第3話 空が割れた日 12 ―ジャスティススラッシャーッッッッッ!!!!!―
12
「ドリャァ!!!」
球体は熟れた果実か。セイギの大剣は何の抵抗も受けずに球体を真っ二つに斬った。
斬られた球体は光の粒となり大剣の刃へと吸い込まれていく。
大剣への吸収――これは最初にシードルを倒した時にも起きていた現象だ。一体目のシードルを倒す直前、その時もセイギは球体を斬った。斬られた球体は直後に光の粒となり刃に吸い込まれていた。
「ヨシッ!!」
球体を斬って刃に吸収させると、セイギは大剣を構えたまま心の中でガッツポーズを取る。目的が一歩前進したからだ。
セイギは己に向かって放たれたシードルの攻撃を全て斬ろうとしているのだ。シードルを挑発したのも、"敵の攻撃を斬る"これが目的であったからだ。
何故、セイギはシードルの攻撃を斬りたいのか、その理由は大剣には“隠された能力“があるからだ。
「一発目だボズ!!」
ボッズーがカウントを取った。
セイギに銃口を向けているシードルは百体いる内の半数程、およそ五十体……半分であるとはいえ決して少ないとは謂えない。
セイギはまだ一発目を斬っただけ、残り四十九発。先は長い。一瞬でも油断してしまえば被弾は免れないだろう。
更にシードルの攻撃は続々と放たれている、一発でも被弾してしまえば残り全てをくらう事にもなる。
長くもあれば厳しい戦いでもある。
戦い抜く為に頼れるのは、セイギ自身の身体能力だけだ。
セイギが身に纏ったメタリックレッドのボディスーツは、変身した者の身体能力を増幅させて人間の力を超えさせるが、戦闘において"自動的に体が動く"という事はない。結局は変身者自身の実力が必要なのだ。
セイギはボッズーに言った。
『こっからは俺の腕次第なんだ』と。
その通りなのだ。迫る攻撃全てを斬れるかはセイギの腕次第なのだ。
正に、生きるか死ぬか……のるかそるか……
だからセイギは――
斬って、斬って、ブった斬った。
高速で飛んでくる球体の雨をセイギは腕を振り回し、斬っていく。
雨は大雨。どしゃ降りだ。斬っても斬っても一秒の間もなくシードルの球体はセイギの眼前に現れる。
「ドリャァ!!! テェャアーーー!!! オリャァ!!」
雄叫びを上げながら、セイギは縦に横に斜めにと大剣を振るっていく。
「17!! 18!! 19!!」
ボッズーのカウントは一気に半分に近付いた。
斬れば球体は光の粒に変わる。光の粒に変われば刃へと吸収される。光の粒を吸い込む度に大剣の刃は黄金に光り輝いていく。吸い込めば吸い込む程に大剣の輝きは増していく。まるでシードルの攻撃が大剣の力へと変わっていく様に。
否、"変わっていく様に"ではない。実際に大剣の力へと変わっているのだ。
そう、これこそがセイギの大剣の隠された能力だ。大剣は敵の攻撃を己の力に変えられるのだ。
「トイヤッ!! ジョワッ!! デアッー!!!」
「27!! 28!! 29!!」
しかし、攻撃を吸収する度に大剣は重くなり、剣を振るう力を必要とした。だがしかし、セイギは自分の腕が折れようが、引きちぎられようが構わないとでも謂うように、大きく振りかぶって斬り続けた。
「ハッ!! ドリャッ!! トリヤァーーー!!!」
気付けば、セイギは右手だけで持っていた大剣を両手でないと持てなくなっていた。
それでもまだまだ攻撃は飛んでくる。
「37!! 38!! 39!! 40!!」
残りテンカウント――
残り十発、ではある。ではあるが、シードルの前進は攻撃を開始しても止まってはいない。反対にセイギは停止している。球体を斬り始めてからは僅かな時間しか経過していないが、その僅かな時間の間にセイギとシードルの距離は縮まってきていた。
「ダァーーッッ!! エイッ!! テェヤッ!!!」
「41!! 42!! 43!!」
セイギはボッズーの力を借りてシードルとの距離を開け、バグらせた。だが、もし開いた距離が元に戻ってしまったらどうなるのだろうか……バグりは治まり、シードルは再びセイギ達を籠の中の鳥にしようとするのではなかろうか。
「オリャッ!! ドリャッ!! ウリャァ!!!」
「44!! 45!! 46!!」
そうなれば元の木阿弥……どころか、大剣を振り続けるセイギにも、超全速力を超えて飛び続けたボッズーにも、疲れが出ている。再び籠の中の鳥に陥れば負けに向かう可能性の方が高い。
「ドリャァ!!! テェャアーーー!!! オリャァ!!」
しかし……そんな心配は無用だったようだ。
