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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第4話 みんなを守るために…… 12 ―父の友―

 12


 結局勇気は、麗子に別れを告げずに病院を後にしてしまった。


『臆病者……それが父さんの口癖?』


『そうよぉ。よく言ってたわぁ。「俺は臆病者だから、人を守る仕事に就いたんだ」ってねぇ』


『それは……どういう意味?』


『分からないわぁ。でも、酔っ払った時によく言っていたの』


 ――麗子の話を勇気は詳しく聞きたかった。だが、時間が来てしまった。面会終了の時間だ。

 勇気はモヤモヤと疑問を抱えたまま、病室を後にするしかなかった。


「父さんは臆病者だから刑事になった……いったいどういう意味なんだ。それに、父さんが臆病者だなんて、そんな訳ない」


 勇気にとって、父は憧れの存在であった。

 幾つもの難事件を解決に導いた優秀な刑事であり、家族を見守る目はとても優しい人。尊敬するべき人物であり『臆病者』という言葉が全く似合わない人物だった。


 だから勇気は訪ねる事にした。父の眠る墓を。


「……父さん、教えてくれ。いったいどういう意味何ですか?」


 勇気は墓に向かって尋ねるが、返答がある筈はなく、勇気の疑問は深まるだけだった。


「父さんと、もっと話をしてみたかったよ。何故、早くに逝ってしまったんだ……」


 ― 俺はやはり馬鹿だな。父さんの言葉の真意を知りたいだなんて。父さんの言葉にどんな意味があっても、俺自身が臆病者には変わりはないんだ……刑事として生き、人の為に働き続けた、そんな父さんと俺は違う。自分と父さんを同一視出来るなんて希望を持つな、父さんと同じく勇敢な男に成れるなんて思うな……


 自己批判と共に、勇気は深く溜め息を吐いた。すると、


「どうしたんだ、未来ある若者が溜め息なんてついて」


 突然、背後から声が聞こえた。


「……え?」


 驚いた勇気が振り向くと、背後には男性が立っていた。体の大きな人物だ。溌剌とした笑顔を浮かべ、勇気に近付いてくる。


「そんな溜め息を吐いていたらお父ちゃんが悲しむぞ! それに、こんな時間に墓参りか? もう22時を回ってるぞ、仕事中なら補導してやるんだけどなぁ、残念ながらそうじゃない!!」


「石塚さん……」


 勇気は現れた人物を知っていた。

 勇気の前に現れた人は、石塚剛史。勇気の父の友人であり同僚だった人物だ――《王に選ばれし民》が現れなければ、勇気や麗子と墓参りに行っていた筈の人物でもある。


「久し振りだね、勇気くん! しかし、溜め息なんてどうした。何か悩み事でもあるのか? 悩みがあるならおっさんが聞くぞ!」


 仏花を手に持つ石塚は髭をたっぷりと生やした熊に似た顔をニコリと微笑ませた。


 ―――――


「そうか、麗子さんが化け物に……だからキミ一人でこんな時間に墓参りを」


「はい……」


 勇気は『母が化け物に襲われた』と昨日の出来事を石塚に教えた。


 二人が話す場所は墓地ではない。風見(かざみ)の町内にあるファミレスだ。

 二人は出会ってすぐに十文字寺(じゅうもんじでら)を出て、山を下りたからだ――勇気は『何か悩み事でもあるのか?』という石塚からの問いに首を振って答えたが、石塚は納得しない様子を見せ『今日は仕事が忙しくてね、丸一日何も食べてないんだ。勇気くん、一緒に飯を喰おう!』と早々に墓参りを済ませて勇気の手を取った。勇気の身長は180cm以上あるが、石塚の体は更に大きい。大きな体に相応な力で手を引かれ、勇気は無理矢理に石塚の車に乗せられてしまった。そして、連れてこられた場所が風見のファミレスである。


