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5初夏の鴨葱そば(1)

 そして日曜日。

 カナコは最初にピクニックへ訪れた、大きな公園に来ていた。


 ひとりピクニックという行動に慣れてきたはずのに、なぜまた同じ場所へ来たのかというと……。


(冒険してみたかったから、なるべく人と被らなさそうな場所……と考えたら、結局ここが良かったのよね)


 以前来た時から、ちょうど一ヶ月が経つ。


 先週はお天気が悪かったので家で過ごし、買ったばかりの素敵なお皿に春の料理を盛り付け、楽しんでいた。


 その時、今日のお弁当を思いついたのだ。


「一ヶ月も経つと、だいぶ緑の様子が違ってくるのね」


 仕事の行き帰りに、街角で季節を感じることはある。

 だが、自然が多い中で短期間に見比べることなどなかったカナコには、公園の様相が新鮮だった。


 若葉色に染まっていた木々の葉は、すっかり青々としたものに変わり、勢いを増している。


「緑の香りも濃くなってるみたい」


 カナコは公園内にある森の空気を吸いながら、以前の場所へ向かった。



「――まさか大倉さん、いないわよね?」


 大きな木のそばに到着したカナコは、前に大倉がいた木の裏側を確認する。

 いるわけがないのだが、念には念を、だ。


「よし、いない。そして彼の他にも誰もいない。これなら心置きなく食べられるわね」


 公園内をのんびり散歩した後なので、お腹がペコペコだ。

 ランチ時を過ぎていることもあって、この前よりもお弁当を広げている人が少ないのもいい。


 新しく購入したピクニックシートを敷き、その上に座った。


「この気持ちよさを知っちゃうと、やめられなくなる~」


 靴を脱いでシートの上に足を投げ出す開放感は、たまらなく気持ちが良いものだ。


「よしよし、では始めよう」


 カナコはひとりニヤつきながら、トートバッグからお弁当を入れたランチバッグを取り出した。中が保冷仕様になっているバッグには保冷剤とタッパーが入っている。


「あとはスープジャーと、お茶も出して……」


 カナコはいそいそと準備を始めた。


 薄い紙製のトレイ。一見木製に見えるそれはとても軽く、荷物にならないのが嬉しい。その上にお椀とお箸、大小のタッパーを並べた。


 カナコはお椀にスープジャーを傾け、つゆで満たす。

 小さいタッパーに入っている、4~5センチにカットして焼いたネギと、お惣菜売り場で購入した鴨ローストの切り身を、お椀の中に入れた。

 大きなタッパーのふたを開ければ、家で茹でた蕎麦が綺麗にまとめられている。


「ジャジャーン! 鴨葱そばっ! それもつけそば! 最高~!」


 ピクニック三回目にして、突然「蕎麦」を選んだ理由。それは……。


「ただ単に食べたかったからである……!」


 んふふと笑ったカナコは、目の前に準備した鴨葱そばを、スマホで撮影し始めた。


 初回ピクニックから一ヶ月が経った五月中旬の今は、とにかく気候が良い。

 晴れの日が続き、気温が高くなっても湿度は低く、外に出ずにはいられない気持ちよさだ。


 そんな時期になると、必ずカナコは蕎麦が食べたくなる。


 冷たい水で締めた蕎麦を、熱々のめんつゆにつけて啜るのだ。

 真夏では冷たいめんつゆを好むが、今くらいの時期は熱いつゆが好きだった。


「お出汁のいい香り。今回は気合いを入れて自分で出汁をとっちゃったもんね~。ああ、この鼻を抜けていく、かつおと昆布のかぐわしいハーモニー……。しょうゆとみりんに溶けていく風味を蕎麦に絡ませて、思いっきり吸い込みたいっ!」


※今年の更新はここまでです。次話は1/4(日)12時の更新になります。お読みくださってありがとうございました。みなさま、良いお年をお迎えくださいね♪

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