4おにぎりとウィンナーとブロッコリーと卵焼き(6)
でもまぁ、とカナコはそこでスマホを弄る手を止めた。
「私は気楽にピクニックするからいいや。それならSNSを見ればたくさん情報も出てくるし。大倉さんに連絡することはなさそうだわ」
名刺を棚の上に置く。
彼をわざわざ呼び出したり、SNSでつながろうという気もない。
(住む場所も隣なのに、これ以上プライバシーを晒すなんて有り得ないでしょ)
ないない、と手を横に振りながら、カナコはお湯を貯めにお風呂場へ向かった。
翌日。
カナコは仕事帰りに、大きな駅ビルの中のとある店に立ち寄った。せっかくなので、ピクニック用のお弁当箱を新調しようと思ったのだ。
キッチン用品や雑貨類が置いてあるお気に入りの店に入る。
メインで飾られていたのは、初夏にぴったりの青や緑の色がふんだんに使われた焼き物だ。
(かわいい…! このお皿にサラダを盛り付けたら美味しそう)
むくむくと創作意欲が湧いてくる。
(レタスとバジルの葉にレモンの輪切りを散らして、そこにクルトンも載せたい。このお皿、いくらだろう?)
よく見ると、お皿の前にちいさーな値札が添えられていた。
一万二千円(税抜き)
(お、おおー……、そりゃ素敵よね。作家さんが丹精込めて作ったものだもの。後ろ髪引かれるけど今日は諦めよう。今度ご縁があったら、で……)
そう思っていたのに、数分後、カナコはレジに並んでいた。……お皿を手にして。
「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」
「いえ、自宅用でお願いします」
(私はお弁当箱を買いに来たのよ〜〜……! でも、でも、作家さんのお皿は一期一会だから! 悔いはなし!!)
「素敵なお皿ですよね。こちらの作家さんの工房が小冊子に載っていますので、そちらも入れておきますね」
スタッフの女性が笑顔で話しかけてくれた。
「わぁ、ありがとうございます!」
「山梨県に工房があるんてすよ。うちのスタッフもお邪魔したことがあって、とても素敵なところのようです。今度私も行ってみようかと思って」
「そうなんですね。私もチェックしてみます……!」
女性と目を合わせて、ふふっと微笑み合った。
「ありがとうございました。この作家さんの作品はあと二週間、先ほどのコーナーに置いていますので、よろしければぜひまたいらしてください」
「そうなんですね。ありがとうございます」
店を出たカナコは大切に袋を持ち、ほくほくした気持ちで歩き出した。
(素敵なお皿に出会わせてくれたのもピクニックのおかげよね)
元カレを思い出して落ち込むこともあるが、沈んだ気持ちは継続しなくなった。
次のお弁当は何にしようかと考えるだけで、ワクワクが勝るから。
「次は……そうね、冒険しちゃおっかな!」




