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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第1話 大木の中へ 4 ―ゴゴゴゴ……ドスンッ―

 4


「願いの木?」


 正義は首を傾げた。


「あれ? せっちゃんも知らないの?」


「あぁ、ボッズー何だよソレ?」


「あ、そっか。正義にもまだ話してなかったなボズ。《願いの木》ってのはね、この秘密基地の中に有る物なんだけど……実はねぇ――」


 聞かれると、ボッズーは頬をポリポリと掻いた。正義が考え事をする時のクセに似た動きだ。


「――実は、秘密基地の中にあるのは分かってはいるんだけどぉ。何処にあるかはまだ"ゾワゾワ"で思い出せてないんだボズよ……だからまだ正義にも話してなかったんだなぁボズ。この部屋の何処かから《願いの木》がある部屋に行ける筈なんだけどなぁボッズー、基地の中に入れば"ゾワゾワ"がくると思ってたんだけどなぁボズぅ」


 ボッズーは頬を掻きながら、黄色い大きな瞳で辺りをキョロキョロと見回した。すると、愛が聞いてくる。


「ゾワゾワ……何、それ?」


「あぁそっか、この事はまだ愛達は知らないよな!」


 愛の質問に、正義は答えた――正義が答えると愛は感心した眼差しをボッズーに向けた。


「ボッズーの頭の中に、私たち英雄や《王に選ばれし民》の情報が眠ってる……で、その情報を思い出す時に"ゾワゾワ"する。なるほどねぇ、ボッズー凄いじゃん!」


「で、そんなボッズーも分からない場所をもしかしたら希望くんが知ってるのか。さっきボッズーは希望くんが《魔法の果物》を出した時に聞いたよな。『《願いの木》がある部屋へ行ったのか』と……」


 勇気が言うと「魔法の果物? なにそれ?」と正義が聞いた。


「あ、それはね!」


 正義の質問には、愛が答えた。


「ほぉ~、じゃあ俺が目を覚ましたのは、希望が《魔法の果物》ってのを食べさせてくれたからなのか!」


 正義は「ありがとう」と言いながら隣に立つ希望の肩を叩いた――正義が切り株のテーブルから降りると、希望も降りた。今は正義の隣に立っている。そんな希望に愛が話し掛ける。


「希望くんはやっぱり、《魔法の果物》を《願いの木》から持ってきたの? ……って聞く前に私、自己紹介してなきゃだね。私、桃井愛。せっちゃんの昔からの友達だよ! こっちは青木勇気くん!」


 170cmギリギリあるかくらいの正義と比べても愛は頭一個分小さい。が、小学五年生の希望は更に小さい。愛はポニーテールを揺らし、希望の背丈に合わせて腰を屈めた。


 対して希望は愛の美しい笑顔に照れたのか、頬を赤らめて伏し目がちに再びの"宜しく"を伝え、それからボッズーに視線を移した。


「あのぉ……ね、ボッズー。ボッズーが言ってる《願いの木》かは分からないけど、確かに僕は《魔法の果物》を"木"から取ってきたよ」


「あ、やっぱり"木"からかボズ! で、その場所は何処だ? 教えてほしいんだけど!」


 ボッズーが大きな瞳を更に見開いて聞くと、希望は「うん、良いよ」と頷いた。それから――


 

「ここです。ここから僕は、"木"がある部屋へ行きました!」


 希望が皆を連れていった場所は、切り株のテーブルから右斜め後方にある、希望が顔を出した壁代わりの木の近くだった。

 希望は木に背中を向けて、基地の中心を見る形で立ち止まり、床面を指差した。


「ここ?」


 希望の傍に立った愛が聞いた。


「はい! ここです!」


「だが、ここには何もないぞ? 確かにここなのか?」


 勇気も聞く。

 希望が立った場所はただの平地であり、年輪模様の床があるだけで他には何も無い場所だったからだ。

 だが、希望は頷く。


「はい、ここです! 僕、正義さんが戦っている時、そこの木と木の間から戦いを見てたんです。けど――」


 希望は後ろに生えている木を指差した。


「――僕、道化師(ピエロ)が苦手なんです。だから、ピエロみたいなヤツが出てきた時にビックリしちゃって、基地の中に逃げようとしたんです。そしたら、躓いてしまって、ここにドンッと手をついてしまったんです。そしたら、出てきたんです!」


 ここまで話すと、希望はいきなり床面を足で叩いた。


 ドンッ!と音がすると、


 ゴッ……ゴゴゴゴゴゴ……


 希望が叩いた場所の数cm前方の床が音を立てて揺れ始めた。

 それは縦三十cm、横一m程の限られた範囲。


 ゴゴ……ゴゴゴ……


 揺れながら、その場所は沈んでいく。


 ゴゴ……ゴゴゴ……


 徐々に、徐々に、深度を増していく。


 ドスンッ!!


