第4話 みんなを守るために…… 5 ―油断は禁物だぞ、クソガキ―
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セイギとボッズーを取り囲むデカギライの弾丸は前後左右から飛んできた。
「ボッズー、上だ……」
背中合わせになったボッズーに、セイギは指示を出す。
「上ボズか? ――あぁ、なるほど!!」
「そうだ、ダンッて飛べ! それが一番手っ取り早い! 行くぞ、3・2・1! とべッ!!」
セイギとボッズーはとんだ。ボッズーは翼を一振りし、セイギは地面を蹴って。
直後、二人の足下で爆発音がする――四体のデカギライが放った弾丸が、最前までセイギ達が立っていた場所でぶつかり合い爆発したのだ。
爆発音がした時、二人は既に動き出していた。
ボッズーは翼を羽ばたかせて、四体のデカギライに向かって羽根を飛ばした。
すぐには爆弾には変えない。『羽根の爆弾を使って分身を相手してくれ!』と頼まれたボッズーには考えがあるからだ。
セイギは跳躍したが、真上には跳んではいなかった。跳んだ方向は斜め上空、標的と定めたデカギライに近付く為だ。
狙う相手は一人目のデカギライだ。
"一人目"と他のデカギライとの見分けは簡単につく、ボロボロのコートを見ればすぐに分かる。
「ハァッ!!」
セイギは大剣を構えた。
"一人目"を真下に捉え、落下の勢いのまま斬りかかるつもりだ。
「来やがったか……!!」
"一人目"も跳んできたセイギに素早く反応した。セイギに向かって弾丸を連発する。
「悪いが、お前の攻撃はもう慣れっこだぜ!!」
"一人目"が連発した弾丸をセイギは落下しながら斬っていく。一発、二発、三発、四発……薙ぎ払う様に斬っていく。そして、大剣を頭の上まで振り上げて、
「ドリャアッッッ!!!!」
縦一線に振り下ろした。
「まだまだぁ!!!」
セイギは"一人目"に斬撃を見舞うと同時に着地するが、尚も手を止めない。"一人目"が痛みに悶える隙も与えない。縦に、斜めに、横に、下からと大剣を振るい、"一人目"の肉体に次々と傷を作っていく。
「この野郎ッ!!!」
"一人目"ではない別のデカギライが怒鳴った。
続け様に斬撃を見舞われて膝をついた"一人目"への攻撃を止めようと、"一人目"ではない別のデカギライがセイギに向かって弾丸を撃ってくる。それも走りながらだ。別のデカギライが居た場所は、セイギが立つ場所が北だとすれば西に位置する場所、"一人目"への攻撃に集中しているセイギに"西の"デカギライは迫ろうとする。が、これをボッズーが邪魔をする。ボッズーは小さくウィンクをし、セイギに向かって走る"西のデカギライ"のコートに刺さっていた羽根を爆弾へと変えた。
「―――ッ!!!」
爆発と共に"西のデカギライ"は足を滑らせた。
たった一つの羽根では大きなダメージは与えられないが、邪魔をするには十分だ。
しかし、"西のデカギライ"が転倒しても放たれた弾丸は消えていない。弾丸はセイギに向かって飛んでいく。
「ドゥリャッ!!!」
これを捌く者はセイギだった。
セイギは"一人目"への攻撃の手を止めると、体を翻して、飛んでくる弾丸を立て続けに斬った。
「この野郎――」
「――調子に乗りやがってッ!!」」
まだ攻撃を受けていない二体のデカギライが同時に叫んだ。
その内の一体はセイギの東側にいたデカギライだ。発砲しながらセイギに向かって走り出す。
もう一体はセイギからすれば南側、このデカギライは高く跳んだ。ヘリポートの中央に飛ぶボッズーに攻撃をするつもりだろう。
「そうはさせないぞボッズー!!!」
ボッズーはデカギライに刺した羽根を再び爆弾へと変えた。
「グワァッ!!!」
「うわぁっ!!!」
二つの悲鳴が響いた――高く跳んだデカギライは爆撃を受けてヘリポートへと落ちる。
「な……なんで!!」
だがしかし、何故だろう、二つの悲鳴の内の一つはセイギに向かうデカギライの悲鳴ではなかった。爆弾を爆発させた張本人、ボッズーのものであった。
「フハハハハッ!! 馬鹿め、自分で自分を攻撃してよぉ!!!」
発砲しながら走るデカギライが墜落したボッズーのすぐ横を通り過ぎ、嘲笑いの高笑いを浴びせた。
「な……なんだとボッズー」
「ハハッ!! 悪いが、俺に刺さった羽根は、お前が爆発させる前にお前に投げてやったんだ!! その羽根がどんな物か分かればどうでもないぜ!!」
「ちきしょう……気付かれる前に使うべきだったかボッズー!!」
ボッズーはデカギライ達に刺した《羽根の爆弾》を『本体の攻撃のみに集中しよう』と考えるセイギのサポートに使うつもりだった。
セイギを邪魔する者が現れた時に使うつもりだったのだ。だからすぐには爆発させなかった。だが、その策が仇となってしまった。
「セイギ、ごめん!! 一人がそっちに行くぞボズ!!」
否、違う。二人である。
最初に《羽根の爆弾》の爆撃を受けて転倒していた"西のデカギライ"が既に立ち上がっていたからだ。
"西のデカギライ"もセイギへの攻撃を開始している。
「くッ……あっちからもこっちからもかッ!!」
セイギは大剣を振り回し、二方向から来る弾丸を斬っていく。だが、敵の攻撃は防げていても、"一人目"には背中を見せたままだ。
敵の攻撃は連発されている、自らが攻撃するまでには至らず、セイギは「くそぉ……」と呟いた。そして、もどかしく焦れったいセイギは飛んでくる弾丸を斬る事に集中し過ぎて気が付かなかった。"一人目"がのっそりと立ち上がった事に。
「油断しやがって……」
"一人目"はボソリと呟いた。
「ドリャアッッッ!!」
気付かぬセイギは迫る来る弾丸を斬り続ける。
しかし、
「フッ……」
"一人目"が小さく笑った。その足はふわりと上がり、両足を広げて弾丸を斬り続けるセイギの膝裏に下ろされた――
「なッ……!!!」
膝裏を踏みつけられたセイギは体勢を崩し、ヘリポートに片膝をついてしまう。
「油断は禁物だぞ……クソガキ……」
「くッ……クソ!!」
そんなセイギを"一人目"は羽交い締めにする。
セイギを立ち上がらせ、迫り来る弾丸に食らい付かせる。
「うわーーーーーッッッ!!!」
弾丸を放つデカギライは二体、それも二体共に連発だ。二体が放った弾丸はまるでピラニアの群れの様に飛んできた。
英雄のボディスーツは、赤井正義の身体能力を向上させて戦う為の力を与える矛でもあるが、正義の命を守る為の盾でもある。並みの攻撃であれば正義自身は大きなダメージを受けず、ボディスーツも傷付く事はない。だが、群れとなり、セイギの腹に、腕に、足に食らい付いた弾丸の威力は並大抵ではなかった。矢継ぎ早に攻撃を受けて、次第にボディスーツはバチバチと大きな火花を散らし始めたのだ。




