表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

調査報告書 第七号

作者: あお〜い
掲載日:2025/12/19

私はこの家を七回訪れている。

報告書にはそう書いてある。

だが、私の記憶では――初めてだ。


古い平屋。

玄関の引き戸は軽く、音もなく開いた。

中は静まり返っている。


「失礼します」


返事はない。


死亡者は一名。

この家の元住人。

死因は不明。外傷なし。


「部屋に異常なし、か……」


私は畳の部屋に入る。

六畳。

窓、仏壇、押し入れ。


そして、誰もいないはずの部屋なのに、

なぜか視線を感じた。


奇妙なのは、資料だった。

写真には、部屋の中央に

人が写っている。


ぼやけていて顔は分からない。

だが、立ってこちらを見ている。


「この写真、誰が撮った?」


同行していた役場の男は答えない。

いや、最初から

同行者などいなかった。


背中に、冷たい汗が流れる。


私は報告書を読み返す。

調査員は一人で入室した

会話記録なし

異常行動あり

――異常行動?

ページをめくる。


調査員は途中から

「自分が調査されている」と発言

喉が鳴った。

「……誰に?」


答えは、

もう書いてあった。


部屋の隅。

仏壇の前に、古い鏡がある。

そこに映っていたのは、

疲れ切った私の顔。


だが、鏡の中の私は

微笑んでいなかった。


怯えた目で、

こちらを見ていた。


この家で死んだのは、

私だった。

私は調査員ではない。

この家の住人だった。


記録を作り、

調査という形を与え、

「理解できる出来事」にしないと

自分の死を受け入れられなかった。


だから私は

何度もこの家を訪れ、

何度も「調査」をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