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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第1話 大木の中へ 1 ―勇気の悪夢―

 1


 ハァ……ハァ……ハァ……


 ねぇ、母さん、母さんどこ?


 どこに行ったの?

 なんで誰もいないの?


 ハァ……ハァ……ハァ……


 僕は今どこにいるの?

 なんでこんなに真っ暗なの?


 走っても、走ってもどこにも着かないよ

 怖いよ……怖いよ……


 父さんどこ?

 父さん、助けて……


 えっ? 誰、僕の肩を掴むのは?


 誰なの、僕の足を掴んだのは?


 えっ……真っ黒な手……


 真っ黒な手が僕を掴んでいる


 やめて………!!

 いっぱい……いっぱいの人が僕の体を掴んでくる


 どうしたの? なんでみんなそんな怖い顔をしてるの?

 ねぇ、なんでみんなそんな苦しそうな顔をしてるの?

 ねぇ、なんでみんなそんな羨ましそうな顔をしてるの?


「………と、………たい」


「………ない…よ」


 え……?


「………えも、……い…こう」


 なに? 何て言ってるの?


「もっと、生きたい……」


 え……?


「死にたくないよ……」


 なに、言ってるの?


「お前も……一緒に逝こう……」


 怖いよ……みんな、何言ってるの? 変だよ?


 やめて、引っ張らないで!


 ヤダよ……ヤダ……僕はヤダ……死にたくない!


 助けて! ……助けて、父さ……え?


 なんで……


 なんで、なんで? 父さんがそっちにいるの?


 なんで……父さんもみんなの中にいるの?


 え……あっ……


 そっか……


 父さんは死んだんだ……


 父さんは死んだんだ……


 ―――――


「ッ……!!!」


 全身を汗で濡らし、俺は目を覚ました。


 何年ぶりだろう、幼い頃に苦しまされた悪夢を久々に見た。

 父の死を受け入れられずにいた頃に何度も見た夢だ。


「何故、今更こんな夢を見るんだ……」


 疑問に思うが、脳が勝手に見させたものだ。答えは出ない。

 額にかいた汗を拭い、濡れた手を見て『疲れのせいだろう』と結論付けた。

 正直、今日は疲れた。

 とても長い一日だった。

 いや、時計を見れば既に深夜だ。日付は変わっている。長い一日も昨日の出来事なのか。


 結局、俺は理想の未来を得られなかった。

《王に選ばれし民》は出現してしまった。

 しかし、正義は諦めてはいない。アイツは諦めずに《王に選ばれし民》に立ち向かった。


 俺だって諦めはしない。必ず奴等を叩き潰す。

 正義と桃井、ボッズー、今日は現れなかったが黄島(きじま)(ゆめ)緑川(みどりかわ)(まさる)と共に、必ず奴等を叩き潰し―――何故だ、何故思い出す。空が割れる前に俺の前に現れた"煙の様な闇の塊"を……"恐怖の化身"を……何故、いま思い出す。


 あんな物は幻覚だ。轟音と共に瞬いた光で目が眩み、見えただけ……本当には存在しない。


「ん? ……そうか、幻覚のせいか」


 俺は合点がいき、小さく笑った。

 子供の頃によく見ていた悪夢を数年振りに見た理由は幻覚のせいなんだ。

 幻覚を見たせいで、俺は思ったから。

『俺は恐怖している』と。

『俺は《王に選ばれし民》に恐怖している』……そう錯覚してしまったのだった。

 だから見たのか。父が死に、漠然と"死"というものに恐怖を抱いていた頃に見た夢を。


 だが、結局は夢は夢だ。

 あの頃の俺と、今の俺は違う。

 俺は恐怖を抱く事はない。

 何故なら、俺は英雄に選ばれたのだから。

 何故なら、俺達は勝つからだ。

 そうだよな、正義? お前となら、俺はどこまでも行ける気がする。

 俺は恐怖を抱くことはない。


 なぁ……そうだよな?


