第3話 慟哭 11 ―勇気の決意―
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「へへっ! やっと会えたぜぇ!」
勇気からの通信を受けた正義は満面の笑みで現れた。その笑顔は『何事も無かった』と錯覚してしまいそうになるくらいに、昔から変わらぬ快活な笑顔だった。
「わざわざ済まないな……戻ってきてもらって」
反対に勇気の顔は暗い。
『何事も無かったと思い込み、嘘に逃げれば楽になるだろう』と理解しながらも、苦しむ方を選びたいから。
勇気が胸に秘める決意は生半可なものではない。『英雄として生きる』と決意した日と同じく固い決意であった。
「へへっ! 全然、全然、ボッズーに飛んでもらったら一瞬だったぜ!」
「そうか……で、そのボッズーは?」
「約束通り、外で待ってもらってるぜ! 二人っきりで話したいって言ってたろ?」
勇気は『二人だけで話したい……』と秘密基地に正義を呼び出した。
青木麗子の見舞いに行く筈だった正義はその頼みに応え、ボッズーの力を借りて戻ってきたのだ。
「へへっ! でぇ、何の話だ?」
正義は笑顔を浮かべたまま切り株の椅子に座った。
逆に勇気は立ち上がる。正義が座った場所は勇気の正面だった。『正義の顔を見ながらでは、これからする話は出来ない』と勇気は思うから――正義を友達として見てしまいそうになるから。
「おい、何で立つんだよ? つか、お前のコート滅茶苦茶だな! 葉っぱだらけじゃん、へへっ! どんな状況で過ごしたんだよ!」
― 俺は弱い人間だ……友達として話せば、自分の考えを押し通せないだろう。そんな事は自分が一番分かっている。でも、"英雄の同志として"ならば。これが英雄としての、俺の最初で最後の戦いだと思い込めば……
「……どんな状況? それは正義も見ただろ。昨日の俺を」
勇気は、正義に背中を向けた。
それでも正義は笑顔を浮かべ続ける。
「あぁ、見たぜぇ! 勇気さぁ、俺の事どんな姿に見えたんだよ? へへっ! もしかして、赤鬼にでも見えたのか? あっ、でも似たようなモンだな!確かに真っ赤だもんな! なぁ勇気さぁ、ボッズーが初めて俺の変身を見た時に何て言ったか分かるかぁ? 『トマトの怪人』だぜ! へへっ! 『顔が丸くてトマトみたいだ』ってさ、ヒドイよなぁ~~へへへっ!!」
― 良く喋る奴だな……いや、やっぱりお前は優しい奴だ。自分自身がどんな顔をしているのか、鏡を見なくても分かる。俺を明るく変えようとしてくれてるんだな……ならば、やはり俺は、お前の前から消えなければならない……




