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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第2話 バケモノッッッッッ!!!!! 8 ―麗子を助けろ!―

 8


「勇気! おばちゃん! 何処にいるんだ、返事してくれ!!」


 友と友の母を呼びながらセイギは走った。


 しかし、幾ら呼び掛けても返事は返ってこない。


 ガキセイギの仮面の奥の顔は汗でびっしょりと濡れていた。

 友の身に何かが起こった事は確実、早く見付け出さなければ手遅れになるかもしれない、捜し始めて既に十分以上が経とうとしている、不安がセイギを襲ってきていた。


 ― 何で見付からないんだ、勇気……大丈夫なのかよ、何処に行っちまったんだよ!


 ギギッ……ギギギギッ……


「……なんだ?」


 妙な音が聞こえ、セイギは立ち止まった。


 セイギの眼前にはなだらかなカーブが多い輝ヶ丘の山では珍しい急カーブへと繋がる登り道が始まろうとしていた。

 音が聞こえたのはその急カーブの先。

 セイギは目線を上げて、音が聞こえた方向を見た。


「……あッ!! あれはッ!!!」


 急カーブの終わりの場所が見えるとセイギは驚いた。そこにはガードレールに突っ込む一台の車があったからだ。

 車はブレーキもかけずにガードレールに衝突したのだろうか、支柱とビームの連結は外れていて車はガードレールに挟まれている。

 

「ヤ……ヤバい!」


 ガードレールに挟まれる車は半身を林道の外に乗り出して、傾いていた。

 林道の外はゴツゴツとした岩が並ぶ深い渓谷。最前に聞こえた妙な音はガードレールに擦られて車体が傷付く音であり、渓谷に向かって落ちていこうとする車を止めようとガードレールが己に与えられた仕事を全うしようとしている音だったのだ。


「こ、このままじゃ落ちる! 止めないと!!」


 車を見付けたセイギは再び走り出す


「ヤバい! ヤバい! ヤバい!!」


 セイギは焦った。何故なら、車の中には女性の姿があったからだ。しかも、セイギはその女性に見覚えがあった。


「おばちゃんが……おばちゃんが落ちちまうッ!!!」


 車内に居た人物は勇気の母=青木麗子だった。

 麗子を助けなければと、セイギは必死に走った。英雄(ガキセイギ)(ボディスーツ)は変身した者の身体能力を向上させる。セイギが両足を車輪が如く回せば、スポーツカーが如くスピードで走れる。


「ヨシッ!!!」


 セイギは急カーブを一気に走り抜け、発見から僅か一分足らずで車の背後に立った。


「おばちゃん、ちょっと待っててね! 今助けるから!!」


 セイギは林道に大剣を突き刺し、リアバンパーの下に両手を突っ込んだ。


「ぐ……ぐぐぐ………!!」


 車を林道に戻す為に力を込めて引っ張るも、(ボディスーツ)によって身体能力が向上されているセイギでも流石に車は重かった。しかも車は渓谷に向かって傾いているのだ、重すぎる程に重い。しかしセイギは諦めない。セイギの根性は人一倍だ。


「うぉぉぉぉ!!!」


 セイギは雄叫びをあげながら全身に目一杯の力を込めた。すると後輪が持ち上がった。


「ヨッシ、来たぁぁぁぁ!!! ドウゥゥリャーーーー!!!!」


 更なる雄叫び。

 セイギは一気に引っ張った。


 ギッ……ギギギッ……


 再びガードレールが車体を擦る。


 ギギッ……ギギギギッ……


 車体の傷は増していく。


 ギギギッ……ギギギギギッ……


 増していくが気にしてはいられない。


「オリャャャャャッッッッッ!!!!!」


 ドドンッッッッッ!!!!!


 ――林道の中央にまで一気に引っ張り上げて、セイギは車から手を離した。離した理由は、腕の筋肉が限界寸前でそっと下ろす余裕がなかった為だが麗子の命は助かった。車は大きく弾んで車内にいる麗子も衝撃を感じただろうが、きっと彼女はセイギを責めはしないだろう。


「ふぅ……なんとか……かんとか」


 セイギの呼吸は荒れたが、整える時間は無い。セイギはふらつく足取りで車に近付くと、運転席のドアに手を掛けた。


「おばちゃん、大丈夫――ッ!!!」


 ドアを開いたセイギは息を呑んだ。

 麗子が頭から血を流して気を失っていたからだ。


 渓谷へと落ちていこうとしている車の中に居ながらも、助けを求める声を発していない時点で、麗子は気を失っているのだろうとセイギも予想はしていたが、よく知る人物の傷付いた姿を見るのは心を刃物で刺される想いだった。


