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6海を見ながらピクニック!(5)

「すみません……、マジで食べたくて。ヤバいっすよね、ははっ」


「ヤバくないですよ。真剣な顔してたから、ちょっと笑っちゃった、ふふっ」


 ふたりで笑い合うと、元カレを思い出した悲しい気持ちは、青空に溶けてなくなってしまった。



 カップラーメンも、野菜スティックもマリネも唐揚げも、美味しく食べ終わったところで、大倉がスープジャーや水筒を並べた。


「では、体験していただいたことを踏まえて解説を始めます」


「は、はい。よろしくお願いします」


 カナコは背筋を伸ばして彼に向き合う。


「渋谷さんは、熱々のスープやラーメンを食べて感動されたと思います」


「ええ、そうですね」


「その感動されたスープジャーと水筒はこれとこれです。熱湯を入れてもフタが開きにくくなることはなく、温度も多少は下がりますがほぼ保たれます。渋谷さんが作ったという鴨葱そばのつゆも、これなら美味しく食べられるかと。……ですが」


 彼はコーンスープが入っていたジャーを、カナコの前に置いた。


「持ってみてください」


「あ、はい」


 黒い持ち手が付いたシルバーのジャーだ。見た目はおしゃれで可愛いのだが、手にしてみると意外なずっしりさに呻いてしまう。


「うっ、お、重い……っ!」


「もう中身が入っていないんですけど、その重さです」


「見た目よりずっと重くて驚きました……」


「こっちもどうぞ」


 今度はカーキ色の水筒を差し出される。ラーメン用のお湯が入っていたものだ。


「こっちは……さらに重いんですね」


「そうなんです。最初に渡したのは弊社で作っているスープジャー。こちらは海外のアウトドアメーカーのもので人気の商品ですが、どちらも重いです。仕組みを説明すると納得いただけるかと」


 大倉はそこから真剣な顔で品物の説明をしてくれた。……十五分くらいかけて。


「――で、何かご質問はありますか?」


「いえ、詳しい説明をありがとうございました。実際にスープを飲んだり、ラーメンを食べて実感できましたし、こんなに重たいものをたくさん持ってきてくださって、申し訳ないというか……、本当にありがたいです」


「いえ、俺が好きでやっているので、そこは気にせず」


 大倉はいつの間にか、スンッという表情に戻っている。と思ったら、彼の表情が柔らかくなった。


「俺の結論としては、渋谷さんがお持ちのスープジャーで十分かと」


「そ、そうなんですか!?」


 ここまでしたのに、オススメ商品を否定するのはあまりにも意外で、カナコは声を上げてしまった。


「何に重きを置いているかですね。絶対に熱々の汁物を食べたいなら、こちらを持って行くのがオススメですが、荷物が重いと行動力は落ちます」


「確かに……」


「俺は慣れていますし男なので、ある程度の重さは持ち歩けます。渋谷さんが車で出かけるなら、園内を歩くときだけなので可能だと思います」


「う~ん……、そこまでは考えられないかも、です。免許はありますが車は持っていないですし……」


 気軽に始めたいピクニックに、わざわざ車をレンタルして、とは考えられなかった。


「過程が増えていくと楽しくなくなっちゃいますからね。それでも食べたい! となった時に買えばいいです。そういう時は重さは関係なく、持ちたいという気持ちが勝るので」


「そうですよね。ありがとうございます。いろいろ聞くことができて参考になりました。大倉さんの言う通り、どうしても食べるんだ! ってなった時に買いますね」


 カナコが笑むと、大倉も同じように笑ってうなずいた。


 妙にすっきりした気持ちだ。彼が物を押しつけてこなかったのもあるが、カナコの気持ちを汲んでくれたことが嬉しかった。


「では、次に……」


 大倉はまたも大きなリュックをゴソゴソし始める。


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