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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第5話 俺とお前のオムライス 5 ―二人を睨むアイツ―

 5


 次の日の正義のクラスではクラスメート達がザワザワと騒がしかった。理由は単純だ。正義が転校生の青木と仲良くなっていたからだ。

『山下でも言い合いをしてたんだぜ! 急過ぎて謎だよな!』と隆たちが喋ったものだから、二人の急接近はクラスメート達からすれば謎深く、正義と勇気の二人は好奇の目で見られてしまっていた。


 けれども、当人達はその事に気付いていないから気にしない。

 そしてまた、二時間目と三時間目の間の小休憩がやってきた――正義は教科書も仕舞わずに勇気の席へと走っていく。


「なぁ勇気! 俺さ、良い事思い付いたんだ!」


 正義は礼儀知らずの男だ。友達になって二日目にして既に呼び捨てを始めていた。


「良い事?」


「うん!」


「それは何?」


 勇気は利口な子だ。正義とは違い、キチンと教科書とノートを整えて机の中へと仕舞っている。


「へへっ! 昨日のお礼だよ!」


「昨日のお礼?」


「うん! 昨日、駄菓子いっぱいくれたろ? そのお礼!」


「お礼も何も、アレはキミへのお詫びの品にしたつもりだよ。お礼なんていらないよ」


 勇気は微笑みながらそう言うが、正義は納得しない顔をした。


「えぇ~~そう言うなよ! 勇気にどうやってお礼をしようか一時間目も二時間目もずっと考えてたんだぞ!」


 この返答に勇気は「そんな事を考えてないで勉強をしなよ!」と言いながら声を出して笑った。


「勉強は……良いの! それよりも良い事思い付いたんだって!」


「そうなの? 何かな、それは?」


『そんな事を考えてないで――』と勇気は言ったが、顔からは笑顔は消えない。『お礼なんていらないよ』と言いながらも、正義が言う"良い事"に遊びの誘いを感じて内心は嬉しいのだ。


「へへっ! それは内緒だ!」


「え? 何それ?」


「へへっ、良いの! それより、今日学校終わったら俺ん()に来いよ! 待ち合わせは山下の前でな!」


「うん、分かったよ!」


 二人は笑い合い、正義は自分の席へと戻っていく。


「騒がしいなぁ正義くんは!」


 でも、そんな二人を苦々しい顔で睨む奴がいた。


「何笑ってんだよ、楽しそうにしやがって……」


 それは山田力也、クラスで一番の巨漢で乱暴者の男。山田は教室の隅で腕を組みながら、小休憩が終わるまで勇気を睨み続けた。


 ―――――


 放課後、勇気はウキウキした気分で帰り道を急いだ。勇気の通学路の途中には小さな川があり、横幅三メートル程の短い橋がかかっている場所があるが、勇気はその橋を渡りながら空を見上げて口笛を吹いていた……のだが、


「おい青木。お前、今日は楽しそうだったなぁ……」


 短い橋の真ん中辺りへ来た時に、背後から声が聞こえた。

 それは勇気のウキウキ気分を失わせてしまう声だった。


「はぁ……またキミか」


 声の主が誰なのか勇気は振り返らずも分かった。無視してやり過ごしても良かったが、嫌みを言ってやりたくなり、勇気は振り返った。


「わざわざ俺を追い掛けてきたのか? キミは暇人だな」


「うるせぇなぁ、気取った喋り方してよ」


「だって事実じゃないか。キミの帰り道は別の筈だろ? 山田くん……」


 勇気を追い掛けてきた人物は乱暴者の山田だ。

 勇気が振り返ると、山田は橋の欄干に寄り掛かって腕を組んでいた。目付きは鋭い、勇気を睨んでいる。


「うるせぇんだよ……んな事、どうでも良いだろ。それよりもお前、赤井と仲良くなったらしいなぁ」


「だとしたら何? キミには関係ないだろ? 他人の事ばかり気にして、キミは本当に暇人だ……」


「なんだとコラァ!!」


「何だよ……やめてくれって」


 突進する様に近付いてきた山田に勇気は胸倉を掴まれた。


「その手を放してくれないか。俺はキミとは話したくはない。俺が嫌いなら関わらなきゃ良いだろ。サッサと消えてくれ、目障りだ」


 山田と勇気の身長差は山田が少し高いくらいで殆ど無い、胸倉を掴まれた勇気は山田と顔を突き合わせる形になるも、それでも勇気は冷静だった、ゆっくりと山田の手を掴み、胸倉から離そうとする……が、山田はそんな勇気を鼻で笑う。


「嫌い、違うなぁ。俺はお前を嫌いじゃない、ムカつくんだよ……」


「何だよそれは、同じ意味じゃないか。放してくれって」


「それじゃあ、放す代わりに赤井をボコろうかなぁ?」


「何だと……」


「おぉっ、怒った! へぇ……やっぱり刑事の子供は勇敢なんだなぁ。でも、そんな怖い顔、刑事の子供がするもんじゃねぇよ――」


 冷静だった勇気の顔に僅かな怒りが走ると山田は声を出して笑った。しかし、笑いながらも瞳の中はどす黒い。怒りなのか、憎しみなのかが宿っている。


「新聞の見出しで見たぜ、お前の父親は英雄なんだってなぁ? 英雄の息子がそんな顔しちゃいけねぇよ!!」


 唾がかかる程の大声で山田は怒鳴った。


「やめろ……それ以上言うな……」


 勇気の顔からは冷静さが消えていく。顔は完全に怒りに染まり、山田を睨み、眉間には皺が寄る。

 次に山田が言う言葉を勇気は聞かなくても分かっていた。何故勇気は分かるのか、それは転校してきたその日から、同じ罵倒を浴びせ続けられていたからだ。

 

「あっ……そうだった、違ったなぁ! 英雄のじゃないな! 英雄気取りで死んでいった負け犬のだよなぁ!!」


「やめろッ!!」


 勇気は遂に我を忘れてしまった。山田を殴ろうと右手を振り上げる。しかし――


「馬ぁ鹿ッ!!」


 山田は巨漢のわりに素早い男だ。勇気が拳を振り上げると、すぐに胸倉から手を放し、勇気と距離を取った。


「誰がお前みたいのに殴られるか! 負け犬の子供は負け犬の子供らしく大人しくしてろって! 刑事の子供だか何だか知らねぇが、気取ってんじゃねぇよ!! 馬鹿がッ!!」


「父さんを……父さんを馬鹿にするな……」


 捨て台詞を残して山田は去っていった。

 勇気の心に嫌な気持ちだけが残して。

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