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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第3話 慟哭 13 ―何でこのタイミングなんだ!―

 13


 勇気は、正義に背を向けて歩き始めた。

 勇気は、固く心に誓っていた。正義との決別を。


 ― 俺は正義の傍に居てはならない……


 勇気は知っているからだ。


 ― 俺が傍に居ては、友を想う気持ちの強い正義は俺を選ぼうとする……それは決してあってはならない。世界を救う戦いに、俺は不要なんだ。俺は、正義の邪魔をしたくはない……


 ―――――


「ゆ……勇気、待てよ! 待ってくれよ!!」


 正義は、勇気の決意が英雄を辞めるだけの決意ではないと、言葉から、表情から、流れた涙から、理解した。

『勇気は俺の前から姿を消すつもりだ』……と、知りたくもないのに分かってしまう。

 親友である勇気との決別を正義は受け入れたくはない。想像すらいらないと正義は悲しんだ。


「ま……待てって!」


 悲しみが心を覆ったが為に、正義の動きは勇気に遅れた。追い掛ける一歩目を踏み出せた時には、勇気は既に切り株のテーブルから離れ、壁代わりの木に触れていた。秘密基地へと入る際に出現するエレベーターは入室した者が退出するまでは存在している。その者が入室した際に自動ドアとして使用した壁代わりの木に触れれば、エレベーターに繋がる自動ドアが再び出現する。

 このままでは勇気が行ってしまう……正義は急ぐが、一歩、二歩と踏み出すと「えっ?!」と気が付いた。


「勇気……ちょっと待て、違う、違うぞ!」


 その気付きは、勇気と真正面から睨み合ってしまった正義だからこそ気付けたもの。それは『必死に俺を説得しようとしていた勇気の瞳の奥に、恐怖なんて見えなかった……』いうと気付きだ。それどころか、正義は勇気の瞳の奥に――


「勇気!!!」


 正義は"気が付いた希望"を伝えようと声を張り上げるが、勇気は自動ドアの奥に消えてしまう。


 そして、次の瞬間には腕時計から目映い光が放たれた。


「えっ……ボッズー?!」


 腕時計から放たれた光は白い光だった。ボッズーからの通信が届いた知らせだ。

 正義は嫌な予感がした。ボッズーには『勇気と二人っきりで話がしたい』と基地に向かう前に伝えている。ボッズーは了承し、『分かったボズよ。ゆっくり話をしてこいボズ! その代わり、もしも何かが起こったら腕時計で呼ぶからなボッズー!』と言ってくれた。そんなボッズーから届いた通信は"何かが起こった"と予感させる。その"何か"は一つしか思い付かない。


「ちきしょう……何でこのタイミングなんだ!」


 正義は勇気を追い掛けたかった。しかし、気持ちを抑えて、腕時計を叩くしかなかった。


 正義の予感は当たっていた。

 正義が通信に応えるとボッズーが伝えた。「デカギライが出現した」と。

 正義は勇気の追駆を諦めるしかなかった。英雄として敵と戦わねばならない。デカギライが次の被害者を生む前に止めなければならないから。


 ―――――


 ― 勇気の馬鹿野郎……何で一緒に行ってくれねぇんだ!! やっぱりお前は《勇気の心》を持ってるじゃねぇかよ!!


 ボッズーの翼で空を飛ぶガキセイギは、親友に向かって愛をこめて怒っていた。


 ― 馬鹿野郎……やっぱりお前はあの時と何も変わってねぇ!! 山田から俺を守ろうとしてくれた時と何もなッ!! 俺の話も聞いてくれたって良いじゃねぇかよ……俺はな、あの時にお前に教えてもらったんだ!! 《勇気の心》がある奴ってのは、自分がどんな状況でだって、どんなに相手が強くたって、『誰かを守るために』って動ける奴の事を言うんだってな!! なぁ勇気、今度は世界を守る為なんだな!!


