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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第2話 バケモノッッッッッ!!!!! 3 ―母の話題は逸らしたい話題―

3


「そういえば勇ちゃん、あの人の写真見た?」


「あの人?」


 輝ヶ丘の南部を通って大木の立つ山へと入った時、麗子が聞いてきた。


「あの人よ、赤いヒーローさんよ」


「赤いヒーロー……あぁ、ガキセイギの事か。あぁ、見たよ」


「あらぁ~あの人、ガキセイギさんっていうのね。あっそういえば、そんな事言ってたかも『正義の心で悪を斬る! 赤い正義! ガキセイギ!』って」


 麗子がいう『赤いヒーローさん』とはガキセイギのことだった。

 昨日の麗子は《王に選ばれし民》が現れた時にはシェルターの中に避難出来ていたらしいが、シェルターの中に居てもピエロの声とセイギの声は聞こえていたという。


「悪い人の声もヒーローさんの声も、私の耳にね、直接届いている感じだったのよ。シェルターの中に居た他の人達もみんな同じでね」


「知ってるよ、俺だってそうだったんだから。どうやら世界中の人々が同じ状態だったらしい」


「あら、そうなの」


 勇気は早朝にSNSやニュースサイトを漁ってみた。そして、日本だけでない各国の人々がピエロや王、ガキセイギの声を聞いていたという情報を得ていた。


「SNSでは、セイギや《王に選ばれし民》の話題で持ちきりだよ」


「テレビでもそうよ、私はね朝のニュースでヒーローさんの映像を見たのよ」


 麗子は嬉しそうに言った。

 現在、SNSやテレビではガキセイギや《王に選ばれし民》に関するニュースで溢れている。

 シェルターに避難する前に輝ヶ丘に住む人が撮影したのだろう写真や動画も広く拡散されていて、勇気もその内の数枚を見ていた。

 拡散されればされるだけセイギや《王に選ばれし民》に向けられる見解も多岐に渡っていて、セイギの活躍を称賛する声が多いものの、セイギの正体や存在を怪しむ声もあり、中には《王に選ばれし民》を新時代の神と崇めようとする者すらいた。人々の意見は千差万別、多種多様、十人十色であった……


「それにしても偶然があるものねぇ」


「偶然? 母さん、何の話だよ」


「だって昨日正義ちゃんが帰ってきたんでしょ? その日に"セイギ"って名前のヒーローが現れるだなんて……面白い偶然だわ」


「!!」

 

 麗子は「ふふふ……」と微笑するが、勇気はドキリとした。

 ガキセイギの正体は秘密だ。名前が同じなだけでまさかバレはしないだろうと思いつつも、母の微笑が全てを見透かしている様にも思えた。だから勇気は急いで母から顔を背ける、外を見て、そして誤魔化す、冷や汗をかきながら。


「あ、あぁ……そうだな、偶然だ。でもアイツは俺と一緒に居たから、ガキセイギじゃないよ」


 勇気が応えると、麗子は再び「ふふふ」と笑った。


「やっぱり勇ちゃん、昨日は正義ちゃんと一緒にいたのね。正義ちゃん、元気してた?」


「あ、あぁ……元気、元気、相変わらずだったよ」


 窓の外に視線を向けながら、勇気は額にかいた汗を拭いた。


「元気ぃ、それは良かったわぁ」


 麗子は三度みたび微笑む。それから「ママ、正義ちゃんには感謝してもし切れないからねぇ」と続けた。


「か、感謝?」

 

「だって、正義ちゃんとお友達になってからでしょう? 勇ちゃんの小学生ライフが楽しくなったの? その前までは毎日暗い顔をして学校に行っていたじゃない」


「ん? ……あ、あぁ、そうだったっけ」


 勇気は母の話題が昔話に逸れた気がして少し安堵する。バックミラーに映る自分の青ざめた顔に気付ける程に。


「あっ……そう言えば、正義が母さんのサンドイッチ喜んでたよ。美味いってさ」


「あら、それは嬉しいわねぇ~! だったらもっと作ってあげれば良かったわぁ! はぁ、私も正義ちゃんに会いたいわぁ~」


 麗子は鼻唄を歌う様に言った。

 そんな母を見て、勇気は正義の友達として嬉しく思い、小さく笑った。


「そうだな、じゃあ今度、家に連れてくるよ」


「あら、今度じゃなくても良いのよ。お墓参りの後にお夕飯でも誘ってみたら?」


「今日? いや……今日は無理じゃないかな。今日のアイツは新しく出来た友達に会いに行っているからさ」


 勇気は長い足を組み、再び窓の外を見た。

 