 そして、一分もしない内に『ドスンッ!!』と鳴って、床の沈みは止まった。

 沈んだ深さは十五cm程。

 しかし、これで終わりではなかった。

 今度は沈んだ場所から部屋の中心に向かって一歩進んだ先の床面が動き出す。範囲は最前と同じく、縦三十cm、横一m。


「な……なんだ、これ??」


 正義が言うと、希望が答える。


「すぐに分かります。ここからは早いんで!」


「早い?」


「そうです!」


 ドスンッ!!


 希望の言う通りだった。次に揺れ出した場所の沈む時間は直前の場所よりも短く、有したのは半分程の時間だった。が、逆に深さは増した。今度の深さは三十cm。

 それから再び揺れは始まる。場所は三十cm沈んだ場所から更に一歩進んだ先であり、揺れる範囲はまたもや同じ幅。


 ドスンッ!!


 三度目に揺れた場所はすぐに沈んだ、深さは四十五cm。


 続けてまた揺れる。同じく一歩進んだ先で。

 次は六十cm沈んだ。


 更に、更に、揺れと沈みは起こる。沈む深さは十五cmずつ足されて、六十cmの次は七十五cm、その次は九十……百五……百二十……


「これは……もしや、階段か?」


「そうです!」


 ボソリと言った勇気に、希望は頷いた。


「隠し階段って事なの?」


 これは、愛だ。


「これって、どこまで続くんだ?」


 正義は髪の毛を掻き回し始めた。


「むむっ!!」


 ボッズーは、震え出す。


「ゾワゾワ……ゾワゾワが来たぞぉ!!」


 ボッズーの震えは"ゾワゾワ"だった。

 ボッズーは切っ掛けを得たのだ。出現し続ける"階段"を見て、脳の中で眠っていた記憶がゾワゾワと思い出されていく。


「どこまで続く……正義、その質問には俺が答えられるぞボッズー! 階段は、次で終わりだ!!」


 ドスンッ!!


 次の瞬間、沈みが止まる音が聞こえた。

 そして、続けての揺れは起きない。

 

「おっ、マジで止まったっぽいな!」


「正義、そうだボズよ。これで最後ボズ。希望、次はこの階段を降りる。階段の先には扉がある。そうでしょボッズー?」


 ボッズーに聞かれると希望はコクリと頷いた。


 ―――――


「えっ……何だありゃ?!」


 階段を下りていった場所には扉があった。

 基地へ入る前に大木の幹に出現した扉とよく似た木目調の扉だ。


 扉を見付けた正義はすぐ開いた。が、開けた直後に動きが止まった。扉の先には正義を驚かせる物があったからだ。


「さぁ正義、あそこの中に入るだボズよ!」


「あ……あそこの中にぃか?」


 ボッズーが言う『あそこ』とは扉の先にある物の事だ。

 ボッズーの催促に「マジで言ってんの?」と顔を引きつらせながら正義は聞き返した。


「そうだボズよ! ねぇ、希望そうだボズよね?」


「うん! そうだよ!」


「う~む……」


 正義の隣に立つ勇気は眉をしかめている。

 勇気も"扉の先にある物"を見ていた。


「希望くん……キミは、何故アレに近付こうと思ったんだ」


「えっ、何故って? 面白そうだからだよ!」


「面白そう……そ、そうか、気持ち悪いとか思わなかったのか?」


「ううん、全然! 逆に『なんか楽しそう!』って思って、僕、"あの中"に入ったんだ!」


 勇気は"扉の先にある物"を見た瞬間に警戒心を抱いた。だが、けろりと答えた希望は全く逆だったらしい。


「そ……そうか」


「希望ってさぁ、けっこー好奇心旺盛だよな……良い事だけど、たまには警戒心を持った方が良いぜ」


「俺だったら絶対に近付かねぇぞ……」と髪の毛を掻き回しながら正義は言うが、視線はずっと"扉の先にある物"に向けていた。


 扉を開いた先には、まずは部屋があった。

 それ程大きくはない部屋だ。全体はすぐに見渡せた。部屋ではあるが、ここも階段を下りてくる前の場所と同じく自然があり、足元にはクローバーの葉が絨毯の様に生い茂っている。

