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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第1話 大木の中へ 6 ―英雄たちに与えられるプレゼント―

 6


 希望が唱え終えると、傘の様に広がった葉や枝がガサガサと大きく揺れて――


 ドサドサドサ……


 "何か"が落ちてきた。


「おっ! うわわっ!!」


 正義は驚き、声をあげ、目を見張る。

 すると、《願いの木》から落ちてきた"何か"が正義の足元に転がってきた。


「え、果物?!」


 それはプラム程の大きさの林檎に似た果物だった。


「これだよ……正義。これが《魔法の果物》だ!」


「んぅ、これが?」


「あぁ、そうだ……希望くん、キミはこうやって《魔法の果物》を出現させたのか?」


 勇気は果物を一つ拾い上げた。


 木から落ちてきた果物は一つや二つではない。ドサドサと音を立て大量に落ちてきた。クローバーの絨毯の緑は隠れ、果物の赤が辺り一面に広がっている。

 

「うん、そうだよ! 一回目にやった時は全然偶然なんだけどね、その時はこの木が《願いの木》だなんて知らなかったから!」


「ほぇ~~! 知らなかったのに気付くなんてすげぇな!!」


 正義は感心しながら足元から果物を拾い、一口齧った。


「おぉ、美味っ!」

 

「ううん、全然すごくないよ。だって偶然だもん。僕、この木に寄り掛かりながら『傷がズキズキ痛むな、早く治したいな』とか『お腹空いたなぁ、プラムが食べたいな、リンゴも良いなぁ』って考えてただけだから。そしたら勝手に《魔法の果物》が出てきたんだ」


「へへっ! なるほどな、それが願いになってたって事か!」


「だから《魔法の果物》は、傷も治せて、プラムみたいな大きさで、リンゴみたいな形なんだね!」


 次に感心の声をあげたのは愛だ。


「そうだボズよ。この木は、木に触れた者の"頭の中にある願い"を具現化させる能力があるからなボッズー」


 ボッズーが胸を張ると、勇気は「頭の中にある願いを具現化か……」とボッズーの言葉を繰り返した。


「そうボズ! だから二人に『気軽に触るな』って言ったんだボズ。この木は俺達にとって良い物だけを出現させてくれる訳じゃないからなボッズー。もしも、頭の中で"恐ろしい物"を想像していたとしたら、ソレが現れてしまうんだボズ!」


「恐ろしい物……ぶちギレた時の母ちゃんとかか?」


「そうだなぁ、それもあるかも……って正義、ふざけないで聞いてくれるかぁボッズー!」


「へへっ! ごめん、ごめん……で、どんな物なんだ?」


「それはだなぁボッズー、『赤井正義を消滅させる物』とかだボズ!」


 ボッズーは少し意地悪な顔をして正義を指差した。


「お、お、俺を消滅させるものぉ……じょ、冗談言うなよぉ」


「いんや、冗談じゃないぞぉ、例えばなぁ正義……『赤井正義を消滅させる武器が欲しい』って願いながら、銃や剣を想像したとする。すると想像した物の形で、願った通りの効果を持った物を《願いの木》は出現させてしまうんだボッズー」


「想像した物の形で、願った通りの効果を持った物を?」


 正義は手に持つ果物を見詰めた。

 それから《願いの木》に視線を移す。


「それじゃあ、例えばこの果物が『赤井正義が食ったら赤井正義を消滅させる果物』って願われた物だったとしたら?」


「食べたらお前は消えるなボズ」


 ボッズーはコクリと頷いた。


「マジかよ……」


「でも安心しろボズ。《願いの木》から現れる物、仮にコレを『プレゼント』と呼ぶ事にするボズね……この"プレゼント"には制限時間があるんだボズ。だから、制限時間を超えればプレゼントは消えてしまうボズ。もしも恐ろしいプレゼントが現れてしまっても、制限時間を超えさえすれば……パアッ!」


 ボッズーは大きく口を開けて両手を広げた。


「――消えてしまうだボズよ! ねぇ希望? キミが最初に願った時に出現した果物は、さっきこの部屋に入った時にあったかボズ?」


「え……?」


 問い掛けられた希望は辺りを見回した。


「あっ、そういえば無くなってる! 初めて僕が果物を手に入れた時も、今出てきたのと同じくらいの量が落ちてきたのに、さっきこの部屋に来た時はもう無かった!」


「ほらねボッズー!!」


「なるほど……それは制限時間が来たからって事か」


 勇気が言うと、「うん!」とボッズーは頷いた。


「そういう事だボズ。そして、制限時間は"願われたものの大きさ"によって変わるボズ。勿論、大きさってのは物のデカさもあるけど、それだけじゃないボズ。一番は"効果"ボズ。プレゼントが持つ"効果"が重要なんだボッズー!」


「"効果"が凄ければ凄い程、制限時間は短くなるって解釈で良いか?」


 正義だ。正義はボッズーに話し掛けながら、天を仰いでウロウロと歩き出していた。何処かに向かおうとしてる訳ではない。右に行ったり、左に行ったり。右手は髪を掻き回している。何をしているかはこの手を見れば分かる。これは正義が考え事をしている時の癖だ。


