7食後の、のんびりタイム(1)
「それ、なんですか?」
「食後にくつろぐのに最適なものです」
細長い袋に入ったふたつの物の中身を出して、自分とカナコの前に置いた。
「これ、色違いの同じ物なので、渋谷さんも一緒に組み立ててもらえますか?」
「もちろん、やります。でもこれって……?」
「できてからのお楽しみです。途中で気づかれると思いますが、とりあえずやってみましょう」
「はい」
カナコはワクワクしながら、彼と一緒に束ねられたポールを手にした。
「このポールを広げてください。そして、こうやって、こうですね」
「こう、ですか? あっ、なんかどんどん出来ちゃう!」
たいした力がなくても、いつの間にかピールが組み合わさって枠組みが出来上がった。
「当ててみていいですか?」
「どうぞ~。バレバレっすよね」
カナコの問いに大倉が楽しそうに笑った。
「椅子、ですよね?」
「正解っ!」
「やったぁ!」
カナコも笑うと、大倉が右の手のひらを向けてきた。これはハイタッチでいいのだろうか?
カナコは勢いよく彼の手のひらに自分の手のひらをあて、パチンとハイタッチした。
これだけのことなのに、嬉しくてたまらなくなる。
「ここからシートを被せるんですが、女性だと少し力がいると思いますので、コツを教えますね」
「はい、お願いします!」
畳んであったシートを広げる大倉に、それを手渡される。すでにシートの形になっているので、枠組みされた椅子に引っかけるだけだ。
「よい、しょっと。結構、力がいりますね」
カナコは組み立てたポールの四隅にシートを被せた。三つまでは難なく出来たのだが、最後の四つ目は力を入れてシートを引っ張ってもポールにかかりにくい。
「慣れれば簡単だと思います。難しかったら俺がやりますので言ってください」
「頑張ります。きっとコツがいるんですよね。う~~っ、えいっ!」
さっきよりも力を入れてシートをググーッと引っ張る。すると、固定していたポールにスポッと入った。
「ハマった~! すごい! 椅子ができちゃった!」
しっかり背もたれもある、立派なチェアだ。
「お~、完璧ですね」
心配そうにこちらを見ていた大倉だが、出来上がりを見てうなずいた。
ピクニックシートを挟んで両側にそれぞれチェアを置く。そして早速座ってみた。
「ええと、これでいいんでしょうか?」
恐る恐る腰を下ろし、シートの上に座る。ポリエステルのシートがお尻をふんわり包んでくれた。
「ええ、それで大丈夫です。前を見てください」
「あ……!」
たったこれだけで……、ついさっきまで見ていた景色が変わった。
座面の高さは30センチほどだろうか。
たったそれだけなのに、目の前に広がる芝生と海が、さっきよりもよく見える気がする。
「椅子に座るだけで、ずいぶん景色が違って見えますね」
「そうなんですよ、気づいてくださって嬉しいです」
大倉が何度もうなずいて、カナコに賛同する。
「それに、足がラクです。いつまでものんびりできそう……わわっ!」
空を仰ごうとしたら、後ろに傾きすぎてひっくり返りそうになった。
「大丈夫ですか!?」
「は、はい……セーフでした」
「はははっ! すごいバランス感覚でしたよ、よくあの体勢から戻れましたね!」
「そ、そうですね……ふふっ、あははっ!」
カナコは大倉と一緒に空を見上げて笑った。
空も海も青く、のどかな雰囲気だ。遠くでボーッという船の汽笛が鳴っている。大型客船がゆっくりと港に到着するのが見えた。
「最高ですね!」
カナコが言うと、大倉が答える。
「もっと最高になりますよ。しばしお待ちください」




