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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第一章 正義の英雄の帰還 編

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第3話 空が割れた日 10 ―バグれ!!!!!―

10


「ついてきた! ついてきた!」


《ビュビューンモード》のスピードで上昇を始めても、シードルはガキセイギとボッズーを追い掛けてきた。後追いではない、セイギ達と同じ高度を保ちながらついてくる。


「何を笑ってんだボッズー! そりゃついてくるだろ、今までもそうだったんだからなボズぅ!」


「へへっ! でも、今までと違うところもあるぜ、アイツら俺達についてくるのがやっとで攻撃が出来なくなってる!」


「そうなのか? ……って、それも、そりゃそうだボッズー! お前がもっと速く飛べってウルサいから、俺はもう全速力を超えて、"超"全速力なんだぞボッズー!!アイツらに攻撃する余裕があって堪るかバカヤロー!!」


 上昇を始めてもボッズーはまだ苛ついている。苛つく理由は簡単だ。《ビュビューンモード》で上昇を開始してすぐに、セイギがボッズーを煽ったからだ。『もっと速くだ!! 光になるつもりで飛んでくれッ!!』と。

 しかし、煽られて生まれた『超全速力』はシードルの攻撃を止めた、だからセイギはもっと煽る。


「へへっ! 超全速力かぁ、うん、確かに速いな! でも、それで限界か? もっと速くはならないのか??」


「むむっ……鬼畜めぇ! やれるさ、俺はやれる! お前が悲鳴を上げるくらいに飛んでやるぜボッズぅぅーー!!!」


 ボッズーは眉間に皺を寄せて翼に力を込めた。すると"上の翼"に吸収される風がさながら突風が如く強まった。"下の翼"から噴出する時には更に強まり、空気が震える程になる。


「おぉ、また速くなった! 流石だぜ!! 行け行け!! もっと行っけぇーー!!!」


「うるせー! 何がイケイケだ、こっちは必死だボズぅ!!」


 セイギがボッズーを煽る理由は確かにある、セイギには“考え“があるからだ。

 ボッズーはそんなセイギの考えを分からない。分からないながらもセイギの煽りに、否、セイギの期待に応えようとはする。二人の考えは元々は一ミリのズレも無いものだったからだ。現在のセイギが何を考えているのか分からないにしても、セイギが無策で暴走する筈はないとボッズーも理解しているのだ。 


「おっ、アイツ等、俺達に段々ついて来れなくなってきてるぜ!!」


『超全速力』からの更なる加速はシードルに変化をもたらした。これまでセイギ達と同じ高度を保ち続けていたシードルの群れが、ボッズーの加速に追い付けなくなってきた。


「おうおう! ボッズー、スッゲーぜ!! さっすがぁ!!!」


「流石じゃないボズ! まずは訳を言え! 訳をぉ!! お前の狙いを話せボッズー!!」


 セイギの期待に応えはするも、ボッズーはセイギの狙いが本当に分からなかった。ただ加速するだけ。加速を求められているとしか分からない。だからボッズーは煽られなくても自らまた加速した。最前の『超全速力』を上回ったスピードを更に上まるスピードでボッズーは飛んだ――この更なる加速が、シードルとの距離を更に広げた。


「へへっ! 何を考えているかって? それはなぁ"のるかそるか"ってやつだぜ!」


「何ぃ? どういう意味だボズ!!」


「へへっ! 俺の考えの通りならな、アイツらは自分の意思で動いてねぇロボットなんだよ! ……って分かんねぇけど!」


「分かんねぇけどって、なんだそれはボッズー! そんな無責任な事を言うな!」


「へへっ! だって、今はそうだって証拠を見つける暇がねぇもん、証拠が無いから分かんねぇ! 分かんねぇけどさ! もしそうなら、俺達と一定の距離を保つのも、数体ずつ攻撃を仕掛けてくるのも、誰かに設定された通りの行動を取ってるだけって事になるだろ? だったら、その設定通りの行動を取れなくさせたら、アイツ等はバグるんじゃねぇかなって思ったんだよ!」


「バグる?」


「あぁ! 俺達がこのまま上昇を続けて、アイツらを置いてけぼりにさせたら、きっと何かが起こる! 分かんねぇけど!!」


「なんだよボズぅ、その分かんねぇけどってぇ!!」


「へへっ!」


「むーー!!! クッソォーー!!!」


 セイギがやはり無策ではなかったとボッズーは知った。知ったが、セイギが連発した『分かんねぇけど』の言葉がボッズーの怒りを更に加速させる。


 ボッズーの苛つきが加速するのならば、飛行の速度も更に加速していく。上昇を続けるセイギとボッズーの後方には飛行機雲が残り、雲一つない青空に一筋の白線が生まれた。


 すると、どうだろうか、セイギが言った『バグる』が起き始めた。


 これまでのシードルの群れは均等の距離を開けて円を作っていたのだが、その円に変化が起き始めたのだ。

 始めに起きた変化は、円を抜け出すシードルが現れた事。円を抜け出したシードルはボッズーの噴射が生み出した白線をなぞる様に飛んだ。そして一体が円を抜け出すと次に起きた変化は、抜けたシードルの穴を埋める様に、他のシードル同士が距離を縮めた事。これで円が一個体分小さくなった。