「47!! 48!! 49!!」
何故なら、セイギは――
「タァァァァーーーーッ!!!!」
――自らに課した任務をやり遂げたから。
「50!! 五十発目だボズ!! やったッ!! やったぞボッズーッ!!!」
セイギは遂に五十発目を斬ったのだ。
「あぁ……なんとか、かんとか………」
セイギは疲れ切っていた。全身には汗をかき、両腕は震えている。五十発もの球体を吸収した大剣の重さは百キロを超えているだろう。
「ちくしょ……重てぇ、でも、ヨイショ……っと」
そんな大剣の柄を、セイギは再び握り直す。
まだ終わりではない。五十発の球体の吸収を終えても、ただ逆転への準備を終えただけ。まだシードルとの決着はついていない。シードル百体は未だ存在している。セイギとボッズーの眼前、すぐそこには、群れの先頭を飛ぶシードルが来ていた。
先頭のシードルとの距離は五メートルも無い。
先頭のすぐ後ろにもシードルはいる、そのまた後ろにもいる……シードル達はすぐにでも二度目の攻撃を撃ってきそうだった。シードルの震えは激しく、攻撃準備が整うのも寸前。もし再度の五十発が放たれたのならば、今度のセイギは負けてしまうだろう。
だから、セイギは休まない。
「ボッズー、やるぞ」
疲れ切った体に鞭打って、セイギは百キロを超える大剣を振り上げた。
「行くぜ……決めるぜぇ……」
口にしたのは、決意の言葉。セイギは一瞬、瞼を閉じる。そして、瞼を開くと同時に、
「ジャスティス! スラッシャァァーー!!!!」
雄叫びを上げて、大剣を振り下ろした。
セイギが振り下ろした大剣は空を斬る。
空を斬った大剣の刃からは、残像が如く眩い光が放たれた。
光は黄金に輝いている、この光は大剣に吸収した五十発の球体を刃状に凝縮させたエネルギーの塊。
その名も《ジャスティススラッシャー》―― 敵の力を大剣の力へと変えて撃ち出す、セイギの必殺技と呼ぶべき技。これこそが逆転の最終段階、この技をシードルに見舞おうと、セイギは真っ向勝負を選んだのだ。
シードルの群れに向かって飛んだジャスティススラッシャーは、セイギが振るった太刀筋そのままの形で先頭のシードルを一刀両断に斬る……直後、先頭のシードルは爆発四散、だがジャスティススラッシャーは先頭のシードルを破壊しただけでは終わらなかった。大剣に吸収した五十発分のエネルギーは莫大なのだ。ジャスティススラッシャーはシードルの群れを一刀両断に破壊し続け、突き進む。
2体、3体……4体、5体……10体……20体……30体……
ジャスティススラッシャーに直接斬られなかったシードルも攻撃を受けた個体が起こす爆発の衝撃を受けて誘爆、破壊され、四散する。
その光景はさながらドミノ倒しが如く――
まだまだ続く、40体……50体……60……70……80……90……残り十体、最後の十体は未だに円を保っていた。
九十体目に破壊されたシードルは円のすぐ上空にいたが為に、ガガガガガ………と残った十体は全身を震わせた。セイギからはロボットであろうと推測されたシードルが生物同様の感情を覚えた訳ではない、単に九十体目の爆発の衝撃が伝わっただけである。が、残った十体の震えは収まらない。収まらないどころか、この後更に強まる事になる。何故ならば、ジャスティススラッシャーが円の内の一体を斬ったからだ。
残った十体が二時間足りないアナログ時計ならば、ジャスティススラッシャーは十二時の位置にいたシードルを斬った。
斬られたシードルは当然に大爆発を起こし、更にその爆発は左右の二体を襲った。誘爆された二体の爆発が更なる爆発を呼び、連鎖は続き、一体残らず爆発四散――大輪の花だ、円を保っていたシードル十体の爆発が、輝ヶ丘の空に大輪の花を咲かせた。
「へへっ……やったぜぇ」
セイギは呟いた。
そうだ、やったのだ。遂に、セイギは百体にも及ぶシードルの群れを撃破した。
第3話『空が割れた日』 完
第3話「空が割れた日」を最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
次回、第4話「王に選ばれし民」では、遂に英雄の宿敵である《悪の王》が登場します。
お楽しみ……
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今後とも「ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!!」を宜しくお願い致します!!!!!




