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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第一章 正義の英雄の帰還 編

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第4話 王に選ばれし民 2 ―王に選ばれし民 道化師―

 2


「本日14時頃、東都(とうと)市輝ヶ丘において《王に選ばれし民》による侵略が開始されました」


 男は淡々と喋り出した。

 男の声は落ち着いた見た目に反して甲高く、ガラついている。スクリーンに付属しているスピーカーの調子が悪いのか、男の声には雑味も加わっている。


「《王に選ばれし民》は多数のシードルを発進させ、瞬く間の内に輝ヶ丘を"壊滅させた"との事です――」


 ピクリ……ボッズーの眉が動いた。


「させた?? 何言ってんだボズ! デタラメ言いやがって! 壊滅なんてしてないボッズー!!」


 ボッズーは言い返すも、相手はスクリーンの中だ。男は喋り続ける。


「《王に選ばれし民》はその後、薔薇の宮殿を輝ヶ丘に構え、全世界への攻撃を開始する予定です」


 ここまで言い終えると、男は机の上で組み合わせていた指をといた。左手の人差し指でトントンとテーブルを叩き始め、男の様子が変わっていく。


「ふふん……ふんふふん……」


 鼻歌だ。口元もニヤリと笑っている。かと思うと――


「全世界への攻撃を開始する予定です……です……ですた……でした!!!」


 ――男は突然怒鳴った。


「でした!!! でした!!! でした!!!」


 右手で髪を搔きむしり、左手ではネクタイを外して放り投げる。そのまま左手でワイシャツの襟元を掴み、首元までしっかり閉めていたボタンを弾き飛ばすと、今度は眼鏡を外し、手の中で握り潰した。


「その筈だったんです!!」


 男は眼鏡を握り潰した手でテーブルを叩いた。握った拳の中にあった眼鏡の残骸は、机が跳ねると共に辺りに散らばる。

 散らばった残骸の一つが男の髪に乗ると、目に付いたものは男の額だ。七三にしていた時には分からなかったが、掻きむしられて滅茶苦茶になり、失敗したパーマの様に整いを失くすと、髪の下からは大きく禿げ上がった額が覗いたのだ。

 隠れていた物が現れた箇所は他にもある。乱れたワイシャツの襟元からはフリルが飛び出していた。それはピエロが着る服によくある"首元をぐるりと囲った首輪の様なフリル"であった。


「全世界の皆さん!! ……恐らく、この放送は全世界の皆さんの"耳"にも届いている筈、そうですよね?」


 男は首元のフリルを揺らしながら問い掛ける。それから「はぁ」と溜め息を吐き、頬杖をついた。


「全世界の皆さん、酷いとは思いませんか? 私達の計画は初手で阻止されてしまいました。何も出来なかった、嗚呼、可哀想な私達。たった一日で全世界を手中に納めて"我が王"にプレゼントするつもりだったのに……嗚呼、悲しい。こんな悲しい事がありますか?」


 再び問い掛けた男は、頬杖をついた手を顎から上に滑らせる。

 そのまま俯き、手中に顔を埋めた。


「でもね……私思うんですぅ」


 男は呟く様に言った。

 そして、顔を上げる。

 手の甲が正面を向く。かと思うと、両手をパッと開き――



「ハッハッーーーー!! たっのしぃーって!!」



 ――不気味な笑顔を見せた。


 手を開いた時、男の顔は白くなっていた。

 白塗りをしているかの様に。モノクロ映像だとしても白過ぎるくらいに。

 目の焦点は合っていない。表情は笑っているが、目は全く笑っていない。


「だってさぁ! たった一日で、いや正確に言うとたった一晩で! 全世界を破壊し尽くしてしまうなんてさぁ~~! それじゃあ面白くないじゃん!!!」


 否、目がなんだ、顔の白さがなんだ。それよりも口だ。

 薄くもなく、厚くもなく、大きくもない筈だった、何の特徴も無い筈だった男の口が、大きく変わっていたのだ。裂けているかと見紛う程に大きくなり、笑みを作った口角が耳のすぐ下にまで来る程に。唇は厚く変わっている。腫れ上がっているにしても厚過ぎる程に分厚い。喋る度に男の唇は揺れえている。


