長くてもこうして半分になるので収納の邪魔にならない。ということで、しょっちゅう使ってます」
では、と大倉は箸で肉を挟み、鉄板の上に乗せた。
カナコにも同じ箸が用意されていたので、それを使って焼き始める。
「あっ、換気ガッツリしてるんで、遠慮せず焼いてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
じゅわわ~っと肉が焼けるいい音が響いた。と同時に、美味しそうな香りがあたりに広がる。
「小さいけどしっかり焼けそうですね~!」
鉄板の上の肉を撮影しながら、大倉が嬉しそうな声を上げた。
鉄板は小さいが、もう一枚焼けそうな余裕はある。
「私、食べる前から、すごく楽しいんですが……!」
ワクワクが止まらず、心のままにカナコが言葉にすると、大倉も楽しそうにこちらへ満面の笑みを見せた。
「俺もめっちゃ楽しいです!」




