9雨の日はおうちで(1)
せっかく師匠ができたというのに、土日は二週連続で用事があり、ピクニックはお預けになってしまった。
「そして今日は雨、か。明日もお天気悪いみたいだし、そのまま梅雨に入っちゃいそう」
普段から雨の休日は好きなほうだった。
雨音を聞いていると落ち着くし、家の中でゆったり過ごすことに何ら罪悪感を持たないで済む……というのはおかしな考えだろうか。
「落ち着くのは本当だけど、罪悪感っていうのは変よね? あいつに洗脳されてたのかなぁ」
雨の日や休日は、元カレが面倒がって一緒に出かけてくれなかったので、そういう考え方に至ったのかもしれない。
「今は外に行きたくてたまらない……! なのに天候に左右されてしまうピクニック……!」
キッチンでティーパックの紅茶を淹れ、部屋に戻ったカナコはなんとなくスマホを手にした。
「アウトドア派の大倉さんは、こういう時どうしてるんだろう?」
SNSをひらいて彼のアカウントの画像を見る。スワイプしていくと、ある画像が目に留まり、思わず声を上げてしまった。
「ひえっ、土砂降りの中でキャンプしてるっ!?」
ショート動画もあったので見てみることに。
彼は車の横に屋根だけのテントを張り、その下に椅子やテーブル、いろいろな物を置いていた。そして準備を終えると、そこでコーヒーを淹れ始めたのだ。
他にも、雨どころか雪の中でキャンプしている画像まで見つけてしまった。
「上級者は違うわ……。私には絶対に真似できない。だけど……」
こんなにも夢中になれることがあるのは、羨ましいと思った。
だからこそ、あれこれカナコに教えてくれるわけで。
「こんなにも素晴らしい師匠がいるんだから、何でも聞いてみよう」
メッセージアプリをひらいて大倉に連絡を入れようとした、その時。
「えっ、大倉さん?」
彼から同じタイミングでメッセージが届いたので驚いた。慌てて確認すると……。
『お久しぶりです。その後、ピクニックは順調でしょうか? 師匠として何かあればと思い、メッセージしました』
仕事のやり取りのような文面を見て、カナコは頬を緩ませる。
「いい人だな。気に掛けてくれていたのね」
カナコは呟きながら返信を打った。
「こんにちは。お久しぶりです。ちょうど今、大倉さんに伺いたいことがあってアプリをひらいたところでした、と」
すぐに既読がつく。
『どうしました? 俺で良ければなんでも答えますので』
「ありがとうございます。ピクニック勢は雨の日にどういう活動をすればいいのかと思いまして、と」
その後、すぐに既読はついたのだが、なかなか返信が来なかった。
「変なこと聞いちゃったかな? それともまた、たくさんの道具について教えてくれようとしてるとか? あっ、来た! え……ええっ?」
大倉からの返信は「これから俺の部屋に来ませんか?」だった。