 ―――――


 数時間前――


「あぁ……ダメだ……もう、げんか……い……ッ!!!」


 王が姿を消した直後、気力を使い果たした赤井正義は再び気を失ってしまった。


「あぁ、危ないボッズー!!!」


 ゆらりと体を揺らした正義を見て、ボッズーは危険を察知した。正義は高台のギリギリに立っていた。もしも前のめりに倒れてしまえば高台から転落してしまう。


「正義!!!」


「せっちゃん!!!」


 勇気と愛は草原を駆けた。


 ボッズーは空だ。空を駆けた。


「正義ぃ!!!」


 しかし、赤井正義はやはり奇跡を起こす男なのだろうか。

 正義は前のめりには倒れはしなかった。ドサリと膝を落とすと、フワリと揺れて、背中から地面に倒れたのだから。


「はぁ……ビビった!」


「良かったぁ……本当に良かった」


「いやぁ……今日は何回正義にハラハラさせられれば良いんだボッズー! ふわぁ~~、もう俺はクタクタだボズよ! でも、一番疲れたのはやっぱり正義かも知れないボズね……」


 ボッズーは安堵の表情を浮かべて高台の草原に下りると、勇気と愛の顔をチラリと見た。

 それから、大木に視線を移す。


「勇気、愛、ちょっと手伝ってほしい事があるボズよ」


「手伝う? ……あぁ、勿論だ。今すぐ病院に連れていこう」


 勇気はボッズーの言葉を『病院に連れていく手助けをしてくれ』という意味に受け取った。


 ボッズーは首を振って返すが――


「いや、違うボズよ。病院じゃないボズ。それよりももっと近くて良い場所があるボズ」


「もっと良い場所?」


「うん、あそこボズ!」


 ボッズーは愛の質問に大木を指差した。


「あの大木の中に正義を連れていってほしいボズ!」


「えっ、大木の中?」


「大木に、"中"があるのか?」


 勇気と愛は驚いた。


 大木の中には英雄達の為の秘密基地があるが、それを二人はまだ知らないからだ。


 五年前にボッズーは、正義や正義の家族と共に輝ヶ丘から引っ越したが、秘密基地に関する"ゾワゾワ"がボッズーに起こった時期は輝ヶ丘から離れた後であった。その為に、勇気や愛達には秘密基地の情報を共有出来ていなかったのだ。


 ――ボッズーの頭の中には、英雄に関する知識や《王に選ばれし民》に関する知識が豊富にある。しかし、その知識の全てが"はじめから閲覧可能"ではなく、記憶喪失か、深いド忘れかの様に脳の中で眠ってしまっている。眠った知識は切っ掛けを得なければ思い出せず、切っ掛けを得た際にはボッズーはゾワゾワとした寒気を覚える。この現象を正義とボッズーは『ゾワゾワ』と呼んでいる。


「うん、腕時計の力を使えば入れるボッズーよ! 大木の中には《英雄たちの秘密基地》があるボッズー!」


 そう言うとボッズーは、今度は勇気の腕時計を指差した。


「秘密基地、そんな物が大木の中にあるのか。そうか……それは面白そうだ。行こうか、桃井。俺が正義を担ぐから、キミは"腕時計の力"ってヤツを使ってみてくれ」


「OK! でも、勇気くん一人で大丈夫? せっちゃん、多分昔みたいに軽くはないよ」


「何を言ってるんだ、大丈夫に決まっているだろ……」


 勇気は愛に向かって微笑むと、仰向けに倒れた正義の体の下に腕を差し込み、軽々しく持ち上げた。


「おぉ~~! 凄いボッズー!!」


「おいおい……何が凄いだ。ボッズーもコイツを抱えながら空を飛んでただろ。そっちの方が凄いよ。それに、俺だって今日の為に何もしないでいた訳じゃない。それなりに鍛えてきたさ、こんなチビくらい重くはない」


「へへっ! 頼もしい奴だなボッズー!!」


 勇気は一見すると細身に見えるが、約束の日までの日々で鍛練を怠った日はない。しかも正義の身長は170cmギリギリあるかないか、勇気は180cmを超えている。10cmもの身長差のある正義を持ち上げるなど容易だった。


 そして、勇気達は大木に向かって歩き始めた。


 ―――――


「あっ!!」


 ボッズーに秘密基地の入室方法を教えられた愛が腕時計の文字盤を大木の幹に押し当てると、押し当てられた場所には木目調の扉が現れた。


「おおっ……凄いな」


「うん、スゴい!!」


 扉の高さは二メートル程、幅は大人が一人通れるくらい。

 出現した扉を見て、勇気も愛も驚いた。


「さぁさぁ、驚いてないで行くぞボズ! この扉を通れば《英雄たちの秘密基地》に入れるんだボッズーよ!」


 ボッズーは勇気と愛の制服の袖を引っ張り、それからドアノブを捻った。


 ボッズー達が扉を通ると、扉は独りでに閉まり、消えていく。

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