6海を見ながらピクニック!(1)
次の日曜日。
カナコは大倉に誘われて横浜のみなとみらいに来た。駅周辺は人が多すぎるという理由で、少し離れた場所で待ち合わせをしていた。
「お待たせしました、すみません……!」
カナコは先に到着していた大倉に駆け寄り、挨拶をする。
マンションから一緒に出かけようとは言われなくて良かったと、ふと思う。
ここに来るまで一時間以上かかったのだから、その間、ほぼ初対面で話をもたせるにはハードルが高すぎるからだ。
「いえ、俺も今来たところですのでお気になさらず。では行きましょうか」
「はい。あの、私も荷物持ちますね」
大倉の足元に大きなリュックと、クーラーボックスが置いてある。今日のために用意してくれたのだろう。
「ああ、全然大丈夫ですよ。慣れてますから」
「すみません。……じゃあ今日は、どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそお願いします」
頭を下げ合って、出発した。
こっちです、と言う大倉についていく。
(なんか、先日会った時とちょっと印象が違うというか……)
無言で歩く大倉の横でカナコは不安になった。
スラリとした体型の大倉は、160センチのカナコから見て20センチ以上は高く見える。
(これはモテるわね。というか、絶対に彼女がいるわよね? それなのに休日を使わせてしまった……!)
熱々のおつゆを食べたいという欲望に駆られて、大倉の身の上などまるで考えていなかったのである。
反省しつつ、話しかけてみることにした。
「あの、お天気が良くてよかったですね。そろそろ梅雨に入るから、心配だったんですけど」
「え? ああ、本当ですね」
大倉が空を見上げて言った。
しかし会話はそこで終了。また無言で歩く時間が始まる。
(もしかして機嫌悪い? やっぱり貴重な休日を使わされて怒ってるとか? いや、でも大倉さんのほうから誘ってきたんだから、私に怒る理由はイミフよね……)
歩いていると、すぐに海が見えた。日に当たってキラキラと輝いている。
高層ビルや大きなホテルが建ち並び、遊園地やモノレールがある都会的な観光地に海が広がっているのは、不思議な感覚だった。
こんなに魅力的な場所ならば、ここまで人が多いのもうなずける。
「ああーっ!!」
突然、隣で大倉が叫んだ。
「はっ、はい!? どうしました?」
慌てて大倉を見ると、彼は立ち止まってカナコから目を逸らした。
「……すいません、俺」
「どうしたんですか? もしかして忘れ物とか?」
「いや、準備は万端です。そうじゃなくて、俺……、普段からこうなんで、気にしないでください」
大倉が申し訳なさそうな顔をして、チラとこちらを見た。
大抵の女子はそんな顔をされたら落ちてしまうのではないだろうか、という表情である。
「えっと、ごめんなさい。私の理解力がなくて、なぜ大倉さんが謝っているのかわからないんですが……」
大倉に向き合って尋ねた。
広々とした歩道の端にいるカナコたちの横を、たくさんの人々が通り過ぎていく。
「……俺って無愛想らしいんです。しかも自覚がないという」
「え?」
「会社でも先輩に注意されています。で、今日みたいに緊張してると、そこに拍車がかかってしまうようで……今も、そうですよね?」
視線を合わせた大倉は、どうしていいかわからないという不安げな顔をしていた。大型犬のようだと思ったら失礼だろうか。
「大倉さん、緊張してるんですか?」
「緊張してますよ。女性を連れて出かけるんですから。ほとんど話したこともないわけですし……」
「大丈夫。私もすごく緊張していましたから」
「そうなんですか?」
「そうですよ。でも今、大倉さんが自分のことを話してくれたから、だいぶ緊張が解けました」