 窓側の席に座り、二人は対面で話している――


「麗子さんは無事なんだろ? そうか、なら良かった。しかし……化け物とは、やはりあの変な奴等が関わっているんだろうか。いったい奴等は何者なんだろうな」


 腕を組んだ石塚に、勇気は問い掛ける。


「変な奴等……《王に選ばれし民》の事ですね?」


「うん、そう、それ。奴等のせいで俺達警察もてんやわんやだよ、友人の墓参りには一日遅れるし、一昨日からカミさんにも子供にも会えてない。家族すれ違いで離婚……なんかになったら、奴等を訴えてやろうかと思ってる!」


 そう言って石塚は、数日間は着たままだろうヨレヨレになったスーツを揺らし、熊に似た顔で豪快に笑った。

 それから、珈琲にスティックシュガーを三本分もドバドバと入れて、苦そうに飲んだ。


「署内のお偉いさん方は、奴等は警察が関与すべき案件なのかって所で揉めてるんだが、そんなのどうでも良いんだよ。サッサと動いて、サッサと解決、動き出さなきゃ被害者が増えるばかりだ。他の事件の捜査だって滞る……おぉっと、ごめん、愚痴が出た、忘れてくれ!」


「あ、いえ……」


 石塚が短く刈った頭を下げると、勇気は苦笑いを浮かべた。本当は愛想笑いをしたいのだが、気分が優れない現状では上手く笑顔は作れない。


「あの……でも、動くと言っても、危険は避けてくださいね。奴等は人間では対抗出来ない存在ですから」


 石塚は父の友人でもあり、勇気にとっても物心ついた時から親しくしていた人物だ。石塚の身を案じ、"英雄であった者"として、勇気は《王に選ばれし民》の危険性を石塚に伝えようとする。

 だが、石塚はまた甘い筈の珈琲を啜り、苦く笑った。


「危険を避けろかぁ、そうは言われても、俺達警察は世間一般から言って『危険』と謂われる物事に関わっていかなきゃならない仕事だからなぁ」


「それは、そうなのかもしれないですけど。お子さんもまだ小さいですし」


 石塚の子供は二人いる。長男は小学二年生、長女は一月に五歳になったばかりだ。勇気は幼い頃に父親を失った身として石塚の子供の事も想って忠告していた。しかし、石塚は「そうだなぁ、俺も死にたい訳じゃないから勇気くんの言葉は受け止めておくよ」と、流す様な言葉を返し、話題を変えてしまう。


「俺の話はまぁ良いよ、それよりも勇気くんの話だ。悩める若者よ、キミの溜め息の理由はいったいなんだ? 恋煩いかい?」


「あっ……いや、ですから、悩みなんてないですよ」


 勇気は首を振って返すが「そうか? 顔が暗いぞ?」と石塚は言う。


「――それが気になるんだよ、おっさんにはなぁ」


「これは元からですよ。元々明るい奴じゃないでしょう、俺は……」


 自嘲気味に、咳払いの様に笑い、勇気も珈琲を啜った。今日は一日何も食べていない。そのせいか、苦味が舌に刺さった。


「そんな事ないだろう。おっさんは勇気くんの明るい所をいっぱい知ってるぞ! つい最近もミクの誕生日会で、勇気くんは――」


「俺の話はいいですよ……」


 石塚は一月に行われた娘の誕生日会での出来事を語ろうとするが、勇気はすぐに止めた。


「俺の話はいいんです……それよりも、俺はもっと石塚さんの話が聞きたいです」


「俺の話? 俺の話なんて聞いてどうするんだよ? 面白い話なんて何にもないぞ」


 石塚は言うが、勇気はそれでも「聞きたいんですよ」と答えた。


「石塚さん、怖いって思ったりしますか?」


「怖い? 何をだい?」


「仕事ですよ……さっき、警察は危険に関わっていく仕事だと仰いましたよね。それって、怖くはないのですか?」


「おいおい、急にどうしたんだ」


 石塚は困惑したのか眉をしかめた。


「どうしたというのは気にしないで下さい。ただの好奇心ですから……」


 対して勇気は二口目の珈琲を啜った。砂糖一つ足そうかと思ったが、面倒でやめた。


「好奇心? 好奇心ねぇ……う~ん……まぁ、そういう疑問に答えるのも、年長者の役割か」


 ここで石塚の注文した料理が届いた。ミートソースボロニア風のパスタだ。

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