 セイギは見ていた。自分を説得しようと叫ぶ勇気の瞳の奥に、煌々と輝く《勇気の心》を。


 ― 今、腕時計を叩いてみたらな、きっとお前は……だけど、馬鹿野郎だ!! 誰かを守る為にいっつも自分を犠牲にしやがって!! 俺は諦めないぜ、お前は俺の友達なんだ、ずっとずっと俺の友達だ!! それなのに、その事を今すぐ伝えたいのに!! それなに、それなのに――


「セイギ! 居たぞボズ!!」


 デカギライの姿が見えた。今回、デカギライが現れた場所は輝ヶ丘の中心部、デカギライは片側二車線の大道路で高笑いを上げながら立っていた。


「――それなのに、この野郎が邪魔しやがってよぉッ!!」


 セイギとボッズーは十階建てのビルを見下ろせる高さを飛んでいたが、デカギライを見付けた瞬間から一気に降下に移った。ガキセイギを連れて秘密基地から飛び立った時からボッズーの翼はスピード重視の《ビュビューンモード》である。ビュビューンモードの降下も勿論スピード重視、上下四本に分かれた翼の"上の翼"に吸い込んだ風を"下の翼"からジェット噴射が如く勢いで噴き出して急降下する。


「コノヤロォーーーーッッッ!!!!」


 ビュビューンモードの急降下の勢いに乗って、セイギはデカギライの背中に向かって大剣を振り下ろした。


「ッッッ!!!」

 

 無防備に高笑いを上げていたデカギライは悶絶しながら、前方にあった炎上する車に激突した。


「うわぁぁぁぁ!! クッソ!! ……熱いッ!! 熱いッ!!」


「うるせぇ……熱くないんだろ? そんなのは知ってんだよ!!」


 己が燃やしただろう炎がコートに燃え移り、デカギライは慌てた素振りを見せるがセイギは嘘と知っている。

 セイギは道路に下り立つと、大剣を構え直しデカギライに向かって行く。


「デカギライめぇ……酷い事しやがってボズ!!」


 セイギの背中から離れたボッズーは辺りを見回した――輝ヶ丘の中心部に現れたデカギライは町を混乱状態に陥らせていた。

 

「またパトカーを襲ったのかボッズー!!」


 秘密基地から飛び立つ前には愛からも通信が届いた。SNSから情報を得たという彼女は『輝ヶ丘の中心部に現れたデカギライはまずはパトカーを襲撃し、その後に無差別攻撃を開始した……』と教えてくれた。

 愛の情報通り、デカギライが激突した車は赤い炎の中に白い車体が見える物だった。

 しかし、炎を上げている車はパトカーだけではない。デカギライは片側二車線の道路の、町の西部へと向かう車線に進行方向とは逆を向いて立っていたのだが、自分に向かって走ってくる車を射撃の的にしていたのだろう、西部へと向かう車線には炎上した車が多数あったのだ。


 炎上する車のせいで道路には車が溜まっている。渋滞とは違う。停車した車の中に人影は無いのだから。

 デカギライに寄って破壊された車が動きを止めると、他の車の動きも不自由になる。一台止まれば二台目が止まり、二台目が止まれば三台目が止まり……日曜日で台数も多かっただろうから、西部へ向かう車線内はすぐに膠着状態に陥った筈だ。そして『車が動かないならば、捨ててでも逃げよう』と考えた人が多かったのだろう、道路の中を走っている人が多くいた。

 勿論、道路の外にも逃げ惑う人が大勢いる。

 逃げる人々の表情は皆同じだ。皆が皆、恐怖に怯え、嘆き、叫んでいた。 


「ボッズー、今度こそコイツにトドメを刺すぞ!! 今度は絶対ぇに油断しねぇ!! だから、ボッズーも"昨日の夜に言ってたの"頼むぜ!!」


「うんッ!! 勿論だボッズー!!」


 逃げる人々の姿を見て、セイギの心は燃え上がった。真っ赤に輝く《正義の心》がガキセイギの士気を上げていく。

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