「よくも……おばちゃんに酷い事をしやがって」


 セイギは拳を握った。

 けれど、その拳はすぐに開かれる。今は怒りにかまけている場合ではないからだ。


「おばちゃん、ちょっと待ってね。すぐに病院に連れて行くからね……でも、どうしょうか」


 セイギはシートベルトを外しながら考えた。


「……救急車……いや、バケモノが近くにいるかも知れない場所に呼ぶのは危険だよな。ならボッズーに頼んで……あ、でも― ―」


 セイギは迷った。ボッズーに頼むという事は戦力を減らす事にもなる。一人で戦う自信が無い訳ではないが、今日は昨日とは違い、周りに人がいる状況での戦闘になる可能性が高いのだ。その人達を守りながら戦うにはボッズーの離脱は痛かった。


「でも……やるしかないよな」


 セイギの決断は早かった。言葉通り『やるしかない』。出せる答えは一つしか無かった。

 セイギは素早く車外に出ると、腕時計の文字盤を叩いた。


「ボッ――」


「セイギ!!!」


 腕時計を叩いた瞬間に聞こえてきたのはボッズーの声だった。

 セイギがボッズーを呼ぶ前に、ボッズーの方から通信が届いたのだ。

 ボッズーの声は荒れていた。どうやら嬉しい知らせではなさそうだ。


「セイギ! 大変だぞボズ!!」


「た……大変? どうした、何があった?」


「なにもかもない! なんか気持ち悪いんだボッズー!!」


「き、気持ち悪い?」


「そうなんだ、そうなんだよボッズー! 俺はお前と分かれてからすぐに《ミルミルミルネモード》に変形したんだボズ! ミルミルミルネはとっても疲れるモードだけど、人の捜索をするには適したモードだろ? で、ミルミルミルネで山中を見ていたら、おかしな物を見付けたんだボズ!!」


《ミルミルミルネモード》とはボッズーの能力の事である。黄色い瞳を青い瞳に変形させて、暗視や透視が可能になるモードの名称だ。誘拐犯に捕まった希望の捜索にも使用したモードでもある。

 勿論、セイギは『ミルミルミルネとは何だ?』と聞き返さなくとも、《ミルミルミルネモード》を知っている。

 だから、セイギは「おかしな物? 何だよそれ?!」とすぐに聞き返した。


「おかしな物はおかしな物だよ! だからその場所に来てみたんだけど、やっぱり服だけ! 服だけあって、人が居ないんだボズ!!」


「ふ、服だけ? お……おい何言ってんだ?! 意味が分かんねぇよ、ちゃんと話せ!」


 腕時計の文字盤から立体映像で飛び出るボッズーの顔は大分焦っている。だからか、言葉が端的過ぎてセイギには意味が分からない。


「つか、ボッズー、いまお前は何処に居んだよ? 場所を教えてくれ!」


「場所……あぁ、そっか! ……えっーとね、どうしよう。見付けたらすぐに下りてきちゃったボズからな、地上からで考えると、えーっと」


「近くに目印になる物とかは無いのか?」


「目印ぃ? う~む……どこも木ばっかだからなぁ」


 困った顔をしたボッズーの立体映像がキョロキョロと首を動かした。


「森の中で目印って言われてもボズ……あぁ~~ちょっと待って! 目印ぃ、あったかも! そうだよな? 間違ってないよな? うん、うん、うん!」


 ボッズーは自問自答から一人で納得し、直後「セイギ、戻ってこい!」とクチバシを捲らせた。


「ここ、さっきの道の近くだ! セイギ、戻って来るんだボッズー!!」


「さっきの道? それってパトカーがあった――」


「そうだボズ、さっきパトカーの近くでカラーコーンを見ただろ? アレと同じ物が俺の目に映ってるんだボッズー!」


「じゃあ、あそこの近くって事か?」


「うん! 多分、一個だけ転げ落ちたんだボッズー!」


「転げ……落ちた? まぁ良いや、兎に角さっきの場所に戻れば良いんだな?」


「そうだボッズー! 早くしろ!!」


 そう言うとボッズーは一方的に通信を切ってしまった。


「お、おいって! はぁ、なにがなんだか……」


 セイギはボヤキ、頭を掻いた。


「おばちゃん、ごめん。ちょっと待ってて、病院にはすぐに連れて行くから、ちょっとだけ!」


 車を覗き込んで麗子に向かって言い残すと、セイギは林道に突き刺した大剣を手にし、来た道を戻っていった。

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