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9雨の日はおうちで(3)

 キッチンを通り、部屋に入って驚く。


「わっ、めちゃくちゃオシャレですね……!」


「えっ、そうですか? ありがとうございます」


 カナコの部屋側の壁にソファ、その正面にある窓のところにはテーブルとチェアがふたつある。

 窓には木製のブラインドがかかっていて、大きな観葉植物が置かれていた。


 ソファの脇にカメラやその機材がぎっしり詰まった棚、そしてスリムなフロアライトが周りを照らしている。


「私と同じ広さのお部屋には思えないし、カフェみたいに素敵です」


「褒めすぎですよ」


 どれもヴィンテージ感のある家具で、落ち着いた雰囲気が素敵だった。


「私、大倉さんの写真を見ても思ったんです。すごくセンスがいいですよね。お部屋にもそれが反映されてて――」


「ちょっ、ほ、本当にもう止めてください。恥ずかしいですよ、本気で……!」


 顔を覆った大倉が恥ずかしそうに横を向く。


 しかし興奮していたカナコは我慢ができず、もう一押ししてみることに。


「あの、恥ずかしいところを申し訳ないんですが、質問させてください。大倉さんはどこで寝ていらっしゃるんでしょうか?」


「えっ、ああ、これですね。ソファベッドなんです」


 壁際のソファを指さす。

 濃いグレーの布張りに、黒いスチール製と思われる足がカッコいい。


「ということは、お布団はクローゼットに……?」


「クローゼットに入っていますが、俺、布団じゃなくて寝袋で寝てるんですよ。ベッドの上に寝袋を広げて、そこに寝てます」


「ねっ、寝袋……ですか!?」


(それはキャンプで使う物では!? 寝袋を日常に使っている人がいるの!?)


 カナコはワクワクが止まらずに、彼のほうへ身を乗り出して尋ねる。


「……寝袋、見たそうですね」


「見たいです!」


「同僚にも見せたことないんですが、いいでしょう。俺は渋谷さんの師匠ですからね」


 ニヤッと笑った大倉がクローゼットを開ける。

 たちまち、想像もしていなかった空間が現われた。


「ここもすごい……! 綺麗……!」


 カナコは敬語も忘れて感動の言葉を述べた。


 ポールに並んでいる服は二十着もない。モノトーンとグレーだけの色味だ。

 その下に数段の引き出し、淡いグレーのガッチリしたボックスが数箱詰まれている。

 余計な物はなく、整然としていて美しいのだ。


 大倉はポールの上の棚にある、平べったく畳まれたそれを指さした。その横に、大きさの違うリュックが三つ並んでいる。


「これが部屋で寝るときに使う寝袋です。キャンプの時は季節や場所によって使う物を変えているので、他の寝袋は下のボックスにまとめて収納しています」


「普段使われている寝袋……。私が想像したのと全然違います」


 毎日使っているからだろう、袋には入っておらず、適当な大きさに畳んでおかれていた。こちらも淡いグレーのシンプルな色味だ。


「たぶん渋谷さんが想像していたのは、こういうのじゃないですか?」


 しゃがんだ大倉が、ボックスのフタを開けて、袋に入った寝袋をカナコに見せる。


「あっ、そうです。こういう袋に入った派手な色を想像していました」


 赤や真っ青な袋に入った寝袋を見て、カナコは答える。


「山で使う時は派手で明るい色は絶対です。遭難した場合や、クマなどから逃げている時に目立つ色なら、他の人から認識されやすいですから」


「なるほど……」


「ただ、危険が伴わない場所でのキャンプや、車中泊で使いたい場合は別です。こういうナチュラルな色味に人気が出て、うちのメーカーでも販売するようになったんですよ」


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