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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第3話 慟哭 9 ―勇気は逃げたのか?―

 9


「う~ん」


 英雄たちの秘密基地には切り株の形をしたテーブルがある。そのテーブルに頬杖をつく愛は、スマホの画面を見ながら小さく首を傾げた。


「どうした? やっぱり返信が無いのかボズ?」


「うん……」


 ボッズーに聞かれると愛は残念そうな顔をしながらテーブルの上にスマホを置いた。


 正義とデカギライの戦いから一夜が明けた。

 現在は日曜日の午前。昨日とは打って変わって快晴の空が輝ヶ丘を照らす、そんな日曜だ。


 愛は昨夜、正義から事の一部始終を聞いた。そして就寝につく前に『大丈夫? 連絡ちょうだい!』と勇気にメールを送っていた。

 だが、一夜明けても返信は来ていない。

 だから愛はため息を吐く。


「はぁ……」


 愛は勇気が心配だった。


「やっぱり返信なしかボズ。もしかしたら、勇気は俺達に関わるのを止めにしようとしてるのかもなボッズー!」


 対してボッズーは少し淡白。

 少し冷たい口振りである。


「何でそう思うんだよ?」


 愛とボッズーの会話に入ってきたのは正義だ。正義は愛の向かい側に座っていた。片手には傷を癒す為に《魔法の果物》を持っている。


「だって、勇気は昨日逃げたんだぞボズ」


 切り株のテーブルの上に座るボッズーは、果物を齧る正義に向かってクチバシを尖らせた。


「だから、何度言わせんの? 逃げてないよ、ただ走ってっただけだよ」


「だから、何度言わせんだボズ。それが逃げたって事なんだよボズ」


「違うよ、ただ走っただけだ」


「何だよそれはボッズー!」


 ボッズーと正義は昨日からこんなやり取りを何度も繰り返している。昨日の勇気に対する見解は二人の中で真逆だったからだ。


「いやぁ、だって、山ん中は暗かったからなぁ。俺も一瞬アイツを敵だと思っちゃったし、アイツも多分一緒だ。目の前に現れたのが俺だって気付かなかったんだよ」


 正義は、勇気が逃げたとは決して認めなかった。


「いや、そうだとしても、敵前逃亡は敵前逃亡だろボズ。敵を目の前にして英雄が逃げるのか? 戦えないにしても、俺か正義を呼ぶとか考えるのが英雄だぞボッズー! それに、勇気が逃げなかったら、お前も怪我しなくて良かったかもだろボズぅ!」


「いやぁ……だから、俺がデカギライにやられたのは勇気は関係無いんだって。勇気が居なくなった後が本番だったんだから。俺が勝手に油断して、デカギライにやられただけだよ!」


「いや、違うボズ! 勇気が居たなら俺をすぐに呼ぶ事が出来ただろボズ!」


 ボッズーは、正義がどう言おうが『やられたのは正義のせいじゃない』と『どんな事情があろうが、勇気が逃げた事は英雄として許されない』と、頑なに譲らなかった。


「いや、それもさ、俺がデカギライに出会った時にお前を呼べば済んだ事だ――」


 だが、正義も譲らず。勇気が逃げたとは認めない。


「デカギライにやられたのは、全部俺のせい。俺が油断したせいだよ。そんなの俺が一番分かってる。俺の考えが甘かったせいだ……」


 正義は分身したデカギライにリンチにされた。しかし、その時の記憶を正義は持っていない。気を失ってしまったからか、それとも記憶を失くしてしまったのか、どちらかすらも定かじゃない。ボッズーから聞いた話でしか、その時の事は分からない。


「自分のせいってねぇ――」


 ボッズーが見付けた時の正義は既にガキセイギから少年の姿に戻っていた。デカギライはそんな正義を空に放り投げ、射的の的としていたのだ。

 そんな壮絶な光景を見たからこそ、ボッズーは勇気を庇う気にはなれなかった。


「それは違うボズよ。勿論、正義に伝えるべき事を伝えてなかった俺も悪い。けど、やっぱり俺は、勇気が居たらって考えちゃうなボッズー! 俺は『自信だけは失うな』と勇気に教えた。自信を失えば、英雄としての大事な"心"さえも失ってしまうからなボズぅ……でも勇気には響いてなかったんだろうな、昨日の勇気の行動は正義を見捨てたのと同じボズ! 敵前逃亡ってヤツだボズよ!!」


「う~ん……だから違うってぇ」


 正義は頭を掻いた。


「ねぇ二人とも、今は二人が言い争ってても仕方がないんじゃない? 何があったかは勇気くん自身に聞かないと分からないんだから。勇気くんが何を思っているのかも想像しか出来ないし――」


 愛は、正義とボッズーを交互に見ながら諭す様に話した。

 その瞳には、ほんの少しの怒りがある。


「『友達として勇気くんを信じる』、『勇気くんが間違っていたら叱ってあげる』、どっちも英雄としてやるべき事でしょ? 今は勝手な議論をしないで勇気くんからの連絡を待とうよ……」


 そう言うと愛は再びスマホを取り上げた。


「まぁ、そうだな」


「そうだなボズ……」


 愛が間に入り、セイギとボッズーの言い合いは終わった。両者共に納得はしていないが暫しの沈黙の後、始まったのは別の話題だった――


「デカギライのせいで起こった火事、鎮火されたんだなボズ!」


 切り株のテーブルから愛の肩へと移動したボッズーは、愛のスマホを覗き込んでいた。


「うん、木が燃えた以外は大きな被害も無さそうだね」


 愛が頷くと、正義は「ほぉ~、そりゃ良かった!」とフクロウの様に鳴いた。

 高校生の会話はすぐに移ろうものである。火事の鎮火に安心すると「希望くんの叔父さんってどんな人だったの?」と愛がまた話題を変え、そのすぐ後には「山下のお婆ちゃんって元気?」と昔馴染みの駄菓子屋の店主の近況を正義が聞いた。


 コロコロと話題が変わっていって午前十時、三人は秘密基地を後にする。

 三人は約束していたのだ。

 それは勇気の母親、青木麗子のお見舞いに行くという約束。

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