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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第1話 大木の中へ 7 ―何故なのか……―

 7


「変身が出来ない?」


「うん……そうなの」


 正義が首を傾げると、愛は腕時計の文字盤を叩いた。


「ほら、何も起こらないでしょ? 私と勇気くんは、腕時計を叩いても何も起こらないの……変身が出来ないの」


「……」


「……」


 正義とボッズーは顔を見合わせた。


「せっちゃん……せっちゃんはどうやって力を手に入れたの?」


「え? いや……俺はぁ――」


『どうやって』と聞かれても正義は答えられなかった。

 正義にとって英雄の力は当たり前に使えて、当たり前に手に入れられたものだったからだ。


 正義は中学三年生の時に初めてガキセイギに変身した。初めではあるが、それまで変身が出来なかった訳ではない。それまでの正義は体がまだ幼くて、ボッズーから変身する許可を貰えなかっただけだ。

 許可を貰えれば正義はすぐに出来た。出来てしまった。だから、愛の質問には答えられない。


「……」


「どうやら……お前は悩む事なく、力を手に入れたらしいな」


 答えらない正義を見て、勇気は理由を察した。

 察すると、正義からボッズーへと視線を移す。その顔は《願いの木》を戦力とする事が実質的に不可能と知った時よりも翳り、声は沈んだ。


「……ボッズー、俺は、いや桃井も、これまで何度も変身しようと試みたんだ。だが、一度たりとも出来なかった。だから俺は『約束の日に大木に行けば力を与えられる筈だ』、そうやって自分に言い聞かせて、いや……信じて、ここへ来た。しかし、現在でもその感はない――」


 勇気も腕時計を叩いた。


「――ほら、やはりな。何も起きないだろ? 何故なんだ?」


「う……う~ん」


 ボッズーは困った。想定外だったからだ。英雄に選ばれた勇気と愛が英雄の力を使えないなど、ボッズーにとっては有り得なかったから。


「ボッズーでも、分からない様だな……」


 ボッズーからも返答が得られないと知ると勇気は悔しさに唇を噛み、項垂れ、呟く。


「じゃあ……どうすれば良いんだ」


 勇気はまるで憎い者を見る様な目で腕時計を睨んだ。


 勇気は今日まで、変身が出来ない不安を抱えて生きてきた。それでも、今日までは希望(きぼう)を持てていた。『約束の日が来れば』『大木へ行けば』……と。しかし、どちらも違っていた。約束の日が来ても力は得られず、大木へ来ても同じであった。


 勇気は希望(きぼう)を失ってしまったのだ。


「勇気……ごめんボズな。何も分からなくて」


 ――勇気が項垂れると、ボッズーは勇気に近付いていく。


「こんな時に"ゾワゾワ"で何かが分かれば良いんだけど。肝心な時に働かない頭でごめんボッズー……」


「いや……ボッズーが謝る事ではないさ」


 勇気は首を振るが、項垂れたままだ。

 そんな勇気に、ボッズーも首を振る。


「いや、力になれない仲間ですまんボズ。愛にも謝るボズ。でもな、英雄を導く存在として生まれた俺だから言えるボズ。二人が選ばれし存在なのは間違いはないボッズー。だから、焦ってはいけないボズよ。今は英雄の力を使えないかもしれない、でも、二人も必ず力を掴める。今は焦るな、焦れば自信を失ってしまうボズからね。自信を失えば、英雄としての大事な"心"さえも失ってしまう可能性もあるんだぞボッズー」


 ボッズーは勇気と愛を交互に見て言った。

 その眼差しは真剣で、二人を励ます気持ちがあった。そして、危惧もしていた。『自信を失えば、本当に英雄にはなれなくなってしまうぞ』と。


「英雄として大事な心を、失くしてしまう……」


「そうボズよ、勇気。勇気には《勇気の心》、愛には《愛の心》だボッズー。二人の中に必ずあり、その"心"がキミ達を英雄に変えるんだボッズー。だから大事な"心"だけは失ってはいけない、失ってしまえば、その時は本当に英雄には成れなくなる……だから焦るな、自信を持ち続けるんだボッズー」