 厚い雲の隙間からは真っ赤な太陽が照らした。



 同時刻――



 希望のマンションを見付けた正義は、ほわぁと息を呑んでいた。理由は簡単である。希望のマンションが想像以上の大きさだったからだ。


「なに間抜けな顔してんだボズぅ」


「いやぁ、だってさぁ……こりゃ、デカ過ぎるだろ」


 息を呑んだ後、正義の顎はガクリと落ちる。そんな"間抜けな顔"で正義はマンションを指差し、数え始めた。


「昨日は戦いに集中してたから全然気付かなかったけど、輝ヶ丘にもこんなデカいマンションが建ったのかぁ……1、2、3……」


「何してんだボズ?」


「数えてんだよ。何階あんのかって、4、5、6、7……」


「あぁ、やめろ、やめろ! 恥ずかしい真似すんな! ほら、希望の家は1005号室だボズ! 十階だ、早く行けボッズー!!」


 正義の肩にとまるボッズーは、正義の頭を叩くとマンションの前に立つ木に向かって飛んでいった。


「痛ぇ、叩くことねぇじゃねぇかよ、叩くことよぉ……いやぁ、それにしても、希望良いところに住んでんなぁ、羨ましいぜ」


 正義はぶつくさ言いながら、四十階はあるマンションへと入って行く。


 ―――――


「あっ! クソッ!! バカッ!! やれっ! あっ……あぁ!!! クソォ!!! また負けたよ!! アツガミバットめ! お前はもうアツガミバットじゃない! ポンコツバットだッ!! ポンコツバットに改名しろ!!」


 荒々しい言葉で"男の子"は戦う仲間を罵倒する。


「バカ!! バカ!! バカ!! バカッ!!」


 それは誰か。

 それは正義の新しいお友達。

 それは、希望のぞむだ。


「バカッ!! マジで使えねぇ!!」


 自室の学習机に座る希望は、勉強もせずにスマホゲームに夢中だった。

 ゲーム内のボスキャラクターにボロ負けした希望は、子供特有の"覚えたての汚い言葉"を駆使して、戦う仲間=自身が操るキャラを罵倒する。


「クッソォ! もう一回だぁ!!!」


 希望は立ち上がった。スマホを片手に部屋の反対側にあるベッドへと向かう。ベッドの上にはゲームを始める前まで読んでいた漫画雑誌があったが『もうお前は用済みだ!』とでも言う様に、それをベッドの下に落とした。


「フゥー!」


 ボディプレスが如くベッドに跳び乗った希望は天井を見上げて一息吐く。

 新たな戦いに向けて呼吸を整える為である。

 それから再びスマホを構える。

 左手でスマホを持って顔の前に持っていくと、右手は人差し指だけを立てて画面に添える。画面を睨む目付きは真剣そのもの、勝負を目の前にした男の顔付きだ。


 希望が睨む画面に映るものは、紙細工で作られた様なペラペラのコスチュームを身につけたキャラクターであった。

 コウモリの羽に似たマントを纏い、羽を広げたコウモリの形を模した"目元だけの仮面"を付けている。仮面の奥の目付きは鋭くギラつき、コスチュームも黒くて、《《明らかに悪役》》という感じだ。


 キャラクターの頭上には名前が表示されている。

《仮面バイカーアツガミバット》


 希望がプレイしているゲームは子供に人気のある仮面バイカーシリーズのゲームであり、シリーズの最新作『仮面バイカーダンボールジョーカー』の世界観を再現したゲームでもある。

 仮面バイカーアツガミバットは『仮面バイカーダンボールジョーカー』に登場する"悪の仮面バイカー"だ。

 悪役ではあるが希望はこのキャラクターがお気に入りだった。何故ならば、彼は宿敵だからだ。希望が大嫌いで大嫌いで仕方がない存在の強敵でありライバルだからだ。


 だから希望はアツガミバットを使用キャラに選び、大嫌いな存在がラスボスとして出てくるステージに何度もチャレンジしていた。"大嫌い"を倒すために、何度も負けても諦めず。


 そのステージはアツガミバットで通常レベルのステージを全てクリアして始めてプレイ出来る特別ステージでもある。特別だから勿論その分難しい。レベルは激ムズだ。


「……ッ!!」


 希望はリベンジマッチを始めた。

 真剣な表情で画面を睨み、人差し指を高速で動かす。特別ステージは全部で10ステージ、途中までは通常ステージをクリアしている希望にとっては楽な戦いだった。次々とクリアしていく。

 中間のステージでは中ボスが出てくる。しかし、特別ステージに何度も挑んだ希望は既に倒し方を熟知していた。中ボスをあっさりと倒した希望は更に更にと進んでいく。

 9ステージ目は少し苦戦した。集中力が切れ始めたからだ。希望は一旦ゲームをストップし、スマホを置く。目を閉じて、目頭を指で押し、深く息を吐き、集中力を取り戻す。

 それから再びスマホを手に取る。『さぁ、ラストステージに挑戦だ』そんな気持ちで画面を睨んだ。

 ストップした画面には既にラスボスが映っていた。アツガミバットの宿敵であり、希望が大嫌いで大嫌いで仕方のない存在が。


「絶対倒すッ!! ダンボールジョーカー!!!」


 希望は宿敵に向かって叫んだ。


 ピンポーーーン


「ん?」


 インターフォンの呼び鈴が聞こえた。

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