 そんな正義にボッズーはこう答えた。


「うん、そういう事だボッズー。"効果"が凄ければ凄い程、制限時間は短くなるボッズーよ」


「じゃあ、さっき言った『俺を消滅させるプレゼント』が現れたとして、ソイツの制限時間はどれくらいだ?」


「う~ん……本当に短い時間だろうボズね。およそ一分。もしかしたら、もっと短いかも。だって"この世に存在する者"を消す事になるんだからなボッズー」


 ボッズーは『この世に存在する者』の部分を殊更強調して答えた。


「なるほど、じゃあその対象が《王に選ばれし民》だったとしたら?」


 正義の視線は天から下りて、ボッズーへと向けられた。


「それも同じだボズね。対象が何者かなんてのは関係ないボズから。《願いの木》にとっては相手が悪人であっても善人であっても"この世に存在する者"には変わりはないボッズー」


「う~ん……そうなるか」


「それになボッズー、"効果"に寄って変動するのは制限時間だけじゃないボズよ」


「制限時間だけじゃない? 他には何があんだ?」


「それはな、人数だボズ」


「人数??」


「そう……《願いの木》は人の願いを形にするボズからね。願いを原料にしてプレゼントを作っているんだボッズー。だからプレゼントの"効果"が大きければ大きい程、願う人数も増やさなければならないボズ」


「一人じゃ足りないって事か?」


「そゆことボズ、しかも同時ボズ。みんな同じタイミングで同じ物を願わないとプレゼントは現れないボズよ。しかも具体的に」


「同じタイミングで、同じ物を……具体的に……じゃあ、何人必要なんだ?《王に選ばれし民》を、"この世に存在する者"を消すには?」


 正義はボッズーの言葉を丸々真似た。ボッズーの言葉のチョイスに意味があると思ったからだ。


 ――この時、勇気と愛は話す二人を黙って見ていた。勇気は腕組みをして、愛はじっと見詰めて。

 正義とボッズーの会話を聞いてる内に二人は気が付いたのだ。ボッズーの答え次第ではプレゼントの制限時間がたったの一分だったとしても、《王に選ばれし民》との戦いにおいて重大な戦力になり得るという事に。


「う~ん」


 正義の質問を受けたボッズーは、眉間に皺を寄せて頭を唸った。


「これも『だろう』としか答えられないボズね。でも、おそらく百じゃ足りないボズね……何百、いや何千……いやいや、それでも足りないかも知れないボッズー」


「そんなにか……」


 勇気は溜め息を吐く様に呟いた。


「……」


 愛は無言。残念に思い、ただ俯いた。


「何千か、多いな、多過ぎる……」


 正義は《願いの木》を見詰める。


「数人だったとしても願いを統一するのに苦戦しそうなのに、そんな莫大な数じゃあ、木に触れる事自体がまず無理だな」


 髪の毛を掻き回しながら正義が言うと、勇気が「そうだな……」と相槌を打った。


「《願いの木》は輝ヶ丘の大木ほど大きくはない。どこにでもある木と然程(さほど)変わらない大きさだ。片手だけだったとしても、何千人もの人間が同時に《願いの木》に触れる事は不可能だ……」


 愛は「うん……」と頷き、更に俯いた。


「結局、実質的には不可能って事なんだね。《王に選ばれし民》を消してくれる……そんな一発逆転の武器を出してもらおうなんて」


「そういう事ボズねぇ」


「う~ん……」


 正義は掻き回しに掻き回されて雀の巣になってしまった髪の毛を更に掻き回しながら、溜め息を吐いた。


「俺はてっきり《願いの木》が秘密基地の中にあるって事は《王に選ばれし民》との戦いに重要だからあるんだって思った。でも、う~ん……何かある、何か使い道がある筈なんだけど、今の俺じゃ何にも思い付かねぇ~~!!」


 正義は再び《魔法の果物》を齧った。

 シャクシャクと音を立てながら一口齧り、二口齧り、三口齧り、髪の毛をガシガシと掻き回す。


「あぁ~~ダメだ! 今は傷を癒してくれる《魔法の果物》しか思い付かねぇ! 結局奴等を倒すには俺達一人一人に与えられた腕時計の力を使うしかねぇって事か!」


 正義は「なぁ勇気、愛!!」と二人に呼び掛ける。


 正義は切り替えの早い男だ。

 シャクシャクと音を立てて果物を食べながら結論を出して、ニカッとした笑顔を浮かべながら勇気と愛に左腕を見せた――左腕には腕時計がある。赤井正義をガキセイギへと変えてくれる腕時計だ。


 ……しかし、笑顔になれた正義とは反対に、勇気と愛の表情は晴れなかった。


「そう、だね。だけど……その力なんだけど……私も勇気くんもまだなんだ……」


 とても言い難そうに、愛はポツリと正義に告げた。


「ん? まだ??」

 

「うん、私達、まだ"変身"が出来ないの」

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