7食後の、のんびりタイム(3)
淹れ立てだからだろうか。ボトルに顔を近づけると、アイスコーヒーなのに香りが落ちていない。
口に入れるとさらに香りが広がり、すっきりとしたコーヒーの味で満たされる。
「お、美味しい~!! こんなに美味しいアイスコーヒー、初めて飲んだかも……!」
「本当ですか? 良かった~!」
カナコに釣られるようにして、大倉も嬉しそうに笑う。
「それでですね、コーヒーを漉すのに使った、上半分の部分を元通りにセットして、キャップをつければ……」
フィルターを入れていた上半分のボトル部分をひっくり返して、下半分と合体させる。最初に見せてくれたボトルの姿と同じだ。
「ペットボトルみたいになりましたね!」
「そう、持ち歩きが出来るんですよ。飲みかけでも気にしなくていいんです。軽いですし、女性でも持ち歩くのに便利だと思います」
「なるほど、便利なものがあるんですねぇ」
「他にも優秀なポータブルコーヒーメーカーはいろいろありますが、今日はこのへんで。ええと……ガムシロとミルク、バニラアイスもあるんですが……」
「えっ! バニラアイス!?」
「乗っけちゃいます?」
いたずらっ子のように、大倉がニヤリと笑った。
またもカナコの心臓がドキッと音を立てて、甘酸っぱくすぼむ。
「の、乗っけちゃいます……」
こちらの気も知らないで、大倉は「了解っす」と言いながら、氷が入っていたクーラーボックスを開けている。
(どこが無愛想なの!? 大倉さんの会社の人たちはよっぽどイケメンになれてるのね、羨ましいことこのうえないわ……)
カナコはドキドキしてしまった胸を押さえながら、小さく息を吐く。
そして大倉にアイスを入れてもらったボトルを受取り、それぞれチェアに座った。
気温が上がって汗ばむくらいの陽気になったが、作りたてのコーヒーフロートが喉を潤し、体を冷やしてくれる。
海風は心地よいし、空には白い雲が浮かんでのんびり流されているし、椅子は座り心地がいいし、何より……大倉が作ってくれたアイスコーヒーが美味しい。
「こういう幸せって、あるんですね」
「幸せですか?」
「はい。今、最高に幸せです」
始まったばかりのピクニックだが、たった数回で、この気持ちよさにハマってしまった。
大倉に教えられて、まだまだ楽しいことがあるのだと知り、ワクワクが止まらない。
「そう言っていただけて良かったです。俺も最高です」
どちらからともなく微笑み合い、ボトルを持った手を上げて乾杯をする。
アイスはあっという間に溶けて、カフェオレのようになったコーヒーはほんのり甘かった。