「ケケケケケケケケッ」


 男は何が面白いのか、腹を抱えて机を叩いた。


「ケケケケケケケケッ!! ヤバイ、ヤバイ、苦しぃ~~笑い死ぬぅぅ!! はぁ……はぁ……あぁ苦しぃ」


『苦しい』と言いながら、男は乱れたスーツの胸元から何やら取り出した。

 取り出した物は手のひらに収まるくらいの丸い玉。灰色をしたその玉を、男は鼻に押し当てる。


「ふぅ~~やっぱコレが良いね! 人間のフリをするのはやっぱ疲れるわ!!」


 グリグリと音を立てて押し当てられた灰色の玉は、男の鼻に付いて離れない。


「暑っつい、暑っつい、いやぁ暑い! 慣れない格好をするもんじゃないね!!」


 それから男は平手で顔を仰ぎ、スーツを脱ぎ始める。

 スーツの下にも男は服を着ていた。毛糸の様な大きな白いボタンが縦に三つ並び、黒地に白い水玉模様がある服を。サイズは大きく、余白が多い。首元以外にも袖口にもフリルがある。


 この格好を見て、セイギは思った――


「ピエロみたいだ……」


 ――と。

 否、『みたい』とするよりもピエロそのものだろう。

 服だけでなく顔もそうだ。広い額にボサボサのパーマ、分厚い唇に裂けているかと見紛うくらいに大きな口、鼻の先には丸い玉……スクリーンに映る男は、正真正銘のピエロといって過言ではない。


「ケケケケケケケケッ!!」


「なぁ、ボッズー。アイツの事を言うのか……お前がよく言う《バケモノ》って奴は?」


 高笑いをあげる"ピエロ"を見ながらセイギは疑問を口にした。問い掛ける口調は静かだ。仮面の奥の顔には汗をかき、不気味に笑う"ピエロ"に驚いてはいるが、ピエロ"を冷静に観察しようと努めている。


 そんなセイギの質問に、ボッズーは「違うボズね」と首を振った。


「バケモノは悪意を持った人間や動物から生み出される存在だボズ。アイツはさっき『人間のフリ』って言ったボズ……だから違うボッズー。でも、アイツもバケモノに似てはいるボズね。バケモノは悪に心を乗っ取られて、破壊を好み、命を弄ぶ、邪悪な思考を持つ者だボズ。アイツの不気味な笑顔を見れば分かるボズ、アイツは正にそれだボッズー!!」


「そうか……それで、悪の王でもないだよな? さっきアイツは『我が王』って言ってたし」


「うん、それも違うボズ。アイツは王が率いる《王に選ばれし民》の一員だろうなボズ……それにしてもピエロの格好なんて、嫌な格好してるボズ!!」


「ボッズーはピエロが苦手だもんな。だけど悪いけど、俺はアイツとも戦うぜ。悪の王に、王の部下、みんな纏めてブッ飛ばしてやる! お前はどうだ? 勿論、付き合ってくれるよな?」

 

 セイギはスクリーンから目を逸らした。次に見るのは、空中に浮かぶ巨大な薔薇。薔薇の中央に鎮座する白い城だ。


「勿論行くだボズよ! 確かに俺はピエロが苦手だけど、俺もやってやる、《王に選ばれし民》をブッ飛ばすだボッズー!!」


 ボッズーの士気もセイギに負けずに下がってはいない。

 ボッズーは、城に向かっての下降を再開しようとスクリーンに背を向けた。


「へへっ! んじゃ――」


 ……と、セイギは大剣を構え直す。が、その時、二人の周りに風が吹いた。


「ん? 何だボズ?」


 それは二月に吹くにはおかしい生温い風。


 ふぅ……セイギの右の耳に風が当たる。まるで吐息を吹きかけられたかの様に。


「何だコレ……」


 驚いたセイギが風が来た方向を見ると、


「どうしたの坊や?」


 今度は左側から声が聞こえた。そして、また「ふぅ……」、セイギの左耳に吹いた風はそのままセイギの体を撫で回す様に、頭から首、首から胸、胸から腰と移動していく。


「な……なんだ!!」


「フフフ……」


 再び声が――


 セイギはその声が風の中から聞こえてくると感じた。


「や……やめろッ!!」


 セイギは手を振って風を払った。


「フフフ……」


 すると、セイギとボッズーの眼前に白い煙が現れる。現れた煙は徐々に徐々にと色を変えていく、白から灰色へ、そして黒へと。


「フフフ……」


 また笑い声が聞こえた。笑い声は二人の眼前に飛ぶ黒い煙の中から聞こえる。

 煙の変化は更に続いた。煙は笑いながら、人の形に変化していったのだ。


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