「そうだぜ、二人なら絶対に大丈夫だって!」


 ボッズーの言葉を自分自身にも向けられた言葉だと聞いていた正義は、勇気と愛に近付いて二人の肩を叩いた。


「だってさ、俺に《勇気の心》と《愛の心》を教えてくれたのは勇気と愛の二人なんだぜ。俺は知ってる、二人は特大の"勇気"と"愛"を持ってんだ!!」


 正義は二人を励ました。

 だが、


「えっ、俺が教えた?」


「私が?」


 ――勇気も愛も首を傾げてしまう。


 正義の励ましは嘘ではなく、実体験をもった言葉だった。だが、二人には伝わらなかった。

 しかし、正義はニカッと笑う。正義は確かに覚えているのだ。勇気に《勇気の心》を教わった想い出を、愛に《愛の心》を教わった想い出を。


「へへっ! 自分じゃよく分かんねぇか、でも本当なんだぜ! 確かに俺は、二人から教えてもらったんだ!」


「この俺が……いつ?」


「へへっ!」


 勇気が問い掛けると、正義は勇気の肩に腕を回した。


「勇気のはなぁ、"山田の時"だよ!」


「"山田"……大分昔じゃないか」


「へへっ! でもそうなんだよ!」


「山田くん……それって、あの山田くんの事?」


 勇気と同じく表情を曇らせていた愛だが、『山田』と聞くとほんのりと笑顔を浮かべた。

 何故ならば、『山田』という名前は懐かしい記憶を思い出させる名前だったからだ。


「そうだよ、太っちょの山田だ! 暴れん坊でさ、誰かしらいつもイジメてて、勇気とも最初は仲悪くて――」


「うん、覚えてる。山田くんが関わってるって事は、せっちゃんが言いたいのは"あの時"の話だよね? それって何年前だっけ? 勇気くんが輝ヶ丘に引っ越してきた頃だから、九年前くらい? あの頃の勇気くんって、せっちゃんのこと『赤井くん』って呼んでたよね?」


「違う、そんな風には呼んでいない、確か……正義くんだ――」


 愛の間違いを、勇気は咄嗟に訂正した。少し照れ臭そうに。


「おっ、その呼び方懐かしい!! もっかい呼べ、もっかい!!」


「うん、私も感動した。もう一回聞きたい」


「正義、やめろって……俺達は真面目な話をしていた筈だぞ、話題を変えるなって! 桃井、キミもすぐに乗っかるな!」


 ……と言うが、勇気の表情の翳りは消える。


 正義が笑うと、愛も笑った、そして微笑ではあるが勇気も笑顔を浮かべられている。


 そんな勇気を見て、希望(のぞむ)にも笑顔が浮かぶ。


「三人とも仲良しなんだなぁ~、良いなぁ~!」


「だろだろ? あの三人は――いや、まだここには来ていない二人も加えて、五人は、昔っから仲良しなんだよ。一人が笑えば別の一人に伝染して、そしてまた別の一人に伝染する、そして気が付いたら五人が五人とも笑ってる……そんな奴らなんだボッズー!」


 希望の肩に止まって、ボッズーも笑っている。

 笑いながらボッズーは、勇気と愛に向かって問い掛けた。


「勇気、愛、二人とも笑えているなボッズー! 自分の心を信じるんだぞ、キミ達二人が英雄なのは間違いないんだボズ! 焦るな、自信だぞ、自信! 大事な"心"を陰らせる何かを二人は抱えていないだろボッズー?」


「う~ん……多分、大丈夫かな?」


「俺が、そんなものを抱えている筈がないだろ」


 愛も勇気も笑顔を見せながら断言した。


「そうか、そうか、それなら大丈夫だボッズー!」


 二人の返答にボッズーは安心する。



 ――しかし、勇気はこの晩、悪夢を見てしまう。勇気はもっと自分の心の中を見詰めるべきだったのだ。否定せずに、探すべきだったのだ。自分の心の中を見詰め、"何か"を探すべきだったのだ……すぐに気付けた筈だから。


《勇気の心》を陰らせる自分自身に。



 第二章、第1話『大木の中へ』 完

 第二章、第1話「大木の中へ」をお読み頂き誠にありがとうございます。

 第二章『勇気の英雄の激誕 編』はその名の通り、青木勇気が英雄の力を掴み取る物語となります。

 どうか、どうか……青木勇気を見守ってあげて下さい。

 そして、次回の第2話「バケモノッッッッッ!!!!!」では、遂に《バケモノ》と呼ばれる存在が登場します。

 お楽しみ……


 もし宜しければ、ブックマークやご感想を頂けますと幸いです。

 レビューを頂けましたら更に励みになります。

 今後とも「ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!!」を宜しくお願い致します!!!!!

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