6海を見ながらピクニック!(4)
「そんなに喜んでもらえるなんて思ってなかったから、すごく嬉しいです。大倉さんのカット野菜も美味しいです」
ディップ用のマヨネーズにレモンの味が付いていて、爽やかで美味しいのだ。
「俺のは切っただけなんで……あっ、夢中になって忘れるところだった。もう時間だ」
大倉は腕につけていたスマートウォッチをタップし、タイマーを止めた。
「どうぞ、召し上がってください」
「ありがとうございます。いただきます」
カップラーメンのフタを開ける。湯気とともに独特の香りが鼻をくすぐった時、気づいた。
「これ、家で作るみたいに湯気がしっかり上がっていますね。……いただきます」
割り箸で麺を持ち上げ、ふーふーと息をかける。そして、スープの香りと一緒にズズッと啜った。
「おっ、美味しい~!! 熱々です!!」
ズゾゾッと麺を啜ってモグモグした後は、スープを冷ましながら飲む。
青空の下で食べるカップラーメンは、なんと贅沢な代物なのだろう……。
「ああ……、この何とも言えない香りと、もちもちした麺の歯ごたえ……。スープも……、定番の醤油味はいつでも懐かしさを連れてきては、私の心まで温めてくれ――」
大倉の視線を感じたカナコは、即座に(いかんっ!!)とそこで言葉を止めた。
「すっ、すみませんっ!! 私、ご飯で感動すると止まらなくなっちゃうんです……。キモいですよね、ごめんなさい」
美味しいラーメンとシチュエーションに気が緩んで、いつものアレが出てしまった。大倉には以前にも聞かれているというのに……!
俯くカナコに大倉の声が届く。
「前にも言ったじゃないですか。俺はそれ、めっちゃいいと思いますよ。俺も好きなことになると勝手に話し出すし、そういうもんじゃないですか? それだけいいと思っていることがあるって、いいですよ。なんか言い方おかしいですけど、俺はそう思います」
大倉は、残っていた野菜スティックをかじった。
「あ、ありがとうございます。確かに、大倉さんは前にもそう言ってくれましたよね……」
思わず涙が浮かびそうになってしまったカナコは、トートバッグからもうひとつ、タッパーを掴んだ。
「良かったら、唐揚げも作ったんですけど食べますか?」
「ええっ!? かっ、唐揚げ!? 手作りのっ!? すげえーっ!!」
すごい勢いで大倉がカナコの手元まで体を寄せる。マリネの時よりも目が輝いていた。
「……っ」
元カレの反応と真逆なことに、カナコは動揺する。
いや、元カレも付き合った当初はこうだったのだろうか。思い出せないということは、最初から反応は薄かったのかもしれないが……。
「あっ、その前にこっちのカレー味も食ってください。しょうゆ味とは温度が絶対に違うので」
「そうでしたね。いただきます」
温度の違いを比べるのに、時間差があってはいけないのだ。
カナコは唐揚げのタッパーを脇に置いて、大倉からカレー味のカップラーメンを受け取った。
フタを開けるとカレーのスパイシーな香りが広がる。しかし、湯気はそれほど上がっていない。
「んっ、美味し~! じゃなくて、温度ですよね。さっきのより、確かに熱くはないです」
ズズーッと啜った麺を味わってから、スープも飲んでみた感想だ。
うなずいた大倉は、カナコの前に置いてある先ほどのカップラーメンを指さした。
「もう一度、醤油のほうも食べて確かめてください」
「はい」
指示された通りに食べたカナコは、思わず目を見ひらく。
「最初に食べたほうが熱い!? カレー味より先にフタを開けているのに冷めてない!!」
「違い、わかりました?」
「こんなに違うとは思わなかったです。本当に、全然違う……」
大倉が満足げに笑みを浮かべる。そしてすぐに神妙な顔つきに変わった。
「それでですね……」
「はい」
「あの、唐揚げを食べたいんですが、よろしいでしょうか?」
今度はタッパーを指さしている。
「ぷっ、いっ、いいですよ……」
大倉の言い方がおかしくて、カナコは思わず吹き出してしまった。