「おっ! 見ろ、円が乱れたぞ!」


「うるさい、何が見ろだ! 俺は超全速力を超えて飛んでるんだボッズー!! 後ろを振り返る余裕なんか無いぞボッズーッ!!!」


 一度火がついてしまった苛つきは、そう簡単にはおさまらない。おさまらないから更に加速が続く。加速が続けばシードルの変化も続く。円を抜け出すシードルがまた増えた。それは一体ではない。続々と円を抜け出すシードルが現れ始めた。

 雪崩と同じだ。雪崩は些細な切っ掛けで発生する。人間や動物のほんの一声でも発生する。均等が取れていたシードルの円も、たった一体が抜け出しただけで途端に崩壊が始まってしまった。全てのシードルが白線をなぞり始めた訳ではないが、大多数のシードルが円を捨てた。


「やっぱな、俺の予想が当たったぜ! アイツらバグり出した、へへっ! スカイツリーって上から見下ろしたらこんな感じかな?」


 白線をなぞるシードルを見下ろしながらセイギは言った。


「バグる? 本当にそうなの? 作戦を変更しただけじゃないのかボッズー??」


「う~ん……そう言われると、分っかんねぇ!」


「なんだよそれ!!」


 ドォーーンッ!!


「うぇっ?!」


 セイギの再びの『分かんねぇ』の直後、二人の後方から大砲の音が聞こえた。


「うわっ!!」


 シードルの球体がセイギとボッズーの真横を通り過ぎる。


「おいおい! 攻撃してきたじゃないかボズぅ!!」


 暫くは止まっていたシードルの攻撃が再開されたのだ。


 ドォーーンッ!!


 ドォーーンッ!!


 続け様に二発鳴った。それから間髪空けずにセイギとボッズーの真横を球体が一発、二発と通り過ぎる。

 更にまだまだ大砲の音は続く。セイギとボッズーを追い掛けるシードルの群れは攻撃を連発してきた。


「ぺゅぅ! ヤバイボズ!! 当たるボズよぉ!!」


 ボッズーは目を白黒させて取り乱した。しかし、セイギは違う。


「いや、大丈夫そうだぜ!」


 と、自信満々に言った。


「何が大丈夫なんだボッズー! ピンチだボズよぉ!!」


 ボッズーは何故セイギが自信満々でいられるのか分からなかった。加速に尽力しなければならないボッズーは、セイギとは違って追い掛けてくるシードルの群れを振り返れないからだ。


「ピンチじゃねぇよ、よく見ろよ……って振り返れないんだったな。なら俺の説明を聞け。アイツら、やっぱりバグったんだ!」


「何だって?! どういう意味だボッズー!!」


「俺達に銃口を向けられてるヤツが少ないんだよ、いま俺がザッと見ただけでも、俺達に銃口向けられてる個体は大体半分程度、他のヤツ等は全然関係ない方向に撃ってやがる!!」


「え?!」


 ボッズーは少し冷静になって左右を見回した――セイギの言い分が正しいとボッズーはすぐに理解する。左右を見回すと、二人にかすりもしない方向に飛んでいく球体が何発も目に入ったから。


「これなら……もしかして、いけんのか?」


 セイギは呟いた。


「ボッズー、止まってくれ」


「え? ……と、止まる?」


 最前まで『加速しろ』と煽り続けていたセイギからの突然の『止まれ』の指示。ボッズーは驚いて、首を傾げた。


「あぁ。ボッズー、ありがとう! 加速はもう良い! 止まってくれ!!」


「いや……で、でも」


「なんだ?」


「だ……だって、止まったらアイツらに追い付かれちゃうぞボッズー、それに動きを止めたら――」


「へへっ! 大丈夫だよ!」


 仮面の奥でニカっと笑い、セイギはボッズーの心配を打ち切った。 


「俺を信じろって、俺には考えがある! こっから逆転するんだよ、その切っ掛けを今、俺はこの手に掴んだッ! 頑張って飛んでくれたボッズーのお陰だぜッ!!」


「逆転の切っ掛け……何だよそれ? ほ、本当かボズ?」


「あぁ、本当だ!」


「本当に本当かボズ?」


「本当も、本当!!」


 しつこいくらいにボッズーは繰り返す。


「本当に、本当に、本当に! 大丈夫なんだボズね?」


「あぁ! だから止まってくれってッ!」


 セイギは自信満々に胸を張った。


「う~ん……わ、分かったボズよ。本当に止まるぞ……良いんだボズね? じゃあ、ビュビューンモードを解除するボズよ?」


 漸くボッズーは加速を止めた。

 戸惑いながらも翼を《ビュビューンモード》の四本から、本来の姿である二本へと戻す。


 その後の二人の飛行はボッズーの加速の余力だけで進み、高速だったスピードも徐々に減速していった。

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