 この葉も壁代わりの木と同じくイミテーションなのだろうが、この事を確認する前に正義も勇気も部屋の奥にある物に目を奪われて、そして警戒心を抱いていた。


 二人が警戒心を抱いた物、それは"木"だ。


 全長は三m程で、太さは大人三人が手を回してやっと囲めるくらい。

 ずんぐりむっくりな木だ。

 この木が只のずんぐりむっくりな木であったならば、二人は警戒心を抱かなかったろう。だが、そうでないから抱いている。

 木には、大きな穴が空いているのだ。

 クローバーの絨毯から少し顔を出す太い根のすぐ上から幹の中央にかけて縦二m、横一m程の縦長の穴だ。


 二人が何故穴を警戒するのか、それは穴に"牙"があるからだ。

 否、実際に生えているのではなく、牙に見える突起が穴の縁から内部に向かってギザギザと鋭く尖っているのだ。

 更に穴の上には二つの窪みがあり、その窪みが目にも見える。


 縦長の形状と"牙"と"目"、この三つが合わさる事で正義と勇気は錯覚を覚えていた。

 木の穴が"獲物に食らい付こうとする獅子の口"に見えて仕方がないのだ。


 しかし、全ては目の錯覚でしかない……が、そんな事は正義も勇気も分かっている。この木が自然の中に生えていたのならば、二人は警戒心を抱かずに自然の奇跡を面白がったであろう。


 だがしかし、ここは秘密基地。

 木も、木に空いた穴も、いわば人工物。

 壁代わりの木がそうであった様に、基地にある草木は全てがイミテーションだ。

 だから正義も勇気も扉を開いた時に思った。『この木の形には意味があるのでは?』と。

『この不気味な口にも、牙にも、目にも……意味が』……と。


 この考えに至ってからの二人の警戒値は最大値を維持し続けて下がる事はなく、部屋に入る事すら躊躇してしまっていた。……としても、ここは自分達の為に与えられた基地の中だ、二人が持つ警戒心は『英雄として何か試練を受けなければならないのではないか?』といった類いの警戒心だった。


 例えば正義はこう考えていた。


『口の中に飛び込んだら、「ワシの牙の痛みに耐えられなければ貴様は英雄失格! 時計を返せッ!!!」……とか言われんじゃないかな』と。


「う~ん……」


「何が『う~ん』だボズ! サッサと言われた通りにやれボッズー!!」


 部屋の中にすら入ろうとしない正義を、ボッズーが押した。


「わ、分かってるよ!」


「分かってるなら早くしろボズ!」


「そうだよ、早くして!」


 ボッズーに続いたのは愛だった。

 愛は、正義と勇気の後ろで唇を尖らせている。


「せっちゃん、なに情けない顔してるの! もしかして、あの木が怖いの? 《王に選ばれし民》にはあんなに勇敢に立ち向かったのに? ほら、気合いだッ!!!」


「うわぁ! ちょ……ちょっと待てって! だって愛……《願いの木》ってわりにコイツめっちゃ怖い顔してねぇ??」


「全然怖くありません!!」


 愛は正義の手を引き、部屋の中へと入っていく。


「願いの木だボズぅ?? もう……正義、何を言ってるんだボッズー。この木は違うボズよ、《願いの木》があるのはこの先だボッズー!」


「ほら、違うって! じゃぁ~せっちゃん行きましょう!!」


「えっ! うわっ!! ちょっ、やめろぉ~~!!」


 穴の前に立たされた正義は、愛に背中を押された。


「うわぁ~~~~!!」


 穴の中は深いのだろうか……正義の絶叫はすぐに遠退いていく。

 

「はい!! 次は勇気くん!!」


「え……俺?」


「そうですッ!!!」


 間髪入れずであった。

 愛は大股一歩で勇気に近付くと、今度は勇気の手を取って部屋の中へと引き入れた。


「もう、正義も勇気も何をビビってんだボッズー。この木は《願いの木の門番》だボズよ。 心の汚い奴が穴を通ろうとするとガブッて噛み付いて退治するだけだボズよ」


「え……噛み付いて退治? 何だそれは、大丈夫なのか……も、桃井! 押すなぁ!!」


 ドンッ!!


 ボッズーの発言に驚きながら、勇気は穴へと落ちていく。

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